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第49話 神王 - 俺、ついに聖者になり最強へ!? -

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 ゴーストモンスターは速攻でぶちのめした。
 たいしてレベルも高くなかったし、雑魚だった。少しばかりヒヤッとしたが……完全な見掛け倒しだったオチ。――しかし、メサイアは怖かったのだろうか、ちょっと震えながら、俺にずっとしがみついたままだ。

 で。
 あ、裸だからか。寒いよな。

「そろそろ離れて、服を着ろ」
「な、なによ。嫌なわけ?」
「嫌じゃないけどさ……」

「じゃ、じゃあさ…………」

 メサイアは俺の顔を両手で覆うなり、そのまま顔を近づけて――


「――――――」


 唇が重なっていた。


 突然すぎて、頭の処理が追いつかない。
 えーっと……うん、キスされちゃったのか、俺。

「………………」

 少しして、唇が離れた。

「…………」

 あぁ、やっぱり頭がどうかしている。
 真っ白だ。

「なにか感想ないわけ?」
「ありがとう……?」
「それじゃあ、お礼じゃない。まあいいわ、でもおかげで【死の呪い】は止まったみたい。ほら見て、ネックレスがまた黒くなってきているわ」
「おお、ホントだ。――てことは、また『女神』に?」
「そうみたい! やったわ! またキスしてあげる!」
「……お、お前な。つーか、お前からされるとは思わなったぞ。あれはズルイわ。だ、だからな……改めて俺からさせてくれ」

 メサイアの肩に手を置き、

「メサイア。俺は、お前が好きだ」

「うん、知ってる。今まで長い事一緒に生活してきて、助け合ってきたでしょ。これで私のこと好きじゃなかったら……ぶん殴って、山か川にでも捨てていたところよ。
 ――だからすっごく嬉しいの。ありがと、サトル。ナデナデしてあげる♡」

「お、おいおい……。ま、お前らしい返事でよかった。それでこそ、俺の女神だよ」

 今度は、俺から唇を重ねた。

 満天の星空の下――
 一生と思える時間、長い間ずっと重ね合っていた。


 ◆


 昨晩は、小屋に戻るなり疲れて泥のように眠ってしまった。
 で、新しい朝がやってきた。

 いつもと違うのは、同じ『聖者』を目指す炎の使い手『アグニ』と不羈魔法使いの『スイカ』がいること。今では心強い味方だ。


「――さて、休息も充分に取れた。みんな、今日は【虹】を目指そうと思う」


「良い香りね、この紅茶」
「はい、それはあたしが買ってきた紅茶ですよ、メサイアさん。……わぁ、このパンも美味しいです♪」
「ふふーん。今日はちょっと工夫してみたのですよー。リース、こっちも」
「フォルちゃん、こんなモチモチのパンも作れちゃうなんて凄いです!」

「ジャムくれると嬉しいな」
「あ、ベルさん。どうぞどうぞ、これをお使い下さいですよ」
「あ、どうも。フォルちゃん」

 メサイア、リース、フォル、ベルが朝食を戴きながら、楽しそうに会話を。

「スイカ……このパンすごく美味しいよ!? すごくない!?」
「うん。こんな美味しいの食べた事ない」


 とまあ――アグニとスイカも。
 みんな和気藹々わきあいあいと。


「……」


 朝食食ってからにしよう。


 ◆


 【 ヴァルハラ - 第99層 虹 】


 なんやかんや――『ヴァルハラ』の【虹】に到着。
 第81~98層までは、みんなの力を合わせて攻略していった。強いモンスターばかりで時間が掛かったがやっとココまで。


 そんなワケで、現在『第99層』の【虹】である。


「へ、へぇ……。マジで大きな『虹』が掛かっているんだな」

 俺は一度、ここへ来ているのだが……まったく覚えていない。思い出せるはずもなく、しかし、そこに大きな、それはそれは大きな『虹』が橋のように掛かっていた。その先は【虹の空中庭園ビフロスト】へ繋がっているはずだ。


「いよいよね、サトル」
「おう。改めて確認するが、この先に『神王』がいるんだよな。会って『聖者』にしてもらう。そうなりゃ、俺は無敵になって……レイドボスをワンパンできるっと」

「本当なんですかね?」
 リースが首をかしげた。かわいい。

「本当ですよ。わたくしが保証しましょう」
 聖女が言うのなら間違いないか。聖女なんだし。ヘンタイだけど。

「理くん。わたしもいるから本当だよ」
 ああ、ベルは『聖戦士』にしてもらったんだっけな。
 なら、信頼度100%だろう。まさにレインボーだな。

「やっと……ここまで」
 息を飲むアグニ。
 思えば、彼女とはあんまり話さなかったな。今度、もっと話してみよう。

「……やっとお会いできるのですね、神王様と」
 スイカは何だか落ち着かない。すごくソワソワしている。
 トイレ我慢してないよね……?


