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第35話 聖者の試練 - 魂の輝きを示すネックレスの謎 -
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突然やってきた『雷の騎士』……カローラは『ビフロストへ向かうな』という。
今度は、強奪されることもなく、無事に美味しいホットケーキを完食できたので、俺は改めてカローラに理由を聞いた。
「サトル、ミクトラン王からネックレスを戴いたはずだ」
「ああ、これ?」
前に、王様から首に掛けてもらった女神や死神と同等だとかのネックレス。……確か『魂の輝きを示す』って言っていたな。
「これがどうした?」
「聖者になるには、試練がある。まず【虹の空中庭園】へ向かい、そのネックレスを神王【アルクトゥルス】様に捧げなければならない。つまり、魂を生贄に捧げなければいけないのだ」
「……は?」
「首にかけられたその瞬間から、己の魂はそのネックレスに宿ることになる。――つまり、そのネックレスが命そのもの。破壊されれば、お前は確実に死ぬ。なれば、さっさとビフロストへ向かい『魂』と引き換えに『聖者』にしてもらうがいいだろう。
しかし、それは。
今度は、レイドボスを倒すという天命を永遠に背負う羽目になる。もし、それを投げ出そうものなら、神王の手によって【サクリファイス】の対象にされるという……その全貌は不明だが」
「ほーん。そりゃヤベぇな」
「なんだ、怖くないのかサトル」
「怖くないね。
俺には、この最強の女神がついているからな。コイツならきっと何とかしてくれるって俺は信じている。今まで、スキルだったり、家だったり何かと俺に『奇跡』を齎してくれた。コイツの笑顔にも何度も救われたからな。だから――」
そう俺は自然に、メサイアの肩に手を置いた。
「……そ、そうよ。サトル、分かってるじゃない……! い、言っておくけど……そんな不意打ちでベタ褒めされて、泣きそうなくらいめちゃくちゃ嬉しいとか思ってないんだからねッ!」
あー…両手であんな顔を押さえて。嬉しいんだ。
つーか、顔真っ赤。
ちょっと泣きそうになってるところも、ポイント高くてカワイイぞ。
「く……まさか、ここでサトル如きに泣かされるだなんて……。私、女神失格だわ。あ~、もう悔しい!!」
「おいー! 如きとか言うな。台無しだー!!」
「兄様、この騎士さんの言っていることは間違っていません。――ですが、神様は常に気紛れ。ネコのように気分屋。わたくしの『フォーチュン』同様に、常に状況は変化しますから、その天啓も現在は異なっているかもしれませんよ」
「らしいぞ、カローラ」
「むむ……一理あるな。なるほど、今一度調べなおす必要がありそうだな」
カローラは、静かに立ち上がった。
「帰るのか?」
「ああ。私はこの世界の真実を知りたい。だから、情報収集にあたる。なにか分かったら、リースの顔を見るついでに情報提供に来よう」
「そりゃ助かるよ」
「ああ。それと……リース。お前は、ひきこもりだったのに、こんなに変わっていたのだな。私は嬉しいぞ。
サトル、どうか妹を宜しく頼む。それでは、馳走になった。また会おう」
嵐の様に去っていった。
なんだかんだ、リースが心配だったんだろうな。
……さて、ビフロストへ向かうべきか否か。
俺は、ここで『苦渋の選択』を迫られることになった。
そりゃ、レイドボスをサクっとぶっ潰すのなら『聖者』になるべきだろう。だが、そのデメリットも大きいらしい。
――いや、悩む必要なんてない。
ウダウダ悩むのは、俺じゃない。
「よし、行こう。ビフロストへ!」
「それでいいのね、サトル」
「いいぞ。けどな、神王にしこたま文句を言ってやる。で、魂も元に戻してもらって、レイドボスも神王に何とかしてもらう。それでいいだろ」
そうさ、なんでおっさんの俺がこんな面倒事を背負いこまなきゃならん。
俺には、マイホームを完成させる夢があるのだ。
「………………」
みんな、素っ頓狂な顔をしていた。
そりゃそうなるよな。
「あ、兄様……神王様にクレームですか。すごい発想ですね」
「あたしも驚きました。普通の人はそんなこと思いつきもしないですよ。まさに、青天霹靂ですね」
「へえ、サトル。実にあんたらしいわ。惚れ直した」
「ほう。メサイア、俺に惚れていたのか。それは知らなかったな」
「う、うるさいわね……ふんっ」
ぷいっとメサイアは顔を背けた。
おまえはテンプレのツンデレちゃんか。
でも、俺も最近ようやく、メサイアの魅力に気付き始めたかもな。
「何にせよ、重要なのはこの『家』だ。聖者とかそんなもんは二の次でいい。とにかく、神王に会うだけあって、何とかしてもらう。それだけだ」
「決定ね。じゃあ、炭鉱へ向かいましょう。リース、フォルもいいわね?」
「はい、問題ありません。わたくしは元から神に使える身ですからね。一度、神王様にはお会いしたいと思っておりましたし」
「あ、あたしは、サトルさんのお傍にいられるなら、何処までもついていきます!」
方針は決まった。
とにかく『神王』に会う。今はそれでいい。
もちろん、無事に会えたら愚痴りまくってやるがな!
