上 下
46 / 430

第46話 光と闇 - ダークエクスプロージョン -

しおりを挟む
 第80層ボスモンスター『アグリオス』は弱っている。
 あれだけ立て続けに魔法・物理攻撃を食らえば、もう残りのHPもわずかのはずだ。――であれば、あとは俺の渾身こんしんの【オートスキル】をお見舞いしてやれば……きっと活路は開けるはず。


 拳に『この世全ての憎悪』をフルチャージ。


 その間にも、ヤツの巨大な斧も迫って来た!

 ヤツめ、フォルがいるっていうのに、おかまいなしか! もしくは、あの大斧で俺とフォルを引き剥がそうとする作戦か……?


 絶対離すものか!!!


「フォル、俺にガッチリ、ギッチリ、モッチリしがみついてくれ!!」
「了解です! こうですか!」

 フォルは、両手足でバッチリ俺の体に完全密着してくれた。
 ぎゅぅっと力も今まで以上に入っている。
 力んでくれるおかげで色々天国だ。


 ……生きてて良かった……。


 ――って、そりゃいい!!


 ヤツの攻撃のおかげで『ホーリーブレード』が自動オート発動した。

 コレだ!!

 この『ホーリーブレード』の上に飛び乗り、それを【移動スキルLv.MAX】でコントロールした。このスキルのおかげで自由自在。自分の思った通りに動く。


「よし、これで高速移動して――」


 背後から斧が猛接近してくる。
 寸前で『血の煉獄』が発動、押し返し、炎がヤツの体へ到達。ごうごう燃やし始めた。なんという幸運か! そこで発動するとはな!

 そうか!
 これはフォルの『フォーチュン』の相乗効果もあるに違いない。血がない場合の発動率は中々に悪いし。
 コイツと一緒にいると、なにかと【幸運Luk】が格段に跳ね上がるからな。今はそんな『超絶ラッキー』状態に突入しているようだ!! いいぞ!


「フォル……お前がいてくれて良かった。ありがとう、幸運聖女さま」
「……はいっ。今物凄くキスしたいですけど、我慢しておきます♡」

「おう。――って、ヤロウ! アレでもまだ倒れないのか!!」


 だが、もうヤツは片膝かたひざをついて、息も乱れていた。
 もう精魂尽き果てる一歩手前。風前の灯火。



 勝てる。
 いや、勝つんだ俺は、あの巨人ボスに!!



「いくぞ!!!」


 『ダークニトロフィスト』
 『聖槍・パニッシャートライデント』


 俺は予め集めておいた『この世全ての憎悪』を【ダークニトロ】として両手に付与し、その状態で『聖槍』を持った。これが意外にも、不思議と反発はなかった。


 ――いける。


 これがヤツを滅殺する【光】と【闇】だ。


「終わりだあああああああああッッ!!!!」


 光の槍をヤツ目掛け投擲とうてきした。
 『聖槍・パニッシャートライデント』が高速で『アグリオス』に接近。しかし、突き刺さる寸前でヤツは槍を両手でつかみ、受け止めやがった。


 拮抗きっこうする、俺の槍とヤツの剛腕。


 ……マジか。


 さすが、第80層のボスモンスター。
 俺の最大出力を受け止めるか! だが、あのまま押し切れば!!


 まずい……! 握りつぶされる!


「……なんてな。
 その槍には『この世全ての憎悪』集まっているんだぜ。そいつを『ニトロ』で爆発させる……!」


 あとは発動するだけ……。
 あの一言を口にするだけ。


「爆破!!!!!」


 それを発した瞬間、槍は大きく膨張するや爆散し――

 大爆発を引き起こした。


 まるで【闇】が爆発しちまったような。
 ――いや、確かにアレは【ダークエクスプロージョン】となっていた。


「どわぁぁぁぁぁぁあああッ!?」


 自分で爆破しておいてなんだが、とんでもない威力だった。もう目の前で何が起きているのかさえ、分からん。

 衝撃で『ホーリーブレート』から滑り落ち、俺とフォルはボスから遠く離れた距離でうずくまる。真っ暗で、なにも見えない。なにもかも闇に染まりまくった。


「フォル、しっかり掴まっていろよ! く……!」
「あ、兄様……すごい爆風です。みんな飛ばされてしまっていますよ……!」

 まずいな。
 ちっと、やりすぎちまったらしい……!

