闇の錬金術師と三毛猫 ~全種類のポーションが製造可能になったので猫と共にお店でスローライフします~

桜井正宗

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第37話 儲かる予感! 侯爵との交渉

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ついて行くと、大きな屋敷の前に辿り着いた。

「カイリさん、カイリさん……すっごく広いお屋敷ですよ!」
「あ、ああ……」

ヴァルハラが珍しくテンション高かった。いや、だけどこれは興奮するな。見渡す限り建物が広がっていて、庭もとんでもなく広大だった。

こんな場所に住む貴族とか……何者なんだ?

「驚きましたか、カイリ」
「そりゃな。さすが帝国って思ったよ」
「ここに住むは、ヘルツシュプルング侯爵エルナト様。とても偉い方ですわ」

「だろうな。屋敷を見て分かるよ」


やがて大きな扉の前に。
なんて大きさだ……教会の扉と同等かそれ以上だ。圧倒されていると、中からメイドが現れた。


「ようこそ、アシャ様。戻られていたのですね」
「お久しぶり、シャロン」


シャロン、それがメイドさんの名前らしい。若くて綺麗な人だ……多分、アシャと同い年かな。


「今日はどのようなご用件でしょうか」
「エルナト様に会わせて頂戴。大監獄について聞きたいの」
「分かりました。こちらへ」


どうやら、入っていいみたいだな。

屋敷の中も豪華で快適だった。
絵画や甲冑かっちゅうが並んでいる。
ここまでとはね……。

二階の広間に通され、そこへ入ると窓辺に人がいた。……あの人が侯爵らしい。


「旦那様、お客様です」
「……そうか。下がっていい」


くるっと振り向く……女性エルフ。って、エルフだったのか。


「お久しぶりですわ、エルナト様」
「アシャ、君は捕まったと聞いたけどね。無事で何より」
「この通り、舞い戻ってきましたわ」

「君は昔から運がいいからね。それで、その少年と猫ちゃんは?」

「男の子がカイリです。わたくしを打ち負かした錬金術師です」
「へえ、それは凄い」
「猫は……ヴァルハラです」

「……!」


アシャがそうヴァルハラを紹介すると、エルナトの顔つきが変わった。……もしかして帝国では有名なのか。


「とにかく用件ですね。カイリ、あなたからお願いします」
「そ、そうだな。えっと……このボロボロの男、ベケットって言うんですが、大監獄・イグノラムスへ収監して欲しいんです。余所者だから……その難しいかもしれませんが、でも、もう表に出しちゃいけない男なんです」


俺は、今までの出来事を事細かく説明。エルナトは興味を持ってくれて話を真面目に聞いてくれていた。


「そんなことが。災難だったね、カイリくん」
「それで……ベケットを何とかできませんか」
「うーん、そうだなあ。さすがに他国の人間を大監獄に入れるということは……厳しい。ほら、帝国とアルデバラン王国は少し危うい関係だからね」

その通りだ。
国際問題に発展してしまうだろうな。
でも、それでもだ。

王国に頼れない以上、帝国に頼るしかないんだ。


「そこをどうか」
「そうだねぇ、放火魔っていうか殺人鬼を野放しにするとか……アルデバラン王国ってヤバいね。分かった、請け負うけど条件がある」

「条件?」

「カイリ、君は錬金術師だよね」
「そうですけど……」
「じゃあ、魔力を回復できるポーションを作れるよね?」

「ま、まさか」

「うん。アークトゥルス帝国でも魔力の回復が大変なことになっていてね。知っているかもしれないが、ブルーハーブの供給が絶たれた。それを何とかして欲しい」


――となると、秘伝の『ニューポーション』を出すしかなさそうだな。あれなら簡単に作れるし、レシピさえ流出しなければ、ずっと俺の独占だ。


「ちょうど良いものがありますよ」
「本当か?」


俺は懐から透明な液体が入ったポーションを取り出した。


「これです」
「これは……なんだ? 水にしか見えないが」
「透明なポーションですが、魔力を回復できます。試しに飲んでみて下さい」
「わ、分かった」

 エルナトは疑いながらも瓶に口をつけた。

「どうです?」
「あ、甘いな。……む、この感じ、ブルーポーションの回復と同じ。魔力が回復した!」
「それはニューポーションです。俺にしか作れない特別ポーションですよ。それをアークトゥルス帝国でも販売してもいいです。俺にもメリットありますし」

「これは素晴らしい!! 君は天才だな!!」

「お気に召したようで良かったです。ただし、コンキスタドール社を通してください」
「コンキスタドール社……まさか、カイリくんはあの会社に所属しているのかい?」
「所属っていうか、社長と仲良いんです」

「それは驚きだ。グレイスとは懇意にさせてもらっていてね……!」
「知っていたんですね」
「当然だ。この屋敷にある宝石などをはコンキスタドール社から買い取ったものだから」

そういうことか。
こんなところに縁があったとは……グレイスに感謝だな。

俺は、ニューポーションを必ず帝国にも流通させると約束した。


「それでいいですか?」
「それなら大監獄への収監を認めよう。陛下には、私から伝える」

「ありがとうございます、侯爵様」
「カイリくん、私のことはエルナトと呼んでくれ」
「しかし……」
「いいんだ。君に興味が沸いたし、それにヴァルハラを従えている。これは普通ではありえないことだ。出会いに感謝を」


固い握手を交わし、交渉は成立した。
こんな上手くいくとは!
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