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第40話 大浴場でエルフと猫に挟まれた
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体を清め、大浴場へ。
俺はなるべくヴァルハラとエルナトを見ないよう視線を上に向けた。
「…………」
「背を向けてどうしたんだい、カイリ」
まったく気にしていないのか、エルナトは冷静に俺を呼ぶ。……こんな状況になっても、彼女はまったく動じないのか。
それとも、エルフがそういう種族なのか……それかエルナトが恥ずかしがらないタイプかな。
俺の方はさすがに身が滅びそうだった。
ヴァルハラは少し慣れたとはいえ、エルナトは別次元の美貌を持つ。
こうして裸になってしまえば……美しい女性エルフでしかない。
「……その、俺はもう出ます」
「待った。私が許可するまで出てはならない」
「そ、そんな……」
「話があるんだ」
そう呼び止められては出られない。
それでも俺は背を向けた。
「話って……?」
「カイリ、君はB級の錬金術師だ。でも、ただの錬金術師ではない……そうだろう」
俺の能力を知りたいわけか。
それとなく話す必要はありそうだな。
「俺にはスキルがあるんです」
「やはりか。そんな気がしていたよ。ヴァルハラから力を得たのではないかね」
「知っていたんですか」
「これでも侯爵だからね。そうか、ヴァルハラにひとつ聞きたいのだが」
エルナトは、ヴァルハラへ視線を向けた。そんなヴァルハラは警戒していた。
「な、なんでしょうか」
「君がカイリに与えた能力は、一回きりなのかい?」
「はい……そうですけど」
「そうか。なら、カイリは唯一の錬金術師というわけか」
再び視線が俺に向けられる。
そんな風に見つめられると……ちょっとドキドキするな。
「な、なんだよ、エルナト」
「いやぁ、ますますカイリに興味が沸いた」
「興味って……うわっ」
エルナトが俺の方へ寄ってきた。
密着する寸前だぞ……!!
これはマズイ。男として!!
「カイリ、もし将来の相手がいないのであれば私とどうかな?」
「……え!」
「エルフは嫌いかな?」
「そういうわけじゃないけど、エルナト……近いよ」
慌てているとヴァルハラが叫んだ。
「ちょっと、エルナトさん! 主様にそれ以上、近づかないでください」
「ほう、ヴァルハラ……君はカイリを慕っているのだね」
「当たり前です! わたしの主はカイリさんだけです」
「そうか。だが、恋は自由だ。そして、恋はサイクロンでもある」
「ど、どういうことですか」
「それは自分で考えるんだ。恋愛というものは思い悩み、苦しむものだ」
エルナトって思ったより乙女らしい。
まさか、恋だの恋愛だの言葉がポンポン出てくるとは意外すぎた。
――って、まて!
それって俺に恋したってこと??
ウソ……そんな馬鹿な。
まだ一日も経っていないのに?
「カイリ、意外そうな顔をしているね」
「っ! エルナト、ちょ……密着しすぎ!! って、ヴァルハラまで!!」
二人とも俺に抱きついてきた。
その瞬間、俺は顔が真っ赤になって一瞬で意識が吹き飛んだ。
「――――あぅ」
もう無理……天国すぎて死んじゃう。
* * *
「……」
ふと目を覚ますとベッドの上にいた。
む? どうしてベッドの上に?
確か、お風呂に入っていて……あぁ、思い出した。ヴァルハラとエルナトがくっついてきたんだった。その刺激があまりにも強くて俺は気絶したんだった。
起き上がると、少し重みを感じた。
「むにゃむにゃ」
「って、ヴァルハラ……」
俺の上にヴァルハラがいた。
こんなにくっついて……まあ、今は寝間着だからいいけど。
もう朝か。
今日はアルデバラン王国へ帰って、まずはグレイスにこのことを報告しなないと。そして、父さんと母さんを探す。
俺はなるべくヴァルハラとエルナトを見ないよう視線を上に向けた。
「…………」
「背を向けてどうしたんだい、カイリ」
まったく気にしていないのか、エルナトは冷静に俺を呼ぶ。……こんな状況になっても、彼女はまったく動じないのか。
それとも、エルフがそういう種族なのか……それかエルナトが恥ずかしがらないタイプかな。
俺の方はさすがに身が滅びそうだった。
ヴァルハラは少し慣れたとはいえ、エルナトは別次元の美貌を持つ。
こうして裸になってしまえば……美しい女性エルフでしかない。
「……その、俺はもう出ます」
「待った。私が許可するまで出てはならない」
「そ、そんな……」
「話があるんだ」
そう呼び止められては出られない。
それでも俺は背を向けた。
「話って……?」
「カイリ、君はB級の錬金術師だ。でも、ただの錬金術師ではない……そうだろう」
俺の能力を知りたいわけか。
それとなく話す必要はありそうだな。
「俺にはスキルがあるんです」
「やはりか。そんな気がしていたよ。ヴァルハラから力を得たのではないかね」
「知っていたんですか」
「これでも侯爵だからね。そうか、ヴァルハラにひとつ聞きたいのだが」
エルナトは、ヴァルハラへ視線を向けた。そんなヴァルハラは警戒していた。
「な、なんでしょうか」
「君がカイリに与えた能力は、一回きりなのかい?」
「はい……そうですけど」
「そうか。なら、カイリは唯一の錬金術師というわけか」
再び視線が俺に向けられる。
そんな風に見つめられると……ちょっとドキドキするな。
「な、なんだよ、エルナト」
「いやぁ、ますますカイリに興味が沸いた」
「興味って……うわっ」
エルナトが俺の方へ寄ってきた。
密着する寸前だぞ……!!
これはマズイ。男として!!
「カイリ、もし将来の相手がいないのであれば私とどうかな?」
「……え!」
「エルフは嫌いかな?」
「そういうわけじゃないけど、エルナト……近いよ」
慌てているとヴァルハラが叫んだ。
「ちょっと、エルナトさん! 主様にそれ以上、近づかないでください」
「ほう、ヴァルハラ……君はカイリを慕っているのだね」
「当たり前です! わたしの主はカイリさんだけです」
「そうか。だが、恋は自由だ。そして、恋はサイクロンでもある」
「ど、どういうことですか」
「それは自分で考えるんだ。恋愛というものは思い悩み、苦しむものだ」
エルナトって思ったより乙女らしい。
まさか、恋だの恋愛だの言葉がポンポン出てくるとは意外すぎた。
――って、まて!
それって俺に恋したってこと??
ウソ……そんな馬鹿な。
まだ一日も経っていないのに?
「カイリ、意外そうな顔をしているね」
「っ! エルナト、ちょ……密着しすぎ!! って、ヴァルハラまで!!」
二人とも俺に抱きついてきた。
その瞬間、俺は顔が真っ赤になって一瞬で意識が吹き飛んだ。
「――――あぅ」
もう無理……天国すぎて死んじゃう。
* * *
「……」
ふと目を覚ますとベッドの上にいた。
む? どうしてベッドの上に?
確か、お風呂に入っていて……あぁ、思い出した。ヴァルハラとエルナトがくっついてきたんだった。その刺激があまりにも強くて俺は気絶したんだった。
起き上がると、少し重みを感じた。
「むにゃむにゃ」
「って、ヴァルハラ……」
俺の上にヴァルハラがいた。
こんなにくっついて……まあ、今は寝間着だからいいけど。
もう朝か。
今日はアルデバラン王国へ帰って、まずはグレイスにこのことを報告しなないと。そして、父さんと母さんを探す。
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