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第39話 侯爵家の屋敷で一泊
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辺りはすっかり夜に。
食事に招かれ、俺とヴァルハラは食堂へ。
「ようこそ、カイリ、ヴァルハラ。座ってくれ」
長机の一番端にはエルナトが座っていた。
少し離れた場所にアシャの姿もあった。いつの間に。
指定された場所に座り、俺は感謝を示した。
「食事までありがとう、エルナト」
「これくらいはお安い御用さ。さあ、食べてくれ」
目の前には豪華な料理が立ち並ぶ。
高級ステーキとか魚料理や野菜、普段は口にできないようなものばかりだ。
「カイリさん、このお料理……凄いですよ」
「そら、貴族だからな。てか、ヴァルハラよ、人間の姿でなくていいのか?」
「そうでした!」
ピカッと光るなり、ヴァルハラは猫から人間になった。その光景をエルナトは関心して見ていた。
「その幼女がヴァルハラの人間の姿か」
「……そ、そうですが。わたしに何か?」
困惑するヴァルハラは、エルナトの視線に慌てる。どうやら、俺やウィルソン、グレイス以外の人間には、人見知りが激しいらしいな。
「いや、ジロジロ見て悪かった。それよりも食事にしよう。好きに食べていい」
ナイフとフォークを手に取り、俺は肉を切っていく。
* * *
「――ふぅ、美味かったぁ」
比較的静かな食事が終わり、お腹が満たされた。これほど美味しいものを心行くまで楽しんだのは初めてだ。……これが貴族の食事かぁ。毎日美味いものが食べられて羨ましいな。
こういう生活は憧れる。
俺もいつかどこかに屋敷を建てようかな。
「とても美味しかったですわ、エルナト様」
優雅に、そして静かに食事を進めていたアシャが口を開く。あんまり会話に参加しなかったな。
「それは良かったよ、アシャ。ところで君はこれからどうするつもりだい? ほら、カイリを捕まえる予定じゃなかったっけ」
「……っ! そ、それはそうですけれど……もういいんです」
「どうしてだい?」
「彼は、敵だったわたくしを牢から出してくれた。それが利用する為だとしても……こうして故郷に帰ってこれたのです。感謝しかないですわ」
「なるほど、では敵対関係ではないのだね」
「はい。カイリとは大監獄の件で契約を結びましたから。以降は自由に動きますけれど」
「これからどうするんだい?」
「わたくしは一度、家へ帰ります。お父様も心配なされているでしょうから」
紅茶を楽しむアシャは、俺の方を見ていた。なにか言って欲しいのか。まあ……そうか、ここまで同行してくれたし、礼くらいは言っておこう。
「アシャ、助かったよ。あとは好きにしていい」
「そうさせてもらいますわ」
* * *
食事が終わり、各々部屋へ戻った。
そういえば『大浴場』を好きに使っていいとエルナトが言っていたな。
「ヴァルハラ、俺は風呂へ行く」
「では、わたしも」
「……またかぁ? いいけどさ」
「わたしとカイリさんは一蓮托生ですよぉ」
最近物騒だし、一人残すわけにもいかないか。
ヴァルハラが連れ去られでもしたら……俺はもう立ち直れない。
「じゃあ、行くか。着替えも貸し出してもらったし」
「はい、参りましょー!」
再び部屋を出て『大浴場』を目指す。
メイドのシャロンが一階の西側にあるとか言っていたな。
歩いていくと、見えてきた。
あの扉か。
大きな扉を開け、中へ入ると――。
「「……え」」
俺とエルナトの声が被った。
お互いに見合って――けれど、エルナトは全裸で……って、マジかよ!!
