上 下
81 / 466

第81話 神器 - ジュピター -

しおりを挟む
 大切な仲間を人質に取られ、俺の怒りのボルテージは最大値を突き抜け、憎悪にすら変わっていた。

 こんな時こそ『憎悪』を最大の武器とする【ダークニトロ】が火を吹く。このスキルは、この世全ての憎悪・・・・・・・・を集めることができるが、特に自分の感じる憎しみは強く反映される。

 よって、今の憎しみは、不倶戴天ふぐたいてんである。

 その壮絶な憎しみを抱きながら、俺は、一気にエグゾセに猛接近。


 ヤツの顔面に『ダークニトロフィスト』を――怨嗟えんさ、遺恨、憤慨、忿怒ふんど、怨恨、激憤、憤懣ふんまんの全てを込め――


「これが、俺の、憎しみだああああああああああああああああ!!!!!!!」


「なッ!! なんで、もう目の前に……ヤメロ……!! ヤメロオオオオオオオオオオオオ!!!!!」


「――と、見せかけて……『ダークニトロ・垂直落下式ブレーンバスター』ァァァアァ!!」


 俺は、エグゾセのデカイ図体を、逆さまに持ち上げ――


 脳天から地面へ、容赦なく叩き落とした。


「んぶぉびおぼおええええべおえぼえべおええええええええええええ!?!?!?!?」


 頭だけ地面にメリ込み、体が激しく痙攣けいれんをおこすと、エグゾセは力尽きた。おそらく失神した。いや……失禁もか。


「メサイアたちは……!?」


「大丈夫、こっちはもう黒服たちを成敗したよ~☆」
「プルート! よくやった! もうメサイアたちを取り戻してくれたんだな、ありがとう!」
「うん! まだ石像のままだけどね。どうすれば元に戻るんだろう……モル子ちゃん、なんとか出来ない?」

「……了解。でも今度、花の都の『サクラクレープ』を奢って下さいね」

 モル子はそう条件を出してきた。なんて安い!

「何百個でも奢ってやるさ! 頼むぜ、モル子」
「分かりました。一日に一回しか使用できない秘伝スキル……『ディスペル』を発動です……!」


 ばっと手を掲げると――


 …………なにも発動しなかった。


「え……モル子?」
「……すみません。先ほどの戦闘で力を使いすぎました。……お腹が……減りま――」


 パタッとモル子はその場に倒れた。


「ちょぉぉぉおお!? モル子! 腹ペコだったのか!?」
「ええ……もう三日ほど何も食べていませんから。ダイエットで」
「ダイエットかよ……。十分細くて小さいのに、無理するなよ」
「実は……298グラム増えていたので……。絶望しました」
「地味すぎるわッ!!」


 そんなんで絶望するなよ!?
 くぅ……モル子もヘッポコだったか……。だめだ、この死神たち……!(泣)


「オルクス、なにか手立ては……」
「我々に期待してくれるな。いいか、サトル。強請ねだるな! 勝ち取れ! さすれば与えられん……!」

 とまぁ、オルクスはお手上げの様子。

「自分で何とかしろってか……うーん」


 ……ピコーン!!


 そうだ、エグゾセの指にはまっている神器【ジュピター】!
 あれの効果に『グロリアスブレッシング Lv.5』使用可能があった。

----------------------------------------------------------------
 スキル:グロリアスブレッシング Lv.5
 効果:
 ATK、DEF、INT + 5%上昇。
 HP / SP自然回復速度 + 25%。
 [超][獄]を含む異常状態を回復する。

 有効範囲:パーティ全員
----------------------------------------------------------------

 ……これだ!
 [超][獄]を含む……だから回復可能!


 いける! いけるぞ!


 俺は、ヤツの指から神器【ジュピター】を取り外し……自分の指に。
 すると、スキルリストに『グロリアスブレッシング Lv.5』が追加された。


「これで……みんなを! いくぞ……『グロリアスブレッシング』!!」


 やたら神々しいエフェクトが出まくると――


「……………お?」


 『獄石化』が解かれた。


「あれ……私どうして……? 家で寝ていたのに……てか、オルクス、プルート、モル子!」
「え? なんでこんなところに皆さん!? あたし、また寝相が!?」
「何がなんだか分かりません……。どうして、わたくしたちは、こんな花の都のど真ん中に? でも、いつもの都の感じでは……ありませんね」

 メサイア、リース、フォルが大混乱に陥っていた。

「お、お前たち……よくぞ無事で!」
「ちょいちょい理くん。わたしを忘れないで欲しいなぁ」
「わっ、ベル! いつの間に背後に!」

 首筋に息をかけられた。びびった。

「事情を話してもらうよ」
「分かってる。みんな、聞いてくれ!!」


 ◆


「「「「ええええええ~~~~!!!」」」」


 そんな……と、みんな『獄石化』していた事に戦慄していた。
 そりゃそうだろうな。

 下手すりゃ、バラバラにされていたかもしれないし。


「それで、この場所どこよ。なんか花の都・フリージアに似ているけど、違うわね」
「お、勘が鋭いなメサイア。そう、ここは『アンチクトン』つって、反世界らしいよ。詳しくは知らんけど」


「そうなんです。メサイア様。サトルの仰る通り、ここは言うなれば、花の都・フリージアの裏世界・・・。……おそらく、アルラトゥの作り上げた異空間と推測します。それを証拠に【メデューサ】なるペットがおりましたから」


 ずいっと顔を近づけてくるオルクス。顔がこえーよ。


「あら、オルクス。どうして、みんないるの?」
「紆余曲折ありまして、大監獄ヘルヘイムとらわれていたのです……」
「ああ、つまり、道に迷ったのね」
「ぐうの音も出ません……」

 しょぼーんとしている。
 あんな顔もするんだな、オルクスのやつ。

「とにかく、事の真相を知るのであれば【メデューサ】を……」

 そこで言葉に詰まるオルクス。どうした?


「あ、れ……体が……カチコチに……」


「あい!! オルクスの体が『石化』していくぞ!! まさか……!!」


 ズシ~~~ンと大地が揺れるや、そいつは姿を現した。


「こんな時に来やがったか……! みんな、気をつけろヤツが【メデューサ】だ!!」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗
ファンタジー
 元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。  仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。  気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ

桜井正宗
ファンタジー
 帝国の第三皇子・ラスティは“無能”を宣告されドヴォルザーク帝国を追放される。しかし皇子が消えた途端、帝国がなぜか不思議な力によって破滅の道へ進む。周辺国や全世界を巻き込み次々と崩壊していく。  ラスティは“謎の声”により無人島へ飛ばされ定住。これまた不思議な能力【無人島開発】で無人島のレベルをアップ。世界最強の国に変えていく。その噂が広がると世界の国々から同盟要請や援助が殺到するも、もう遅かった。ラスティは、信頼できる仲間を手に入れていたのだ。彼らと共にスローライフを送るのであった。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...