上 下
75 / 430

第75話 超ラッキー聖女 - カジノで一発逆転の大勝負 -

しおりを挟む
 運にはいつも波がある。
 今の俺はツイているかどうかといえば、ツイていない・・・方だった。

「負けた……」

 ギャンブルとは、つまるところ運否天賦うんぷてんぷ
 運がなければ、負ける。

 マズイ……所持金あと10万プル。
 時間もあと五分もない。

 この状況でどうやって、女神の借金1500万プルを返済したものか……。やっぱり、メサイアには体を売ってもらうしか……。

「それしかないか……」

 などと、諦めかけていたその時。

「兄様、どうしたのですか。箪笥たんすの角に足の小指をぶつけた時のような絶望的な顔をして」

「俺はそんな痛々しい顔をしていたのか……。つか、なんだフォルじゃないか」
「元気ありませんね? それより、見てください。このお金!」

「あん?」

 顔を上げ、フォルの手元をよく見ると……

「うなっ!? なんだその金銀財宝、お宝の山!」

 フォルの手元が黄金に輝いていた。
 プルだけじゃない、ゴールドやシルバー、プラチナ、ダイヤモンドで埋め尽くされていた。

「どこから拾ってきやがった……。あ、いやまてよ……」

 そうか。
 すっかり忘れていた!!

 この聖女――
 Lukカンストの『超ラッキー聖女』だったんだっけ!!!

「お、おい! フォル、頼みがあるんだが」
「お金なら貸しませんよ。これは、恵まれない子供たちのために使うんです! 聖女として当然の……って、兄様!? 顔が……顔が近いです……」

「フォル。メサイアが大変なんだ! このままだと、体を売ることになるかもしれない……」
「え?」
「つまり……かくかくしかじか」


「なるほど!! バカですね!!」


「ああ、バカだよ、本当に!!」


 ◆


 フォルを説得して、メサイアの借金を返済した。
 それでも尚余っていたので、そのお金は恵まれない子供たちの為の寄付となった。

「よかったな、メサイア。体を売らなくて」
「本当よ! ありがとおお、ありがとね、フォルぅぅ!」

 メサイアは、滝のように泣くと、フォルにしがみついて詫びていた。

「い、いえ。姉様の為ですから。そういえば、リースを見かけませんが」
「そういえば、そうだな。ベルはバニーガール姿でディーラーやっとるし。どこへ行ったやら……」

 などと心配していると――
 噂をすればやってくる、リース。


「うああぁぁぁん、サトルさ~~~~~ん!!」

「……え?」

 ドタバタとリースが走ってやってくる。
 ――が、その背後には複数の黒服の男たちが……!!

「まてやああああ! このエルフ!!! 金返しやがれえええ!!」


「って、リース! お前もかあああああああ!!!!!」

「サトルさん! サトルさぁぁぁあん!!」


 リースが俺にしがみついてきた。
 あれー…この光景どこかで見たような……。


「おい、ぽんこつ。聞かなくても分かるが、一応、言ってみろ!」
「いろいろ遊んでいたんですが、負けてしまいましたぁ……。でも、このままじゃマズイと思って、闇金からお金も借りたんです。それでも負けてしまって……うあぁぁあん」

 泣き崩れるリース。

 あのね……泣きたいのはこっちなんだよ?

「このぽんこつエルフがぁぁぁぁああああ!!」

 俺は、リースのすべすべの頬を手加減しながらも、引っ張った。

「ひゃぁぁぁ~~~~~ん!! ふぃたい、ふぃたいでしゅ~~~!!」

 たぶん、痛いと言っている。


「おい、フォル。お前のスーパーラッキーで、なんとかしてくれ」
「仕方ないですね~。リースの為ならば一肌脱ぎましょう」


 俺は、黒服をもう一度説得して、待ってもらうことにした。
 先ほどの完済の前例もあってか、快諾してもらえたのは幸運といえよう。


 ………………
 ………………


 ――そんなワケで、十分後!


「助かったよ、フォル」
「いえいえ! まさかスロットでオスイチ……『ジャックポット』を引き当ててしまうとは……我ながらビックリしました」

 ちなみに『オスイチ』とは、お座り一発とか一回転目で当たりを引くの意味である。そんなギャンブル用語だ。

 で、フォルは見事に一発でジャックポットを引き当てた。

 その額なんと――『1億プル』である。


 一気に大金持ちになってしまった……!


「フォルちゃん、ありがとう……本当に感謝しています。それと、皆さん。ご心配をお掛けしてしまい、申し訳ありませんでした……」

 深い反省、自責の念もあるのか、リースはペコペコと謝っていた。

「まさか、リースがこれほどギャンブルにのめり込むタイプだとは思いませんでした。意外ですね」

 と、フォルは目を丸くしていた。
 まあ、少しはフォローしておくか。

「気にするな……っていうのもヘンだけど、まあ、気にするなよ、リース。さっき、メサイアもやらかしたし」
「そ、そうなんですか? ……ギャンブルとは恐ろしいものですね。今回で痛いほど分かりました」


 ギャンブルは平常心でなければ、見えない魔物に、あっと言う間に飲み込まれてしまう。……見失うなよ、自分を。


「リース、気をつけなさい。一番やっちゃいけないのが闇金からお金を借りること。それをやってしまったら最後。ある船に乗せられ、ジャンケンで生き残らなきゃいけなかったり、鉄骨渡りで命を懸けなければいけない場合もあるらしいわ」


「お前が言うな、メサイア! っていうか、後半は何の話だよ!?」


 まー、ともかく。
 リースの借金、驚きの『3000万プル』も何とか返済し……


 残り『7000万プル』……!


 もっと増やすか……?


 ざわ……。
 ざわざわ……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗
ファンタジー
 元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。  仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。  気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?

無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ

桜井正宗
ファンタジー
 帝国の第三皇子・ラスティは“無能”を宣告されドヴォルザーク帝国を追放される。しかし皇子が消えた途端、帝国がなぜか不思議な力によって破滅の道へ進む。周辺国や全世界を巻き込み次々と崩壊していく。  ラスティは“謎の声”により無人島へ飛ばされ定住。これまた不思議な能力【無人島開発】で無人島のレベルをアップ。世界最強の国に変えていく。その噂が広がると世界の国々から同盟要請や援助が殺到するも、もう遅かった。ラスティは、信頼できる仲間を手に入れていたのだ。彼らと共にスローライフを送るのであった。

ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗
ファンタジー
 辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。  そんな努力もついに報われる日が。  ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。  日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。  仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。 ※HOTランキング1位ありがとうございます! ※ファンタジー7位ありがとうございます!

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界召喚された俺は余分な子でした

KeyBow
ファンタジー
異世界召喚を行うも本来の人数よりも1人多かった。召喚時にエラーが発生し余分な1人とは召喚に巻き込まれたおっさんだ。そして何故か若返った!また、理由が分からぬまま冤罪で捕らえられ、余分な異分子として処刑の為に危険な場所への放逐を実行される。果たしてその流刑された所から生きて出られるか?己の身に起こったエラーに苦しむ事になる。 サブタイトル 〜異世界召喚されたおっさんにはエラーがあり処刑の為放逐された!しかし真の勇者だった〜

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

処理中です...