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第34話 試作・ダークポーションα
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「カイリ、お前がその短剣を抜くとはな」
「これは“先生”がくれたものだ。使うつもりはなかった……でも、今こそ使う。ベケット、お前を倒すために」
短剣・グラディウス。
子供の頃に先生から貰った大切な武器だ。
なるべく使うなと言われて最近は特に使用を控えていた。
このグラディウスには『闇の力』が付与されているからだという。俺はその詳細を久しぶりに呼び起こす。
【シリウスのグラディウス】
【効果】
錬金術師専用。
闇属性が付与されている特殊なグラディウス。物理攻撃時、様々なスキル効果を発動する。
装備者の全能力をAランク相当アップする。
「そんなオモチャで僕に勝てるとでも!? こっちはわざわざ全財産を叩いて魔剣を買ってきたんだ」
ベケットは腰に携えている剣を抜いた。
……あれが魔剣?
はじめて見た。
禍々しいオーラを纏う刃は、邪悪に満ちていた。あんなものを持ち出してくるなんて……というか普通に売ってるとは思えない。恐らく、どこかにあるというブラックマーケットで購入したんだろうな。
少しずつ距離を詰めていく。
頭上のヴァルハラが囁いてきた。
「カイリさん、わたしも手を貸しましょうか」
「いや、俺がやる。もうあのベケットを絶対に許してはならないんだ」
「……分かりました。でも、いざとなれば」
「その時は頼む」
改めてベケットと対峙し、グラディウスを構えた。向こうも強い殺気を放ち、明らかな殺意しかなかった。
「クハハハ……カイリ! 今度こそお前をバラバラにしてやるッ!!」
地面を蹴ってベケットが攻めてくる。俺はグラディウスを横に払い、魔剣の刃を弾き飛ばす。
ガンッと鈍い音と共に魔剣が打ち上がる。
「これで……!」
「ほう!! カイリ、お前にこんな剣の腕があったとはな! だが、ゴミすぎるぜ」
「なに!?」
ニヤリと笑うベケットは、魔剣を――捨てた!?
「ばーか!! あの剣はただのボンクラだ!! 魔剣を買う金なんてねーよ!!」
そう言ってベケットは拳を振り上げた。……あの剣は偽物だったのか! なんて卑怯!
俺は辛うじてグラディウスでベケットの拳を防御した。しかし、その威力はなかなかで手が痺れた。
「くっ……」
「自慢じゃないが、その昔に格闘術を習ってね。……オラオラ!!」
ガンガン殴ってくるベケット。くそ、今まではウィルソンがいたり、ヴァルハラの力を借りたりした。だが、こうして一対一となれば、俺は苦戦を強いられた。
くそっ、俺はひとりでは戦えないのか。
焦っているとヴァルハラが囁いた。
「落ち着いて、カイリさん。あなたは錬金術師ですよ」
「……そうだな。怒りで我を忘れるところだった」
こうなったら、徹夜して作った試作『ダークポーション』を飲む。
懐から小さな試験管を出した。
「なんだ、カイリ! その黒い液体の入った物体は!!」
「これはダークポーションだ!! S級以上の錬金術師にしか製造できないポーション。その効果は……!!」
【試作・ダークポーションα】
【効果】
一定の間だけ攻撃速度と攻撃力を二倍アップする。
試作だが、失敗でなければきっとそのままの効果を維持できるはずだ。俺は直ぐに飲んだ。
「……カイリさん!!」
「大丈夫だ、ヴァルハラ。ちょっと味が悪かっただけだ……改良の余地はあるな。だけど、これで俺の攻撃速度と攻撃力がアップした」
「おぉ、成功なのですね」
「っぽいな。ヴァルハラ、ちゃんと掴まってろよ」
改めてグラディウスを構え、俺は突撃した。……なんて身が軽いんだ。まるで風のように嵐のように一瞬でベケットの前に接近できた。
「バカな!!」
「ベケット、これが錬金術師の力だ」
「ゴミ錬金術師ごときが! なぜこんな……!!」
「沈め……ベケット!!」
グラディウスの効果も合わせ、俺は今までにない力を出した。
「やめろおおおおおおおおおおおおおお!!」
「逃げても無駄だッ!!」
俺はベケットの右肩に刃を突き刺した。
直後――上位騎士のスキル【トライアングルスマッシュ】が発動。
三角の剣閃がベケットに炸裂し、ズタズタに引き裂いた。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ…………!!!」
……勝った!!