◆
【炭鉱ダンジョン - ビフロスト前】
あれから、小屋を【運搬スキル Lv.MAX】で収納しつつ、徒歩で『炭鉱前』までやってきた。結構歩いたが、休み休みだったし、疲れはない。
「……さて、ココからどう【虹の空中庭園】へ行けばいいんだか」
「じゃ、みんな。私についてきて」
……ああ、そうか。
メサイアは知っているのか。その先を。
だったら、案内役はメサイアに任せよう。
そうして、俺たちは『炭鉱』の中へ。
ついに始まったのだ。
『聖者』になる為の試練が――。
今度は、強奪されることもなく、無事に美味しいホットケーキを完食できたので、俺は改めてカローラに理由を聞いた。
「サトル、ミクトラン王からネックレスを戴いたはずだ」
「ああ、これ?」
前に、王様から首に掛けてもらった女神や死神と同等だとかのネックレス。……確か『魂の輝きを示す』って言っていたな。
「これがどうした?」
「聖者になるには、試練がある。まず【虹の空中庭園】へ向かい、そのネックレスを神王【アルクトゥルス】様に捧げなければならない。つまり、魂を生贄に捧げなければいけないのだ」
「……は?」
「首にかけられたその瞬間から、己の魂はそのネックレスに宿ることになる。――つまり、そのネックレスが命そのもの。破壊されれば、お前は確実に死ぬ。なれば、さっさとビフロストへ向かい『魂』と引き換えに『聖者』にしてもらうがいいだろう。
しかし、それは。
今度は、レイドボスを倒すという天命を永遠に背負う羽目になる。もし、それを投げ出そうものなら、神王の手によって【サクリファイス】の対象にされるという……その全貌は不明だが」
「ほーん。そりゃヤベぇな」
「なんだ、怖くないのかサトル」
「怖くないね。
俺には、この最強の女神がついているからな。コイツならきっと何とかしてくれるって俺は信じている。今まで、スキルだったり、家だったり何かと俺に『奇跡』を齎してくれた。コイツの笑顔にも何度も救われたからな。だから――」
そう俺は自然に、メサイアの肩に手を置いた。
「……そ、そうよ。サトル、分かってるじゃない……! い、言っておくけど……そんな不意打ちでベタ褒めされて、泣きそうなくらいめちゃくちゃ嬉しいとか思ってないんだからねッ!」
あー…両手であんな顔を押さえて。嬉しいんだ。
つーか、顔真っ赤。
ちょっと泣きそうになってるところも、ポイント高くてカワイイぞ。
「く……まさか、ここでサトル如きに泣かされるだなんて……。私、女神失格だわ。あ~、もう悔しい!!」
「おいー! 如きとか言うな。台無しだー!!」
「兄様、この騎士さんの言っていることは間違っていません。――ですが、神様は常に気紛れ。ネコのように気分屋。わたくしの『フォーチュン』同様に、常に状況は変化しますから、その天啓も現在は異なっているかもしれませんよ」
「らしいぞ、カローラ」
「むむ……一理あるな。なるほど、今一度調べなおす必要がありそうだな」
カローラは、静かに立ち上がった。
「帰るのか?」
「ああ。私はこの世界の真実を知りたい。だから、情報収集にあたる。なにか分かったら、リースの顔を見るついでに情報提供に来よう」
「そりゃ助かるよ」
「ああ。それと……リース。お前は、ひきこもりだったのに、こんなに変わっていたのだな。私は嬉しいぞ。
サトル、どうか妹を宜しく頼む。それでは、馳走になった。また会おう」
嵐の様に去っていった。
なんだかんだ、リースが心配だったんだろうな。
……さて、ビフロストへ向かうべきか否か。
俺は、ここで『苦渋の選択』を迫られることになった。
そりゃ、レイドボスをサクっとぶっ潰すのなら『聖者』になるべきだろう。だが、そのデメリットも大きいらしい。
――いや、悩む必要なんてない。
ウダウダ悩むのは、俺じゃない。
「よし、行こう。ビフロストへ!」
「それでいいのね、サトル」
「いいぞ。けどな、神王にしこたま文句を言ってやる。で、魂も元に戻してもらって、レイドボスも神王に何とかしてもらう。それでいいだろ」
そうさ、なんでおっさんの俺がこんな面倒事を背負いこまなきゃならん。
俺には、マイホームを完成させる夢があるのだ。
「………………」
みんな、素っ頓狂な顔をしていた。
そりゃそうなるよな。
「あ、兄様……神王様にクレームですか。すごい発想ですね」
「あたしも驚きました。普通の人はそんなこと思いつきもしないですよ。まさに、青天霹靂ですね」
「へえ、サトル。実にあんたらしいわ。惚れ直した」
「ほう。メサイア、俺に惚れていたのか。それは知らなかったな」
「う、うるさいわね……ふんっ」
ぷいっとメサイアは顔を背けた。
おまえはテンプレのツンデレちゃんか。
でも、俺も最近ようやく、メサイアの魅力に気付き始めたかもな。
「何にせよ、重要なのはこの『家』だ。聖者とかそんなもんは二の次でいい。とにかく、神王に会うだけあって、何とかしてもらう。それだけだ」
「決定ね。じゃあ、炭鉱へ向かいましょう。リース、フォルもいいわね?」
「はい、問題ありません。わたくしは元から神に使える身ですからね。一度、神王様にはお会いしたいと思っておりましたし」
「あ、あたしは、サトルさんのお傍にいられるなら、何処までもついていきます!」
方針は決まった。
とにかく『神王』に会う。今はそれでいい。
もちろん、無事に会えたら愚痴りまくってやるがな!
◆
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「……さて、ココからどう【虹の空中庭園】へ行けばいいんだか」
「じゃ、みんな。私についてきて」
……ああ、そうか。
メサイアは知っているのか。その先を。
だったら、案内役はメサイアに任せよう。
そうして、俺たちは『炭鉱』の中へ。
ついに始まったのだ。
『聖者』になる為の試練が――。
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