「理くん! 助けにきたよ、わたしの盾の中に!」
「おお、ベル! ナイスシールド! てか、よく見えるな!」
「ああ! わたしの眼は特別だからね。それに、みんなも回収しておいた」

 いつの間にか全員、ベルの盾の中に集合していた。
 しっかし、ベルの盾は本当に巨大で頑丈だな……。
 確か、大きさは俺の身長三人分は優にあった。おかげで助かったけどな。


 ――まだ続く、闇爆発。
 ――弾け飛ぶ連鎖爆発。


 『千里眼』クレアボイヤンスによると、それら衝撃波が爆炎となって顕現けんげんしていた。これはもう言ってしまえば、この世の終焉。ヤツどころか、地面を大きく削り、空間さえ捻じ曲げ始めていた。


 更に見ると、『アグリオス』は【ダークバーン】によって焼却中らしく、その激しさは、もはや地獄すら生ぬるい状況だった。


 ヤツはもう、あの『闇炎』から脱出不可能となった。
 最後まで焼かれ、たおれるまでそのままだ。


 そうして待つこと五分弱。
 爆発の炎と【闇】がやっと収まり――


 そして、


 【Good Jobグッジョブ!!】
 【Congratuコングラチュlationsレーションズ!!】



「………………」



 みんな、顔を合わせた。
 本当に勝利したのか確信が持てず、誰しもが疑心暗鬼に陥りかけていたが――この静けさは…………!

 俺は盾から顔を少し出し、確認した。
 ……マジか。

 ヤツの姿がチリとなって消えていた。


「やった……」


 つぶやいた言葉は確信へと変わり、みんなして胸をなでおろし……



「「「「「「やったああああああぁぁ~~~~~~!!!!!」」」」」」



 飛び跳ねた!


「おお…………っしゃぁぁぁああああッ!! ついに『第80層』のボスモンスターを倒したんだ! これで『第99層』にある【虹】へ……『神王』のもとへ行けるんだな!」

「おめでとう、サトル! 今回は死なずによく頑張ったわ!」

「俺はこれでやっと……このクソだるい試練から解放されるんだよな。『聖者』にしてもらえるんだよな!? メサイア」

「ええ。もう80層のボスを倒しちゃったから、道中はあるけど、あとは『第99層』へ向かうのみ。そこにある【虹】を使えば、もう【虹の空中庭園ビフロスト】よ」


 ……やっと。
 やっと、ここまで!


「お疲れ様です。サトルさん。フォルちゃんも怪我ないですか?」
「ああ、ありがと。リース」
「ええ、今『グロリアスヒール』しましたし、わたくしは平気ですよ~」

 みんな、フォルのヒールで回復していく。
 よし、これなら。

「よし、みんな……!」
「もう行くのかい、理くん」

「いったん、へ帰るぞーーーーーー!!!!!」

 疲れたし、もう虹へはいつでも行ける。
 お腹も空いたし、いったん万全にしてから行く事にした。


 考えすぎかもしれないが……


 俺は、この先にも何かあるような・・・・・・・気がしていたんだ。
 だから一度、万全を期すためにも、体を休めてからの方がいいと考えた。


 せめて……1日だけ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗
ファンタジー
 元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。  仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。  気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?

無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ

桜井正宗
ファンタジー
 帝国の第三皇子・ラスティは“無能”を宣告されドヴォルザーク帝国を追放される。しかし皇子が消えた途端、帝国がなぜか不思議な力によって破滅の道へ進む。周辺国や全世界を巻き込み次々と崩壊していく。  ラスティは“謎の声”により無人島へ飛ばされ定住。これまた不思議な能力【無人島開発】で無人島のレベルをアップ。世界最強の国に変えていく。その噂が広がると世界の国々から同盟要請や援助が殺到するも、もう遅かった。ラスティは、信頼できる仲間を手に入れていたのだ。彼らと共にスローライフを送るのであった。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗
ファンタジー
 辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。  そんな努力もついに報われる日が。  ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。  日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。  仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。 ※HOTランキング1位ありがとうございます! ※ファンタジー7位ありがとうございます!

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~

剣伎 竜星
ファンタジー
仕事の修羅場を乗り越えて、徹夜明けもなんのその、年2回ある有○の戦場を駆けた夏。長期休暇を取得し、自宅に引きこもって戦利品を堪能すべく、帰宅の途上で食材を購入して後はただ帰るだけだった。しかし、学生4人組とすれ違ったと思ったら、俺はスマホの電波が届かない中世ヨーロッパと思しき建築物の複雑な幾何学模様の上にいた。学生4人組とともに。やってきた召喚者と思しき王女様達の魔族侵略の話を聞いて、俺は察した。これあかん系異世界勇者召喚だと。しかも、どうやら肝心の勇者は学生4人組みの方で俺は巻き込まれた一般人らしい。【鑑定】や【空間収納】といった鉄板スキルを保有して、とんでもないバグと思えるチートスキルいるが、違うらしい。そして、安定の「元の世界に帰る方法」は不明→絶望的な難易度。勇者系の称号がないとわかると王女達は掌返しをして俺を奴隷扱いするのは必至。1人を除いて学生共も俺を馬鹿にしだしたので俺は迷惑料を(強制的に)もらって早々に国を脱出し、この異世界をチートスキルを駆使して漫遊することにした。※10話前後までスタート地点の王城での話になります。

処理中です...