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第97話 最終決戦② - 新たなる希望 -

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 敵モンスターは『97万』もの大群。
 まさに多勢に無勢の最悪の状況下に陥っていた。

 俺たちの体力は限界に近く、しかも、メサイアは俺たちの為に自分を犠牲に、己をアルラトゥに差し出そうとしている……。

 確かに万策は尽きた。

 けれども、そんな仲間を見捨てるような真似は、俺には絶対に出来ない。

 なら、刺し違えてでもアルラトゥを――。
 いよいよ最後の、決死の覚悟を決めたところだった。



 突然――――、



『――――お~い』


 ……え?


「どこからか『』がする……?」
「理くん? どうしたの?」
「この『』だ……なにか聞こえないか?」
「声? そんな声は……」


『右を見ろ』
「え、右……」


 右後ろをふと見ると――そこには大きな、とても大きな『穏やかな円環』コンフォートゾーンが出現していた。

 ピンクの円。
 儚げで、まるで夢のような、そんな曖昧な淡い物体。
 あんな不思議なモノは見たことがない。

 なんたる神秘だろうか。
 なんたる奇跡だろうか。

 俺は思わず息を飲むしかなかった。


 そんな不思議な円の中から人間ヒトが――


「よう、サトル。どうやら間に合ったようだな」


「お前は……! ぽ……ぽむぽむ!! ぽむぽむなのか!?」
「へっ……サトル。しかも俺だけじゃないぜ?」


 そこには、かつて狩りを共にした4つのギルドが――メンバーたちが次から次へと出てきた。


 『サンフラワー』、『Fireworksファイアーワークス』、『ああああ騎士団』、『テラボンバー』……!


 サンフラワーの『エイル』や『村雨』、花火の『ルミナス』、ああああ騎士団の『ああああ』、テラボンバーのパースケにグースケ、その他――総勢『51名』……ちょっと増えてる!


 しかも、それだけじゃない!


 死神三人衆『オルクス』、『プルート』、『モルス』も円の奥から現れた。


「お前たち……!!」
「助太刀にきたぞ、サトル。俺たちも一緒に戦うぞ!」
「やっほー、サトルくーん☆ わたし達もいるからね~」
「助けに来ましたよ~。いえ~い、ぴーす」


 おお! 死神がいれば百人力だ!

 だが、まだだ……まだ援軍が来るぞ!!


 次は、炎の騎士『グレン』、氷の騎士『リクエ』、雷の騎士『カローラ』、光の騎士『マナス』、闇の騎士『アロンダイト』が堂々と現れた。


「おまえらも……!」
「これは王の命ではあるが……我々の意思でもある。騎士の誇りにかけて、サトル、あなた方に助力致します!」

 以前のアルラトゥの洗脳は無事に解けたのだろう、光の騎士『マナス』が確かにそう明言した。なんと頼もしいことか!


 騎士たちにも驚いたが……
 俺の予想を裏切り、更に戦力が増大していた。


 のしっと現れたのは――

 あのアフロヘア……『アグリオス』!?
 倒したはずのアグリオスがなぜ!


「久しぶりだな、ギリギリ中年・・・・・・! 神王様が特別に体を再生してくれてな……お前たちを永久に助けろとの天命を受けた。だから今後は永遠に味方・・・・・だ!!」


 まじか!! 神様のヤツ、永遠はやりすぎだろ!?


「リース!! 会いたかったぞ!!」
「わぁ! お父さん! どうしてここに!」
「もちろん、可愛い娘のピンチに駆けつけて来たのだよ。カローラに事情を全て聞いてきたのだ。アヴァロンのエルフ全員『800名』も道連れにしてきたぞ!!」

 気づけば、リースの親父さんも!!
 エルフの郷【アヴァロン】からも加勢が!!

 なるほど、長女であるカローラに全部聞いたってことか!


「おい、サトル。まだまだ戦力は出揃ってないぜ?」

 ――と、ぽむぽむは得意気に指を鳴らした。


「まだいんのか!!」


 ずし~~~~~~~んと、いくつもの重量感のある物体が出てきやがった。


 それはなんと――あの炭鉱ダンジョン『ビフロスト』のかつてのボスであり、ロボの『SHEEPシープ-RX87-2』だった!


「こ、こいつも!?」
「ああ、これは私が修理、複製した。もともとあの機械モンスターを設計したのは私でね」

 ――と、まさかの今明かされる真実である。

 アグリオス、おまえか!!
 そいや、一応『鉄の街』にいたっけな! だからか!
 しかも今度は『100台』は優にいるぞ。なんて数を作りやがったんだ! だが、頼もしい味方だ。助かった!


「更に、聖者の試練の20層『エンケラドゥス』、40層『モーニング』、60層『アフターヌーン』もいるぞ!」

 アグリオスの紹介で、かつての『聖者の試練』のボスモンスターも味方となった。ていうか、40層と60層のボスってそんなんだったのか!! 見た目はどちらもなんだか、へんてこで歪だ。


「余も忘れて欲しくないの~」

「星の王……クラウディオス・プトレマイオスじゃないか!」
「微力ながら、我が同胞――ダークエルフ『300名』全員を連れてきた」

 なんと、ダークエルフ達が!

「私もいますよ~」
「ライズ! キミも死神たちを連れて来てくれたのか!」

「はい。こっちは賛同してくれた死神たち『30名』ほどですが」
「ありがとう」


 なんと頼もしい!

 ――よし、これだけいれば、勝てるぞ!!!


