16 / 43
第16話 反撃の大爆発ポーション
しおりを挟む 先月の三月で三年が経った今でも、夢にまで見るあの日の出来事。
その頃は奈穂がまだ小さくて、今とは別の意味でバタバタとはしていたけれど、それなりに平穏に暮らしていたと思う。
──あの事故が、起こるまでは……。
それは、中学一年生の三学期の終業式を終えた帰り道でのことだった。
桜のつぼみが膨らみ始める中。珍しくその年の春に風邪を引いてしまった私は学校帰りに病院に寄って帰ろうと、下校時、学区外のいつもと違う道を歩いていた。
病院を目前とした十字路にある、花町三丁目交差点を渡ろうとしたとき、悲劇は起こった。
「──ちょ、危ないっ!」
歩行者の信号が青なのを確認して横断歩道を渡り始めた私の背後から聞こえたのは、切羽詰まったような男の人の声。
その声に驚いて後ろをふり返ろうと顔を上げたとき、視界の隅にとんでもない光景が飛び込んだ。
大型のトラックが、こちらに向かって前進してきていたんだ。
歩行者の信号は、確かに青だった。
風邪を引いて頭がぼんやりしていた私は、信号は見ていたものの、信号無視の車に気づけなかった。
逃げなきゃ……っ。
そうは思うけれど、突然の出来事に足は地に張り付いたように動かなくて、その一瞬の間に死を覚悟した。
次に聞こえたのは、ドンと何かが弾け飛んだ鈍い音と女の人の甲高い悲鳴。
私の身体は後方から何かに突き飛ばされるように、思いっきり前方に吹っ飛んだ。
それから少し離れたところで、ガシャンと何かが衝突する音が響く。
あれ、私、生き、て……る?
どういうわけか無事だったことに安堵する中、状況を確認しようとアスファルトに打ち付けられた身体を動かす。
目の前、数メートル先にある電信柱には、正面からトラックが突っ込んで、その破片が路上に散らばっているのが見えた。
間違いなく、先ほど私の方へと突っ込んで来たトラックだ。
そして次第に大きくなる喝采の方へ振り返ったとき、私は助けられた身なんだと把握した。
さっきまで私のいた場所には、思わず目をそらしたくなるくらいに痛々しい姿の男の人と、その傍に立つ青ざめた女の人の姿があったのだから。
一目見て、その血まみれの男の人が私の背中を押して助けてくれた代わりにトラックにはねられたんだということが、嫌でもわかった。
「大丈夫か!?」
「おい、しっかりしろ!」
通りすがりの男性が二人、血まみれのお兄さんの傍へ駆けていく。
「ダメだ。全く反応がない。救急車だ!」
一人の男性が電話をかける中、もう一人の男性が、絶望に染まる表情で事故に遭ったお兄さんを見つめていた女の人に声をかけた。
「きみは、この兄ちゃんの知り合い?」
女の人は、お兄さんを見つめたまま力無くうなずいた。
「……はい。私の彼氏です」
自分でもよく聞き取れたと思うくらいに小さな声で、女の人は確かにそう言った。
「そっか。辛いだろうけど、この兄ちゃんのご家族に連絡お願いしてもいいかな?」
「はい……」
そのとき、鞄に手をやる女の人が、ようやく視線をお兄さんから外した。涙がこぼれ落ちる二つの瞳が、偶然なのかこちらに向けられる。
綺麗なストレートの長い黒髪の下に見える瞳は私を捉えるなり細められて、まるで恨みがましく睨んでいるようだった。
私はそれ以上身体が動かなくて、目眩が激しくなる中、その光景を見ていることしかできなかった。
「あなたは、大丈夫?」
そのとき、また別の年配の女の人が私の方へ来るのが見えた。それが、私が事故当時の最後の記憶だった。
というのも、私はその直後に意識を手放してしまったからだ。
恐らく、転んだ弾みで頭を打ったのだろうと、意識が回復した数日後に聞かされたが、特別脳に異常はなかった。
あとは、私は膝元に大きな傷を負った。
その頃は奈穂がまだ小さくて、今とは別の意味でバタバタとはしていたけれど、それなりに平穏に暮らしていたと思う。
──あの事故が、起こるまでは……。
それは、中学一年生の三学期の終業式を終えた帰り道でのことだった。
桜のつぼみが膨らみ始める中。珍しくその年の春に風邪を引いてしまった私は学校帰りに病院に寄って帰ろうと、下校時、学区外のいつもと違う道を歩いていた。
病院を目前とした十字路にある、花町三丁目交差点を渡ろうとしたとき、悲劇は起こった。
「──ちょ、危ないっ!」
歩行者の信号が青なのを確認して横断歩道を渡り始めた私の背後から聞こえたのは、切羽詰まったような男の人の声。
その声に驚いて後ろをふり返ろうと顔を上げたとき、視界の隅にとんでもない光景が飛び込んだ。
大型のトラックが、こちらに向かって前進してきていたんだ。
歩行者の信号は、確かに青だった。
風邪を引いて頭がぼんやりしていた私は、信号は見ていたものの、信号無視の車に気づけなかった。
逃げなきゃ……っ。
そうは思うけれど、突然の出来事に足は地に張り付いたように動かなくて、その一瞬の間に死を覚悟した。
次に聞こえたのは、ドンと何かが弾け飛んだ鈍い音と女の人の甲高い悲鳴。
私の身体は後方から何かに突き飛ばされるように、思いっきり前方に吹っ飛んだ。
それから少し離れたところで、ガシャンと何かが衝突する音が響く。
あれ、私、生き、て……る?
