全スキル自動攻撃【オートスキル】で無双 ~自動狩りで楽々レベルアップ~

桜井正宗

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第23話 聖者祭 - 奇跡と運命の出逢い -

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 短い冬は終わり、暖かい風が吹き始めていた。
 次は春だろうか。

 気のせいか、桜吹雪が舞っているような。
 ――いや、気のせいじゃない。

 目の前にある花の都・フリージアの周囲は、桜の木だらけだったのだ。


「へっくしょいッ!!」


 そいや、俺、花粉症かふんしょうだっけ。この季節はツライな。
 ベッドから半身を起こすと、

「おはよ、サトル。もうお昼よ。こんな時間までダラダラしちゃって。もう『聖者祭』アルビオンは始まっているのよ!?」

 メサイアが俺にまたがっていた。むすっとした顔して。

 もう昼だったのか。
 我ながら寝すぎてしまったが、これもこんな寝やすい気候になったせいさ。

「おはよう。いやぁ~よく寝たよ。つっても、昨晩は突然現れたゴーストモンスター『ポルターガイスト』の討伐に明け暮れていたんだ。寝不足だったんだから許せ」

 そう、昨晩は何故か家の周りに、ゴーストが蔓延はびこっていやがった。
 まったく、聖女のフォルがいたから良かったものの、しかし、あの数は多すぎた。【オートスキル】があるとはいえ、数千体・・・はさすがに取りこぼすってもんだ。


 最終的に、ある一匹が突然変異ミューテーションし――『ポルターガイスト:テラー』へとボス化して、俺はそいつを倒すのに悪戦苦闘したんだがな。


「ま……あとは『血の煉獄』でひたすら燃やしたんだけどな」
「なに寝惚ねぼけたこと言ってんのよ。早く支度する」
「……おまえな。つーか、腹の上にまたがられてたら動けないだろ」
「そ、そうね……。そうだった、じゃ、みんな外で待ってるから早くするのよ」

 メサイアは、なんだか名残惜しそうに降りて行った。
 そんな顔されると胸キュンする……。


 ◆


 花の都・フリージアの中心部――『シンビジウム』。
 そこに向かうと、群衆ぐんしゅうが出来ていた。

「ふひゃぁ~。すごいヒトですね~! こんなに沢山のヒトを見たのは、初めてなのですよぉ~」

 リースが顔を輝かせ、キョロキョロ周りを見渡していた。正直、俺もこの世界に来てからは、こんな人混みは初めてだった。あっちもこっちもヒト、ヒト、ヒト。鬱陶うっとうしいくらいにヒトヒトヒト。


 『聖者祭』アルビオン……ってだけはあるな。
 俺は、人混み大嫌いなんだけど、それは胸にとどめておこう。今は我慢だ。


 この商機ビジネスを逃すまいと、普段のアイテムショップ、フリーマーケットも活気がある。みんな、ここぞとばかりにレアアイテムの売買取引を盛んに行っている。


 へぇ、珍しいアイテムが多いな。
 150万プルする『魔剣・リローデッド』に……、超過剰精錬された『サラリーマンのスーツ』……? うお! こ、これは……『サキュバスの角』! 女の子に装備させれば、夢の中であんなコトやこんなコトが!? めちゃくちゃ欲しい!!

 が……そのお値段――1,000万プル。高すぎる!!


 などと色んなモノに目移りしていると、


「どうしたのですか……? あなたは懺悔ざんげを。……はい、そちらの方は祈りを。――それでは祝福を」


 フォルの前に人だかりが出来ていた。
 うわぁ、いつの間にこんなにヒトが!!


「お、おい。フォル、これは一体なんのさわぎだ?」
「ええ、兄様。皆さん、わたくしの信者なんです」

 あー…そーゆーコト。
 そういえば、以前あの『鉄の街』で『おまえの神はどこにいる!』とか叫んでいたオッサンもいやがるな。オッサンはヘコヘコしてこちらを見ていたが。

「サ、サトル。ここ、ヒト多過ぎよ。それにこの場所は、ただのお祭り会場よ。もっと奥の方へ行かないと……」
「それ、まじかメサイア。なんだよ……早く言ってくれよ。俺はてっきり、この場所で何かあるのかと」


「も~、こう缶詰かんづめ状態だとはぐれそう~…………」


 確かに、ぎゅうぎゅう詰めになっていた。

 ていうか、やべぇ!

 はぐれそう!!
 ――いや、はぐれた・・・・

 リースが誰かに連れていかれた!


