闇の錬金術師と三毛猫 ~全種類のポーションが製造可能になったので猫と共にお店でスローライフします~

桜井正宗

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第22話 連れ去られた?

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露店街を少し回りつつ、家へ戻った。

「デート楽しかったですよ、カイリさん」
「そ、それは良かった」

そうだ、これはデートでもあったんだ。
あんまりそれっぽくはなかった気はするけれど、グレイスは満足してくれていた。なんだか俺ばかり得る物が多かった気が。

これで本当に良かったのかな。
ほんの少し妙な気持に陥る。
けれど、グレイスは笑顔を向けてくれた。

「気にしすぎです。ほら、笑って」

頬をツンツンされて、なんだか心が安らいだ。
グレイスと一緒にいると、こんなにも楽しいのか。……ウィルソンが羨ましい。

などと思っていると、タイミング良く本人が現れた。


「よう、カイリ、グレイス」

「ウィルソン! 爆炎の錬金術師について調べはついたのか?」
「ああ、牢獄に囚われているアシャを直接訪ねてみた」

「なんだって!」

「脅迫文はヤツではなかったよ」
「そうだったのか……。じゃあ、誰なんだ?」
「さあ、分からない。また調べてみようと思う」
「そうか……分かった。俺も何か分かったら直ぐ知らせる」
「頼む」


ここで解散となり、二人と別れた。


「ウィルソン、グレイス……今日はありがとう。また明日!」


「またな、カイリ!」
「カイリさん、今日はありがとうございました。明日もお願いします」


二人とも手をブンブン振って去っていく。
兄妹っていいなぁ……。

俺は一人っ子だから羨ましい。


「カイリさん、カイリさん。わたしがいるではありませんか~」
「ヴァルハラ、よく俺の考えていることが分かったね」
「分かりますよー。わたし、人の感情を読むの得意なんです」
「へえ。でも、ありがとね」
「ええ、気分が落ち込んだときや辛い思いをしたときは、わたしを頼ってください。お腹と足以外は撫でていいので」

「マジか、それは嬉しいな」


家へ入ると、良い匂いがした。
母さんが夕食を作っているらしい。


「ただいま、母さん」
「おかえり、カイリ。そうそう、父さんが戻っているわよ」
「え! どこにいるの?」
「書斎にいるわ。顔を出してあげて」


俺は頭にヴァルハラを乗せたまま、父さんの書斎へ向かった。
書斎は二階の隅の部屋だ。

古びた廊下がギィギィと軋む。
ボロすぎてそろそろ底が抜けてもおかしくない。
結構稼げたけど、もうちょっと稼いで……引越しもしないとな。

そう考えつつ、俺は扉をノック。

……あれ、反応がないな。

父さん、帰っているんだよな。

気になって扉を開けた。


「父さん……?」


書斎には背を向ける父さんの姿。どうして立ち尽くしているんだ?


「カイリ……」
「ど、どうしたんだよ。怖いぞ」
「我が息子よ!! 今日はよくがんばったな!!」

父さんはダバダバ泣いて抱きついてきた。って、何事ぉ!?

「ちょ、暑苦しいよ、父さん!」
「少しの間だがカイリの行動を見守っていたのだよ」
「な、なにしてんだよ……」

「あんな可愛い娘さんとデートとは、やるな」
「……そ、それは。ていうか、ストーカーみたいなことするなよ……」
「仕方ないだろう。父さんも露店街に用があったんだから」
「そ、そうなのか」

どうやら父さんはオルドリン商会に立ち寄っていたらしい。その時、俺の露店も遠くから見ていたとか。


「お前は立派になったな。人々に求められるようになり、助けとなる存在となった。名も広まりつつあるし、すでに近所では知らぬ者はいない」

「俺はまだまださ。宮廷錬金術師になってもゴールではないと思うし、もっと色んな人にポーションを広めていきたい」

「……あぁ、カイリなら出来るさ。お前のポーションが世界を救うはずだ。だから――」

……あれ、意識が遠のく。
なんで突然……だめだ、眠くなっていく。


* * *


あれから、どれくらい経っただろう。
俺は随分と眠ってしまっていた。

起き上がると父さんの気配はなかった。


「ヴァルハラ、そこにいるのか?」


返事はなかった。
何度も問いかけたけど、いない。
気配もなかった。

え……ヴァルハラ?
……嘘だろ!!

まさか、まさか……父さんが連れ去った!?
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