「これは“先生”がくれたものだ。使うつもりはなかった……でも、今こそ使う。ベケット、お前を倒すために」
短剣・グラディウス。
子供の頃に先生から貰った大切な武器だ。
なるべく使うなと言われて最近は特に使用を控えていた。
このグラディウスには『闇の力』が付与されているからだという。俺はその詳細を久しぶりに呼び起こす。
【シリウスのグラディウス】
【効果】
錬金術師専用。
闇属性が付与されている特殊なグラディウス。物理攻撃時、様々なスキル効果を発動する。
装備者の全能力をAランク相当アップする。
「そんなオモチャで僕に勝てるとでも!? こっちはわざわざ全財産を叩いて魔剣を買ってきたんだ」
ベケットは腰に携えている剣を抜いた。
……あれが魔剣?
はじめて見た。
禍々しいオーラを纏う刃は、邪悪に満ちていた。あんなものを持ち出してくるなんて……というか普通に売ってるとは思えない。恐らく、どこかにあるというブラックマーケットで購入したんだろうな。
少しずつ距離を詰めていく。
頭上のヴァルハラが囁いてきた。
「カイリさん、わたしも手を貸しましょうか」
「いや、俺がやる。もうあのベケットを絶対に許してはならないんだ」
「……分かりました。でも、いざとなれば」
「その時は頼む」
改めてベケットと対峙し、グラディウスを構えた。向こうも強い殺気を放ち、明らかな殺意しかなかった。
「クハハハ……カイリ! 今度こそお前をバラバラにしてやるッ!!」
地面を蹴ってベケットが攻めてくる。俺はグラディウスを横に払い、魔剣の刃を弾き飛ばす。
ガンッと鈍い音と共に魔剣が打ち上がる。
「これで……!」
「ほう!! カイリ、お前にこんな剣の腕があったとはな! だが、ゴミすぎるぜ」
「なに!?」
ニヤリと笑うベケットは、魔剣を――捨てた!?
「ばーか!! あの剣はただのボンクラだ!! 魔剣を買う金なんてねーよ!!」
そう言ってベケットは拳を振り上げた。……あの剣は偽物だったのか! なんて卑怯!
俺は辛うじてグラディウスでベケットの拳を防御した。しかし、その威力はなかなかで手が痺れた。
「くっ……」
「自慢じゃないが、その昔に格闘術を習ってね。……オラオラ!!」
ガンガン殴ってくるベケット。くそ、今まではウィルソンがいたり、ヴァルハラの力を借りたりした。だが、こうして一対一となれば、俺は苦戦を強いられた。
くそっ、俺はひとりでは戦えないのか。
焦っているとヴァルハラが囁いた。
「落ち着いて、カイリさん。あなたは錬金術師ですよ」
「……そうだな。怒りで我を忘れるところだった」
こうなったら、徹夜して作った試作『ダークポーション』を飲む。
懐から小さな試験管を出した。
「なんだ、カイリ! その黒い液体の入った物体は!!」
「これはダークポーションだ!! S級以上の錬金術師にしか製造できないポーション。その効果は……!!」
【試作・ダークポーションα】
【効果】
一定の間だけ攻撃速度と攻撃力を二倍アップする。
試作だが、失敗でなければきっとそのままの効果を維持できるはずだ。俺は直ぐに飲んだ。
「……カイリさん!!」
「大丈夫だ、ヴァルハラ。ちょっと味が悪かっただけだ……改良の余地はあるな。だけど、これで俺の攻撃速度と攻撃力がアップした」
「おぉ、成功なのですね」
「っぽいな。ヴァルハラ、ちゃんと掴まってろよ」
改めてグラディウスを構え、俺は突撃した。……なんて身が軽いんだ。まるで風のように嵐のように一瞬でベケットの前に接近できた。
「バカな!!」
「ベケット、これが錬金術師の力だ」
「ゴミ錬金術師ごときが! なぜこんな……!!」
「沈め……ベケット!!」
グラディウスの効果も合わせ、俺は今までにない力を出した。
「やめろおおおおおおおおおおおおおお!!」
「逃げても無駄だッ!!」
俺はベケットの右肩に刃を突き刺した。
直後――上位騎士のスキル【トライアングルスマッシュ】が発動。
三角の剣閃がベケットに炸裂し、ズタズタに引き裂いた。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ…………!!!」
……勝った!!
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