「行こう」


 ◆ ◆ ◆ ◆


 ――その昔、人類は過ちを犯しました――


 反響し、聞こえてくる不思議な声。


 ――世界は滅び、再び新しい世界を――


 まるで『聖鐘』ホーリーベルの代わりであるかのように。


 ――あなた方はそのいしずえ――


 うるさい。


 ――『傷』を治すためにも――


 なんだ、この声は。黙れ。


 ――あなた方の魂を生贄サクリファイスに――


 消えろ。消えろ。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 俺たちは【楽園】に到着した。


「ここが、ビフロスト」

 澄んだ空気、空から流れる滝、雲の合間を流れる川。溢れる緑。そんな綺麗な場所だった。だが、人気はまるでない。


 ここは、閉ざされた楽園か。


「…………」

 呆然と立ち尽くしていると――


『みなさん。『聖者の試練』クリアおめでとうございます。
 遠路遥々えんろはるばる、ようこそ。此処ココが私の【ビフロスト】です』


 ――この滑らかで独特な声。
 どこかで……。


「神王様……?」
『ええ――はじめまして。私が神王・・です』


 は……?


 はじめましてだって?


「おい、あんた……!!
 花の都の王様……ミクトラン王・・・・・・じゃないか!!」


 あのピンクの髪の毛、優しい顔立ち。
 どこからどう見ても……!

「おい、ベル。これはいったいどういう事だ!」

「理くん。紹介するよ。この御方こそ、この世界の絶対王・・・にして――『神王・アルクトゥルス』様。ごめんね、ずっと黙っていて。試練の時、わたしが守りばかりに徹していた理由も分かってもらえたと思う」


 ……そう言われると!
 彼女は『盾』で守るばかりで、攻撃をすることは決してなかった。……そういう意図があったのか。自由にしてもらっていたのも、俺たちを監視するためか?


「……うそ。花の王様が? でも、メガネはかけてないわ」
「ま、まさか王様が神王様だったなんて……」
「び、びっくりしました」

 メサイア、リース、フォルも驚愕していた。
 一方、アグニとスイカは、

「そ、そんな……王様が!? し、信じらんない!」
「大変驚きました……。こんなことがあるのですね…………」


 ふたりとも口を押さえ、度肝どぎもを抜かれていた。


「ねえ、サトル。でもあの神王様って、メガネかけてないわ。目があんなキリッとしていて、素顔は案外、イケメンね」
「そ、そうだな。……いや、メガネは伊達だったんだろう。多分な」
「あ、そっか。伊達だったんだ」

「……コホン。サトル殿、それにメサイア様。このメガネは、ただのファッションですよ。ほら――」

 と、例の赤い眼鏡を取り出した。
 あ、王様になった。

「変装の意味合いもあったのですよ。一応、神なので」
「そ、そうですか……。ていうか、王様! こんなところで何してるんです!?」

「あの、聞いていました? 私、です」
……」
「いえ、ですからです」


 ほ、ほ~ん……

 って、本当に神様かよ!?


「それじゃなんだ、花の都・フリージアの王様でもあり、この世界の神様でもあるってことか!?」

「ええ、その通り。改めて自己紹介を。
 私は【アルクトゥルス】。いろんな名を持ちますが、それが本当の名です。で、そんな感じの、ゆる~い神様なんです。ちなみに年齢は∞歳です」


 にかっと笑う神様。
 なんだかえらくゆるいな。……てか、∞歳って。


「……まじか。で、王様。試練クリアしましたが。『聖者』にしてくれるんですよね? このネックレスと引き換えに。でも、魂を捧げなきゃいけないって聞きましたよ。どういう事っすか」

「分かりました! 今回は『特別大サービス』しましょう。皆さん、魂を捧げなくていいです。その代わり、私のクエストを受けてほしい。つまり『ゴッドクエスト』ってわけですな」


「……ゴ、ゴッドクエスト…………」


 思わず吹きそうになった。

 つーか、王様……
 いや、神王さっきから口調も変わってきてないか!

「わ、笑いましたね……。やっぱり、ナシです」

「す、すみません! そんなつもりは!!」
「バカサトル! 笑ってなきゃ『特別大サービス』して貰えたのに~!! ほら、見なさい。神王様、おこよ! 激おこプンプン丸よ!」
「く、くそっ、やっちまったぁ俺……。
 つーか、おこって……なんでお前が知ってる!? 古いぞ」


 いやそれより、アグニとスイカから、すっごい白い目で見られてるよ……。
 そんな目で俺を見ないでくれぇ!!


「やれやれ、あなたは相変わらず・・・・・・・・・ですね、サトル殿。……そんな、あなただからこそ、私は――」

 どこか懐かしそうに俺を見つめる神様。
 な、なんで俺をそんな目で。なんかちょっと、寒気が。

「――アグニ、スイカ、サトル殿こちらへ。
 それ以外の方は、ベルと共に待機下さい」

 どこか別の場所へ案内されるようだ。
 いよいよ『聖者』になれるらしい。


 やっと、か!
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