「くっ……! せめて、メサイアだけでも!」


 ヒトの荒波に飲まれていくメサイア。
 完全に飲まれる前にと、メサイアの腕に手を伸ばし、引き抜こうとするが――

「あぁぁぁぁぁああああ、メサイア!」


 人の波にもってかれた。

「……まじか」


 リースもどこかへ。
 フォルは信者に連れられて、どこかへ。


 俺ひとりぼっちになっちまった。


「……おいおい。みんな何やってんだー!!」


 ◆


 人混みを抜けて、なんか裏路地に出た。
 そこは薄暗く、気味が悪く……明らかに治安の悪そうな裏道だった。不良のたまり場みたいだなぁ。


「静かだ……ここだけは皆避けてるな。そりゃ、こう薄気味悪いと避けるか」


 不思議とヒトの気配はほとんどない。

 今この場所だけは、水滴の音さえ聞こえてきそうな。
 そんな静寂せいじゃくだけがあった。


 ――この先に、いったい、何が――


 一歩踏み出そうとしたところで、


「この先には行ってはダメだよ、さとるくん」


 ……?
 向こうから声が。


 どこかで・・・・聞いたことのある声がした。
 どこか懐かしい、そんな優しく、落ち着いた声。


「あんた……誰だ? 声はなんとなく覚えがある。でも、名前は思い出せない」
「そうだろうね。この世界に来るとね、昔の記憶は段々と薄れていくんだよ。けれどね、わたしのような稀有けうな存在もいるんだけどね。お久しぶり、理くん」


 闇の中から現れたのは、女の子だった。

 あの変わった耳……猫のような獣耳!

 前髪が長く、右目が隠れている。
 どこかクールな感じがするが――いやだがまて。

「ちょ……。なんつー恰好かっこうしてんだ!」

 アレはアレか、いわゆる……『ビキニアーマー・・・・・・・』ってヤツか!
 すげえ露出、ほとんど肌色だ。目のやり場に困るレベルだ。

 しかも、なかなかの巨乳ときたもんだ。


 正直言ってこんな、巨乳ビキニアーマー少女の知り合いは俺にはいない。


「む……むぅ。すまん。やっぱり思い出せない。でも、俺の名前を知っているってことは……どこかで?」

「そう。その昔、わたしはあなたの従妹いとこだった。もう覚えていないでしょうけれど、あるゲームをススメてくれた。――そうして、わたしも。
 だから、きっと理くんがこの世界に来るんじゃないかって思っていた。本当に、待ちわびたよ……ようやく会えたね」


 ――なんだか、俺と少女は運命的な出会いを果たしたようだ。
 全然覚えてないけどな!


「……って、俺の従妹いとこォ!?」
「間違いなく。ちなみに、昔の名前は事情があって教えられないけれど、今のわたしの名は『ハーデンベルギア』と――。長ったらしいので『ベル』と呼んでくれると嬉しいな」

「お、おう……。よろしく?」

 実感がわかない。
 なんだろう、あまりに唐突とうとつすぎてどうしたらいいか分からない。


 俺はどうしたらいい!?


「理くん。今日は『聖者祭』アルビオンだから、この先へは行ってはダメだよ。だから、振り返らず……『シンビジウム』の先にある『ポインセチア』を目指して。そこで【大いなる祝福】を得られる。聖者への第一歩だよ。頑張って」


 ベルとかいう少女は、そこ・・を指さした。
 あの先に?


「振り返ってはダメ。そのまま希望さきへ」


 振り返ってはダメとか言われたら、振り返りたくなるだろ普通。

「えいっ」

 振り返ると、グキィッと首をひねられた。
 
「振り返るなと言ったでしょーが!!」
「うげぇっ!? ……だ、だって気になるだろ。その先に何があるんだ?」
「……サキュバスのえっちなお店」

「――は? そりゃ、サイコーじゃねーか。行くわ」
「殴るよ!?」
「いってぇ!? もう殴ってるじゃねーか!!」
「ダメ。理くんは、あんなえっちなお店に行っちゃダメ!」

 と、ベルは凄い形相で訴えかけてきた。
 こ、こえーって……。

「わかったわかった。……もう行くよ」
「それでよろしい。じゃあ、またね」
「おう。またな、ベル」

 ベルは、えっちなお店のある方向へ消えた。
 俺は反対方向へ――『ポインセチア』を目指した。


 そこへ行っている間にも、皆を拾えるかな。
 もしくは、そこにいるかもしれない。

 とにかく、行ってみよう。
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