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第107話 消えゆくものたち

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 失明するかと思った――。

 なんちゅ~光だ。
 一体全体なにが起きたというのか。

 対人地雷にしては、やたらまぶしいだけだ。
 何か起きているようでもないし、光だけ。ピカっと光っただけ。

 つまりなんだ、目くらましの閃光地雷フラッシュだったのか!?

 そんなただの光の中から、ヒトらしき物体が出現していた……。

「んぁ!?」

 目を――自身の脳を疑った。
 そこにいたのは馴染み深い顔だったからだ。


 こりゃ驚いた……。


「おまえ……メサイアか!?」
「なによ、私はニセモノじゃないわよ。あれ……そういえば、前にもこんな事なかったっけ?」

 あったけどな。それはまた状況が違う話である。

「つーか、あの光からメサイアが?」
「光? それは知らないけど、私はただスキルを使っただけ」
「スキルを?」

 つーことは何だ……地雷の光とコイツのスキルによる光がたまたま合致しただけか!? そうであるなら、なんたる偶然か。ややこしいというか、でも、あの地雷とやらの効力は何だったんだか。

 ……まあ、ともかく助かった。

「メサイア、この桃色ロリっ子は、パロ。俺をかくまってくれた救い主だ」
「あら、小さくてカワイイ。よろしくね、パロ」
「ぼくはパロミデスと申しますですにゃ。はー…と、とてもキレイなお方ですにゃ。まるで女神様みたいですにゃ」
「パロ、コイツは、まるで――じゃなくて、本物・・の女神だよ」
「そうなんですかにゃ! これは驚き! 奇跡だにゃ!」

 などとメサイアを紹介していれば――


『貴様貴様貴様ああああああああああああッ!!!!!』


 最高指導者プロビデンスマスターが起き上がっていた。

 生きていたのか!!

 俺の『ダークニトロ』をまともにくらい生きているとはな。なんちゅーG並の生命力――いや、なにかしらの守護スキルか!?

「フハハ……。バカめ、私はあらゆる増強アイテムで肉体を強化しているのだぞ。それに、数多くのスキルを買い漁り、無限に等しいスキルをこの身に宿しているのだ。最強なのだ。そう簡単にくたばるものか!!」

 やはり、金の力で強化していたか。
 そんなこったろうとは思っていたが、ここまで金に物を言わせる野郎だとはな。

「あのパンツ一丁の変態は誰よ? サトル」

 メサイアは汚い物を見るような目で、最高指導者プロビデンスマスターを見ていた。そういえば、まだ教えてなかったな。

 ん……まて。

 よく見ればあの男、パンツ一丁じゃねぇか!!!

 変態だ!!

「ヤツは、明確な敵で変態だ! パロにとってもな」
「ふぅん。じゃあ、もう見るに堪えないから、私の視界から消えてもらおうかしらね……」

 手にグッと力を籠め、メサイアは姿勢を低くした。

 すると、


「ゴッド・ブレイズ・フィンガアアアアァァァ――――――!!!!!!」


 いきなり怒りを爆発させ、敵目掛けて突撃した。


 なんでだ!?

 メサイアの究極スキルと言っても過言ではない、爆裂スキルが最高指導者プロビデンスマスターに襲い掛かり――


『――――――!!』


 また、光になった。

 さすがの死神級の威力。
 いや、今は女神・・だったな。訂正しておこう。

 さすが女神級の力。

 パンツ一丁の変態は激しく、風車のようにクルクル回転し、空へ飛んで逝った。

 最後には、お星様となり消えた。


 見事に追い払ったなー。
 けど、あれじゃ倒してはいないだろうなぁ。


 ……にしても。

「メサイアさんよ、どうして豪邸ココに?」
「簡単なことよ。『覚醒スキル』を使ったのよ」

 ――覚醒スキル。

 コイツがまともな『女神』になってから発現したスキルツリーのことで、『女神専用スキル』が数多存在するという。
 だから、昔以上に強力なスキルが取得できるようになったらしい。その全容は分からんけどね。なぜか教えてくれないんだよなー。

「なんだ、ワープスキルでもあったのか?」

 つっても、この聖地・コンスタンティンは全体が【ワープ及びテレポート禁止域】に指定されている。うーん?

「私は女神ですからね。これくらいお茶の子さいさいなのよ! ……といっても、このスキルに気づいたのもエルフの郷に着いてからなんだけど。
 って、そうよサトル! それよりエルフの郷が、アヴァロンが支配されてしまうわ! みんなを助けて!」
「なんだって……エルフの郷が!? 分かった! パロ、急ぎですまんが――」
「パロも同行するのにゃ」
「え、一緒に?」
「そうにゃ。この目で確かめたいことがあるのにゃ」
「確かめたいこと?」

 それ以上は教えてもらなかったが、今は急ぎだ。
 メサイアの謎移動スキルで『アヴァロン』へ向かった。


 ◆


 【 ルルイエ 】 (元・アヴァロン)


 ――結論から言おう。
 エルフの郷・アヴァロンは不法に占領され、滅んだ。

 すべて蹂躙じゅうりんされ、その地、その名すらも奪われた。

 現在は【ルルイエ】と呼ぶようだ。
 近くにその名の看板が立っていたから、間違いないだろう。

「これは……ひでぇ。何があったんだ……」

 全てが瓦礫がれきの山になっていた。
 こんなむごい……ベルもフォルもいたはずなのに、どうしてこんな事に。あいつらがいるなら、食い止めるくらい出来そうだが。

 出来ただろ……?

 それが出来ないほど、敵が強かったということか。

「メサイア、これは……」
「分からない……どうしてこんなことに……」

 メサイアでも分からんらしい。
 だが、これはコンスタンティン軍の仕業で間違いないだろう。

 あの空高くはためく『白十字の旗』は見覚えがあった。


 大切な仲間であるリースの故郷が消え去った。

 エルフらしき遺体の残骸ざんがいも山のように積み重なっている。

 ……ここまで徹底的にやる必要はあったのか。
 これが人間の所業だというのか。


 ふざけるな。


 なにがコンスタンティン軍だ……なにが十万の兵だ。

 俺は、あの一か月前のレイドボス討伐から、随分と腑抜けてしまっていたらしい。ああ、そうだ、堕落していた。認めよう。


 ヤツ等は俺を本気にさせた。させてしまった。

 大規模な衝突は避けるべきと思っていたが、もう賽は投げられた。


 俺は……ヤツ等をぶっ潰す。
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