どういうわけか無事だったことに安堵する中、状況を確認しようとアスファルトに打ち付けられた身体を動かす。
目の前、数メートル先にある電信柱には、正面からトラックが突っ込んで、その破片が路上に散らばっているのが見えた。
間違いなく、先ほど私の方へと突っ込んで来たトラックだ。
そして次第に大きくなる喝采の方へ振り返ったとき、私は助けられた身なんだと把握した。
さっきまで私のいた場所には、思わず目をそらしたくなるくらいに痛々しい姿の男の人と、その傍に立つ青ざめた女の人の姿があったのだから。
一目見て、その血まみれの男の人が私の背中を押して助けてくれた代わりにトラックにはねられたんだということが、嫌でもわかった。
「大丈夫か!?」
「おい、しっかりしろ!」
通りすがりの男性が二人、血まみれのお兄さんの傍へ駆けていく。
「ダメだ。全く反応がない。救急車だ!」
一人の男性が電話をかける中、もう一人の男性が、絶望に染まる表情で事故に遭ったお兄さんを見つめていた女の人に声をかけた。
「きみは、この兄ちゃんの知り合い?」
女の人は、お兄さんを見つめたまま力無くうなずいた。
「……はい。私の彼氏です」
自分でもよく聞き取れたと思うくらいに小さな声で、女の人は確かにそう言った。
「そっか。辛いだろうけど、この兄ちゃんのご家族に連絡お願いしてもいいかな?」
「はい……」
そのとき、鞄に手をやる女の人が、ようやく視線をお兄さんから外した。涙がこぼれ落ちる二つの瞳が、偶然なのかこちらに向けられる。
綺麗なストレートの長い黒髪の下に見える瞳は私を捉えるなり細められて、まるで恨みがましく睨んでいるようだった。
私はそれ以上身体が動かなくて、目眩が激しくなる中、その光景を見ていることしかできなかった。
「あなたは、大丈夫?」
そのとき、また別の年配の女の人が私の方へ来るのが見えた。それが、私が事故当時の最後の記憶だった。
というのも、私はその直後に意識を手放してしまったからだ。
恐らく、転んだ弾みで頭を打ったのだろうと、意識が回復した数日後に聞かされたが、特別脳に異常はなかった。
あとは、私は膝元に大きな傷を負った。
10
お気に入りに追加
823
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
嫌味なエリート治癒師は森の中で追放を宣言されて仲間に殺されかけるがギフト【痛いの痛いの飛んでいけぇ〜】には意外な使い方があり
竹井ゴールド
ファンタジー
森の中で突然、仲間に追放だと言われた治癒師は更に、
「追放出来ないなら死んだと報告するまでだ、へっへっへっ」
と殺されそうになる。
だが、【痛いの痛いの飛んでけぇ〜】には【無詠唱】、【怪我移植(移植後は自然回復のみ)】、【発動予約】等々の能力があり·······
【2023/1/3、出版申請、2023/2/3、慰めメール】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界チートはお手の物
スライド
ファンタジー
16歳の少年秋月悠斗は、ある日突然トラックにひかれてその人生を終えてしまう。しかし、エレナと名乗る女神にチート能力を与えられ、異世界『レイアード』へと転移するのだった。※この作品は「小説家になろう」でも投稿しています。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。
どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!
スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!
天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
クロード・ディスタンスは最強の魔法使い。しかしある日勇者パーティーを追放されてしまう。
勇者パーティーの一員として魔王退治をしてくると大口叩いて故郷を出てきた手前帰ることも出来ない俺は自分のことを誰も知らない辺境の地でひっそりと生きていくことを決めたのだった。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる