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第38話 闇の錬金術師への第一歩
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ベケットを預け、大監獄・イグノラムスへ収監してもらうことに。これでもう、ヤツと会うことは二度とない。
聞いた限り、脱獄は不可能。
魔法防壁によるバリア。
脱出できてもバケモノみたいな看守がいるらしく、そいつに見つかれば問答無用で処刑されるらしい。
それなら安心だな。
用も済んだ俺は、アルデバラン王国へ戻ることにしたの――だが。
「今日は一泊するといい」
エルナトの提案により、一晩だけお邪魔することになった。
そうだな、せっかく侯爵と仲良くなったんだ。早々に立ち去るより、仲を深めるほうが今後の商売に良い影響が出るかもしれない。
メイドのシャロンの後をついていき、部屋を案内してもらった。
「こちらです」
中へ入ると、物凄く広かった。
す、すご……貴族の部屋って感じだ。
ベッド広すぎ、ソファもあるし……窓も床から天井まで伸びてるし……圧倒されてばかりだ。
「ここ、俺ひとりで?」
「はい。ここはカイリ様とヴァルハラ様のお部屋になります」
「そりゃ凄いな」
さっそくベッドへ身を投げ出すと――異常なほどフカフカだった。これ、高いヤツだ。
「気持ちいですね、カイリさーん!」
伸び~とするヴァルハラは、すでに眠たそうにしていた。いやだけど、これは眠くなる。安眠できそうだなあ。
でも寝ている場合でもない。
エルナトとの約束で『ニューポーション』を製造しなければならない。……とはいえ、材料がないから作りようがないけど。
仕方ない、別のポーションを研究しよう。
こんなこともあろうかと、最低限の研究セットは持っていた。
「ヴァルハラ悪い。俺はちょっとソファの方で研究を続ける」
「え~、こんな時に研究ですか。今日一日くらいいではないですかぁ」
「少しでも人々の役に立ちたいんだ」
「無茶はダメです。今日はゆっくりして下さい」
ヴァルハラから服を引っ張られ、俺は困った。
「でもなぁ」
「休息も仕事の内ですよ。たまには休まないと商会から怒られるでしょう」
「そう言われるとそうだな。バズさんも同じことを言っていた」
「そうでしょう。では、今日は!」
「分かった。休みにする」
「やったー!!」
嬉しそうに叫ぶヴァルハラが俺の膝の上に乗ってくる。こうされると癒されるというか、可愛いなぁ。
「……すまん、ヴァルハラ。ほら、家を失ったからさ。両親も行方知らずだし」
「そ、そうでした。ごめんなさい」
「ヴァルハラが謝る必要はないさ。家はまぁ……引っ越せばいいし。でも、父さんと母さんが誰かに連れ去られたっぽいし、心配だよ」
「そういえば、あのカイリさんの知り合いの方が錬金術師と言っていましたね」
「ああ、アンダーソンさんね。彼によれば、素顔は見えなかったらしいけど」
「何者なんでしょうね」
そこが肝心だ。素顔が見えなかったということは、フードでも被っていたのか。覚えがあるとしたら、ベガか。可能性はあるかもな。
ヤツも衛兵を買収して出て来た可能性があるかもしれない。
そう思うと、なんだかアルデバラン王国はこのままでいいのかと思えてくる。どうにか変えられればいいんだけど……難しいな。
「明日帰ったら、次に父さんと母さんを探す」
「分かりました。わたしもお手伝いします。あと、ウィルソンさんやグレイスさんの力を借りてもいいと思いますよ。ほら、ニューポーションの件もありますし、今回のことを話せば喜ぶと思います」
「そうだな。侯爵と知り合いのようだし、俺も関わったと知れば喜んでコンキスタドール社が動いてくれるだろう。そうなれば、ニューポーションを製造しまくって大金持ちだ」
「ついにこの時が来るのですね!」
「両親問題は残っているけど、でも、それでも着実に錬金術師として前へ進めていると思う」
「はい、カイリさんならきっと『闇の錬金術師』になれると思います」
「そうだな。俺はもうそれしかない気がしてきた」
改造ポーションを作って、通常よりも凄い効果を持つものを作る方が性に合っていると感じている。