「おやおや、カイリくん。覗きかね」
「こ、これは失礼を!! そんなつもりはなかったんだけど……!!」
「いやぁ、いいさ。カイリくんとヴァルハラもお風呂なんだろ。一緒に入ろう」
「い、一緒に!?」
エルナトは普段は男装っぽいというか、威厳あるけど――脱げば普通に女の子だ。胸も大きいし、真っ白な肌が輝いていた。
「構わないさ。大事な取引相手だからね」
「だ、だけど……」
「実はちょっと話したいこともあったんだ。付き合ってくれ」
「でも!」
「大丈夫。タオルは巻くからさ」
じゃ~んと白いバスタオルを巻くエルナト。それでいいのだろうか。……けど、本人が良いというのだから……付き合うしかないかな。
話しも気になるし。
食事に招かれ、俺とヴァルハラは食堂へ。
「ようこそ、カイリ、ヴァルハラ。座ってくれ」
長机の一番端にはエルナトが座っていた。
少し離れた場所にアシャの姿もあった。いつの間に。
指定された場所に座り、俺は感謝を示した。
「食事までありがとう、エルナト」
「これくらいはお安い御用さ。さあ、食べてくれ」
目の前には豪華な料理が立ち並ぶ。
高級ステーキとか魚料理や野菜、普段は口にできないようなものばかりだ。
「カイリさん、このお料理……凄いですよ」
「そら、貴族だからな。てか、ヴァルハラよ、人間の姿でなくていいのか?」
「そうでした!」
ピカッと光るなり、ヴァルハラは猫から人間になった。その光景をエルナトは関心して見ていた。
「その幼女がヴァルハラの人間の姿か」
「……そ、そうですが。わたしに何か?」
困惑するヴァルハラは、エルナトの視線に慌てる。どうやら、俺やウィルソン、グレイス以外の人間には、人見知りが激しいらしいな。
「いや、ジロジロ見て悪かった。それよりも食事にしよう。好きに食べていい」
ナイフとフォークを手に取り、俺は肉を切っていく。
* * *
「――ふぅ、美味かったぁ」
比較的静かな食事が終わり、お腹が満たされた。これほど美味しいものを心行くまで楽しんだのは初めてだ。……これが貴族の食事かぁ。毎日美味いものが食べられて羨ましいな。
こういう生活は憧れる。
俺もいつかどこかに屋敷を建てようかな。
「とても美味しかったですわ、エルナト様」
優雅に、そして静かに食事を進めていたアシャが口を開く。あんまり会話に参加しなかったな。
「それは良かったよ、アシャ。ところで君はこれからどうするつもりだい? ほら、カイリを捕まえる予定じゃなかったっけ」
「……っ! そ、それはそうですけれど……もういいんです」
「どうしてだい?」
「彼は、敵だったわたくしを牢から出してくれた。それが利用する為だとしても……こうして故郷に帰ってこれたのです。感謝しかないですわ」
「なるほど、では敵対関係ではないのだね」
「はい。カイリとは大監獄の件で契約を結びましたから。以降は自由に動きますけれど」
「これからどうするんだい?」
「わたくしは一度、家へ帰ります。お父様も心配なされているでしょうから」
紅茶を楽しむアシャは、俺の方を見ていた。なにか言って欲しいのか。まあ……そうか、ここまで同行してくれたし、礼くらいは言っておこう。
「アシャ、助かったよ。あとは好きにしていい」
「そうさせてもらいますわ」
* * *
食事が終わり、各々部屋へ戻った。
そういえば『大浴場』を好きに使っていいとエルナトが言っていたな。
「ヴァルハラ、俺は風呂へ行く」
「では、わたしも」
「……またかぁ? いいけどさ」
「わたしとカイリさんは一蓮托生ですよぉ」
最近物騒だし、一人残すわけにもいかないか。
ヴァルハラが連れ去られでもしたら……俺はもう立ち直れない。
「じゃあ、行くか。着替えも貸し出してもらったし」
「はい、参りましょー!」
再び部屋を出て『大浴場』を目指す。
メイドのシャロンが一階の西側にあるとか言っていたな。
歩いていくと、見えてきた。
あの扉か。
大きな扉を開け、中へ入ると――。
「「……え」」
俺とエルナトの声が被った。
お互いに見合って――けれど、エルナトは全裸で……って、マジかよ!!
「おやおや、カイリくん。覗きかね」
「こ、これは失礼を!! そんなつもりはなかったんだけど……!!」
「いやぁ、いいさ。カイリくんとヴァルハラもお風呂なんだろ。一緒に入ろう」
「い、一緒に!?」
エルナトは普段は男装っぽいというか、威厳あるけど――脱げば普通に女の子だ。胸も大きいし、真っ白な肌が輝いていた。
「構わないさ。大事な取引相手だからね」
「だ、だけど……」
「実はちょっと話したいこともあったんだ。付き合ってくれ」
「でも!」
「大丈夫。タオルは巻くからさ」
じゃ~んと白いバスタオルを巻くエルナト。それでいいのだろうか。……けど、本人が良いというのだから……付き合うしかないかな。
話しも気になるし。
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