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第48話 裸の女神 - 浸蝕する死の呪い -

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 メサイアに呼び出された。
 山小屋を出て、闇夜を彷徨さまよう。何処ドコまで行く気だ?

 まったく人気ひとけのない湖に出た。
 そういえば、この炭鉱付近には湖があったっけな。
 そんなに大きくはないけど。

「で、なんで、俺をこんなところに連れ出したんだ。夜で暗いし……まさか、俺を襲うとかじゃないだろうな!?」
「じ、実は……」


 え? マジ?


 と、マジで服を脱ぎだす・・・・・・メサイア。
 家を出る前に着替えていた黒ワンピのれる音がしゅるしゅると。ホントに脱いでしまわれた。


 ……月夜に照らされる下着姿のメサイア。


 まぶしく、とても綺麗だ。

「えっと……俺、襲われる?」
「そ、その……」

 ついには、下着まで外してしまい……に。
 Oh my 裸の女神……。


「おま……!」


 俺は思わず目をらした。
 ムリだろ! もう直視すら不可能だ…………丸見え・・・だし。

「ちゃんと全部見て」
「ちゃんと全部見れるかよ……!」
「お願い、よく見て……お願いだから」
「むぅ、そこまで懇願こんがんされるとなぁ。ま……ま、まあいい。お前が見てというのなら、遠慮なく……ん? メサイア、お前のその体・・・……」

 体の、お腹や背中にある『黒い模様・・・・』はなんだ!?
 キズとかあざではなさそうだが。アレはまるで、メサイアの肌を浸蝕しんしょくしちまっているような……。見ているだけで痛々しい。

「お、おい……なんだそりゃ」
「さっきは、バスタオルで隠していたから分からなかったと思うけど、私、今はこんな醜いんだ……」

「――――」

 な……なんで。

「なにがあった?」
「私……『死神・・』に戻るみたい。【死の呪い】が強まっているの」
「……【死の呪い】だって!?」

 それは以前、王様――ミクトランに教えてもらった。それに、あの【リミットブレイク】の時の本元女神様も言っていたっけ。

 かつて、この世界は『女神』であふれていたが、【死の呪い】のせいで『死神』になっちまったらしいと。その中でも、メサイアはなぜか『女神』に戻ったようだが。


 ちなみに現状、この世界には女神はたった二人だけ・・・・・・・

 だけだったが――メサイアは今【死の呪い】の影響を受け始めている。


 なんで今になって!?

「なにがあった? 原因は?」
「ネックレス」

 例のネックレスを見せてくれる。

「……え」

 ウソだろ……。
 ネックレスの色が【白】に染まりつつある。完全ではないものの、これはいったい? 今までは【黒】だった。――まて、ネックレスは、魂の輝きを示すものではなかったのか。

「実はね、私のコレは特別。中に【死の呪い】が封印されていたの」

 だから、あんなに触れられるのをイヤがったのか。
 つーか、おかしい。

 【死の呪い】は、あの本元女神によれば【黒い魔導書】に封印されていると言っていた。だから、あのネックレスは関係ないはずだが。
 ――いや、魔導書だけではまかないきれない、ということか?

「まったく、どうなってんだ」
「サトル。ごめんね……私、女神じゃなくなっちゃうかも」

 メサイアは残念そうに肩を落とす。そんな落ち込むなって言っても……いや、実際ショックだよな。

 いやでもまて。

「メサイア、お前一度は『死神』だったんだろう? 戻れる方法があるんじゃ」
「そ……それなんだけどさ……」
「な、なんだよ。そんな顔を赤くして」
「……実は」

 随分と歯切れが悪いな。言いにくいのか。

「なんだ、えっちな事じゃないだろうな」
「……っ」
「……ウソだろ? おいおい!?」

 さすがにそれは……。

「キ、キスよ。キス」
「って、なんだキスか…………ってキスぅ!?」
「告白するとね。サトルと初めて会ったあの日……小屋の中でしちゃったの……」

 声がどんどん小さくなる。
 メサイアのヤツ、顔を沸騰させて湯気がスゴイぞ!?

「って……メサイア! 俺が寝ている間にそんな事を……」

「……その、ごめんなさい。正直言うとね、サトルの寝顔……可愛かったから。ちょっと魔が差しちゃって……でも、ああしてなかったら、私『女神』にはなれなかったし。おかげで、小屋の維持のための【建築スキル】だって覚えられたの。
 だけど、このまま『死神』に戻ったら、私、きっと全てを失っちゃうと思う……。なぜか、そんな気がするの」

「どーゆー理屈だよ、そりゃ。
 ま、まあでもそういう事なのか。まー確かに【建築スキル】は偉大だ。メサイアのおかげで、今の俺たち……『山小屋すみか』があるわけだし」

 どうやら、俺とキスした事で(?)……『女神』へ転身できたらしいが、一体どうしてそうなってるんだか。つーか、俺にそんな謎効果が存在したとはな。恐れ入ったよ。

「じゃあなんだ、またキスすれば『女神』になれるかもってか?」
「…………(コクコク)」

 もはや、うなずくことしかできないギリギリ女神・・・・・・
 確かに、このまま『死神』になられて、いきなり小屋が崩壊するだとか、メサイアの性格がメンヘラとかヤンデレになられてもマズイ。……いや、それはそれで見てみたい気もするが。

 何にせよ、今の生活が激変するのだけは避けたい。
 人間、安定が一番だ。


「分かった。俺も正直に告白するよ」
「……」
「メサイア……俺、お前の事が――」


 << Enemy spotted >>


 ……はい?

 敵を発見したって?


 辺りを見渡すと、俺たちは……


『キキキキキシーーーーーーッ!!!』


 明らかにヤバそうな『怨霊』ゴーストに囲まれていた。


「きゃぁぁっ!!」

 あまりに突発的な出現だったので、メサイアは驚き、のまま俺にしがみついてきた。

「うあぁ、メサイア。当たってる! いろいろ当たってるーーー!!!」
「ゴースト系モンスターは苦手なのよ~~~!! サトル、助けて~~~!」
「ば、ばか。体を揺らすな! あわわわ、スキルの狙いが定まらねえええええ!!」


 先制攻撃よりも、自動オート発動を待つとするか。
 モンスターを倒すまで、キスはお預け――だな。
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