そうだ、俺は宮廷錬金術師を目指す必要はなくなった。あのフォーマルハウトの誘いも断ったし、だから――。
聞いた限り、脱獄は不可能。
魔法防壁によるバリア。
脱出できてもバケモノみたいな看守がいるらしく、そいつに見つかれば問答無用で処刑されるらしい。
それなら安心だな。
用も済んだ俺は、アルデバラン王国へ戻ることにしたの――だが。
「今日は一泊するといい」
エルナトの提案により、一晩だけお邪魔することになった。
そうだな、せっかく侯爵と仲良くなったんだ。早々に立ち去るより、仲を深めるほうが今後の商売に良い影響が出るかもしれない。
メイドのシャロンの後をついていき、部屋を案内してもらった。
「こちらです」
中へ入ると、物凄く広かった。
す、すご……貴族の部屋って感じだ。
ベッド広すぎ、ソファもあるし……窓も床から天井まで伸びてるし……圧倒されてばかりだ。
「ここ、俺ひとりで?」
「はい。ここはカイリ様とヴァルハラ様のお部屋になります」
「そりゃ凄いな」
さっそくベッドへ身を投げ出すと――異常なほどフカフカだった。これ、高いヤツだ。
「気持ちいですね、カイリさーん!」
伸び~とするヴァルハラは、すでに眠たそうにしていた。いやだけど、これは眠くなる。安眠できそうだなあ。
でも寝ている場合でもない。
エルナトとの約束で『ニューポーション』を製造しなければならない。……とはいえ、材料がないから作りようがないけど。
仕方ない、別のポーションを研究しよう。
こんなこともあろうかと、最低限の研究セットは持っていた。
「ヴァルハラ悪い。俺はちょっとソファの方で研究を続ける」
「え~、こんな時に研究ですか。今日一日くらいいではないですかぁ」
「少しでも人々の役に立ちたいんだ」
「無茶はダメです。今日はゆっくりして下さい」
ヴァルハラから服を引っ張られ、俺は困った。
「でもなぁ」
「休息も仕事の内ですよ。たまには休まないと商会から怒られるでしょう」
「そう言われるとそうだな。バズさんも同じことを言っていた」
「そうでしょう。では、今日は!」
「分かった。休みにする」
「やったー!!」
嬉しそうに叫ぶヴァルハラが俺の膝の上に乗ってくる。こうされると癒されるというか、可愛いなぁ。
「……すまん、ヴァルハラ。ほら、家を失ったからさ。両親も行方知らずだし」
「そ、そうでした。ごめんなさい」
「ヴァルハラが謝る必要はないさ。家はまぁ……引っ越せばいいし。でも、父さんと母さんが誰かに連れ去られたっぽいし、心配だよ」
「そういえば、あのカイリさんの知り合いの方が錬金術師と言っていましたね」
「ああ、アンダーソンさんね。彼によれば、素顔は見えなかったらしいけど」
「何者なんでしょうね」
そこが肝心だ。素顔が見えなかったということは、フードでも被っていたのか。覚えがあるとしたら、ベガか。可能性はあるかもな。
ヤツも衛兵を買収して出て来た可能性があるかもしれない。
そう思うと、なんだかアルデバラン王国はこのままでいいのかと思えてくる。どうにか変えられればいいんだけど……難しいな。
「明日帰ったら、次に父さんと母さんを探す」
「分かりました。わたしもお手伝いします。あと、ウィルソンさんやグレイスさんの力を借りてもいいと思いますよ。ほら、ニューポーションの件もありますし、今回のことを話せば喜ぶと思います」
「そうだな。侯爵と知り合いのようだし、俺も関わったと知れば喜んでコンキスタドール社が動いてくれるだろう。そうなれば、ニューポーションを製造しまくって大金持ちだ」
「ついにこの時が来るのですね!」
「両親問題は残っているけど、でも、それでも着実に錬金術師として前へ進めていると思う」
「はい、カイリさんならきっと『闇の錬金術師』になれると思います」
「そうだな。俺はもうそれしかない気がしてきた」
改造ポーションを作って、通常よりも凄い効果を持つものを作る方が性に合っていると感じている。
そうだ、俺は宮廷錬金術師を目指す必要はなくなった。あのフォーマルハウトの誘いも断ったし、だから――。
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