 幸い、アルラトゥはこの状況に圧倒されている。
 俺は、ヤツの一瞬の隙を突いてメサイアの元まで瞬間的に移動し、お姫様抱っこで連れ戻した。


「サトル……。よかったあああああ! 良かった……本当に!」

 激しく抱きついてくるメサイア。
 安心したのか泣いている。

「すまなかった。でも、これなら絶対に勝てる……絶対に!」


「…………馬鹿な! どうしてだ……どうしてこれほどの人数が勝手に集まった……!!! こんな……、こんなの、あり得ない……!」


 わなわなと震え、次第に自信喪失していくアルラトゥ。


「アルラトゥ! お前には一生分からないさ……! だがな、あえて言ってやる! 情けは人の為ならずってなああああああああ!!」

 出会いと別れ。
 それは、凡庸ぼんような一期一会だったかもしれない。けれど、因果はどんな形であれ、やがて巡り巡って己に返ってくる。


「それが――『理』ことわりなんだよ!!」

「……そんなもの……! そんなものォ!!!」


 アルラトゥは右手を掲げた。
 再び動き出す『97万』の怪物たち。

 こっちの戦力もそれに相当――いや、完全に上回る力がある。みんな百戦錬磨の勇士たち。今の俺たちの戦力を数に換算するなら『3000万』はあるだろう。圧倒的だ。


「……これで決着だ! みんな! いくぞォォォォオォオオオオオオ!!」



「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!!!」」」」」」」」」」


「あの薄気味悪いモンスターをぶっ倒せ!!!!!」「こっちは任せろォオオオ!!!」「うりゃああああああああああ!!!」「これが吾輩の怒りじゃああああ!!!!!」「俺たちの世界を守れェ!!!!」「私たちを、人間を甘く見ないことね!!」「っしゃあああああああああああ!! ぶちのめせええ!!!」「死ねやああああああああああ!!!」「ぶぅらぁあああああ!!」


 ついに激突する『97万』vs『3000万』。

 その戦力差は言うまでもなく歴然。


 飛び交う莫大なスキル。海のように荒れ狂う大魔法。
 この世全ての、ありとあらゆるスキルが四方八方へ拡散してった。それだけじゃない、剣や弓、槍、盾、さまざまな武器も飛び交い、敵の数を凄まじい勢いで減らしていた。

 あの黒塊のモンスターは呆気なく、次々に打ち滅ぼされていく。

 これが皆の力……!


 そこに更に追い打ちを掛けるように、


 ――天から『声』が――


 この声は……まさか!


『アタシも参戦するよ! サトル!』
『遅くなりました。サトルさん! あたしたちも貴方と共に!』


 『赤』と『緑』の聖なる炎が広範囲に広がると、空に浮遊していたモンスターの四分の一が一瞬にして消え去った。


「おお! アグニ、スイカ!! お前たちも来てくれたのか!」

「こんな時だからさ~! サトル、あんたの仲間はアタシが守ってあげるよー!」
「アグニ! おし、頼む!」

 そうアグニと言葉を交わしていると、傍でスイカがスキルを放っていた。


『万物の力……エレメンタルフォース――――――!!』


「うおわっ!!」

 四大精霊(猫)――『ノーム』、『シルフ』、『ウンディーネ』、『サラマンダー』が召喚されるや、超巨大な四色レーザーが一気に黒塊モンスターを塵も残らず壊滅させた。

 相変わらずなんて手加減知らず! グッジョブ!
 というか、以前に比べて破壊力が数百倍は上がっている。一体この短期間で何があったのやら。


 ……さて、皆の助けもあり、あっと言う間に残り『半分以下』となった。おかげで形勢逆転。完全に優勢となった。


 逆風となったアルラトゥは――


「……そ、そんな……」


 この状況を受け入れられず、ただ愕然としていた。


「兄様! これなら容易くアルラトゥの元へ行けますよ!」
「理くんを援護するよ!」
「背後はあたしにお任せください!」

 フォル、ベル、リース!

 おかげで活路は開けた。
 残りの処理はみんなに任せ……俺は、ついにアルラトゥと対峙する。

「アルラトゥ……お前の負けだ! この人数を相手に出来るほどの力はお前にはないだろう。諦めろ」


「…………メサイア。……そうよ、メサイアを吸収すれば……!」


 その言葉に、俺の中で心臓が激しく高鳴った。

 ドクン……、ドクン……、ドクン……と。

 聞こえる。
 今日はその『心の声』が、

 『――――れ』、『――――怒れ・・


 < あの穏やかすぎる夜に身を任せてはならない。
  消えゆく【光】に、輝く【闇】に向かって、怒れ、怒れ >



 アルラトゥが高速で移動を始め、俺に目もくれずそばを素通りしていく――やがて、メサイアの背後に接近していた。



 させるか……
 させるかよォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!


 手を伸ばせば、あと少しでメサイアを【吸収】出来ていただろう――


 だが、


 俺は、



 『瞋恚シンイのエンデュランスッッ!!!!!!』




 ――――――。




 ――崩壊を始める特異な存在。

 光は確かに届いた――


「…………そっか、負けたのね。力がもう……。
 ああ……せっかく、より良い世界を作ろうと思ったのだけど、ね……。
 サトル……あなたの『家』は素敵だったわ……。それだけは本当よ。…………あと、メサイア。もうこの世界に未練はないわ。私を貴女にあげる」


「……させるか!」
「まって、サトル。もう彼女にはそんな力は残ってないから。いいの」
「メサイア……」

 メサイアは、初めてアルラトゥを抱きしめ、涙していた。

 次第にアルラトゥの体は、メサイアの中へと落ちていく。


「…………ああ……これが救世主メサイアの光。なんて……あたたかい……この世界にもまだ希望は……あった、のね」


 メサイアとアルラトゥは同化――
 それと同時に全ての聖地は『光』に包まれた。
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