闇の錬金術師と三毛猫 ~全種類のポーションが製造可能になったので猫と共にお店でスローライフします~

桜井正宗

文字の大きさ
上 下
13 / 43

第13話 全種類ポーション製造が狙われている!?

しおりを挟む
「なぜこんなことをした」

俺はウィルソンの体を支えつつ、リゲルとかいう男を睨みつけた。
飄々ひょうひょうした表情で立ち尽くすリゲルは、剣を向けてきた。


「お前こそ錬金術師だな。だが、宮廷錬金術師ではないようだな」
「だったらなんだ」
「フォーマルハウトの居場所を教えろ。ヤツはブルーハーブを買い占めていると聞いた。貴重な魔力源を奪っているんだ」

「そりゃ金のあるヤツは買うだろ」

「馬鹿か。このまま買占めが続いたらブルーハーブはどんどん高騰する。ブルーポーションも値上がりするんだよ。そうなったら魔力の回復が大変になる」

なるほど、コイツの言っていることも分かる。冒険者からすれば魔力の回復は重大だ。魔力が底を尽けばスキルが使えない。
中級以上の冒険者ともなると、当たり前に魔力を使う。
更に言えば、魔法職にとっては死活問題だ。

ブルーハーブの買い占めが中級以上の冒険者にとっては大打撃ってことか。

「だからって暴力で解決するのか」

「もう一週間以上、買い占めが続いているんだぞ! ブルーポーションの販売もかなり少なくなっている。だから中堅、大手ギルドではすでに不満が爆発しているんだ。宮廷錬金術師のフォーマルハウトを探し、買い占めを止めさせないと大変なことになる」

「分かった。ブルーポーションが手に入れば良いんだな?」
「そうだ。だからこれ以上、邪魔するんじゃねえ」

「まて。俺がブルーポーションを売ってやる。それも普通のじゃない……改造ブルーポーションだ」

俺がそう言うと、周囲の野次馬が「おぉ~」と騒然となった。

「まさか、あのレッドポーション改のブルー版かよ!」「え、マジ! 新製品が出来たんか」「それなら買うしかないじゃん」「おいおい、並ぼうぜ!!」「多少高くても買うぜ。魔力は重要だからな」「わたしなんて魔術師だから、魔法たくさん使うの! 困ってるの!」「僕もだ。聖属性魔法の燃費が悪くてさ」

なんか既に客がついているんだけど……!?
だが、リゲルはそれでも怒りが収まらなかったようだ。

「錬金術師……貴様。お前もブルーハーブを買い占めしたな!」
「なんでそうなる。俺のは自分で採集してきたんだ。買い占めじゃない」

「あのヒッパルコスの森へ行ったのか。ひとりで? 不可能だ。あそこにはソルジャーゴブリンがうようよしているんだぞ。回復剤なしでいけるがわけが……いや、可能なのか」
「ああ、お前がボコボコにしてくれたウィルソンのおかげでな。というわけだ、まずは謝れ!!」

「あ? お前は何を言っているんだ。俺がやったんじゃねぇよ」
「ふざけるな! どうみたってお前だろ、リゲル!」
「寝言を言ってんじゃねぇよ。その男をボコったのは別人だ。おい、そうだろ!」

リゲルは他のヤツに聞いていた。
周囲の人間はうなずく。
マジか……犯人はリゲルじゃないのか。

ウィルソンに誰がやったのか聞こうとしても、気絶しているしな。


「じゃあ、誰が!!」
「ヤツは“爆炎の錬金術師”と名乗っていた」
「え……なんだって」

「俺はその男がズタボロにされていたからかばってやったんだがな」


え、そうだったのか。
そういえば周囲の冒険者もリゲルを止める素振りがないし……悪口を言ったりすることもなかった。

俺の勘違いなのか。
ていうか、爆炎の錬金術師って……!


「そうか、すまん」
「いや、俺はブルーポーションが手に入ればそれでいいが……けどな、買い占めは許さん。見つけ次第、フォーマルハウトは倒す」

「分かった。今は俺の作ったブルーポーションで我慢してくれ」
「……ああ」

リゲルは少しは納得して背を向けた。
さて、ウィルソンの回復を急がないと。
なかなか深い傷だぞ。

どうするべきか焦っていると、ヴァルハラがこう言った。


「カイリさん、カイリさん」
「なんだ、ヴァルハラ。俺は今、ウィルソンを病院に連れていこうと思ったんだ。けど、ここからは遠くてな」

「分かりました。わたしが治療しましょう」
「え、そんなことが出来るの?」
「猫のままでも可能です。ただ、魔力がないので……回復剤が必要ですが」
「分かった。ブルーポーションを飲んでくれ」

俺は、ブルーポーションをヴァルハラに飲ませた。
魔力が回復したようだ。

「ありがとうございます。では、ウィルソンさんに近づきますね」

ヴァルハラは、トコトコと歩いていき――ウィルソンのおでこに肉球を当てた。すると、ピカピカと光りはじめた。

「なんの光だ?」
「大丈夫。これは回復魔法です! ……ヒール!」

神々しいライムグリーンの光がウィルソンを覆う。すると、血が消えて傷が完治した。直後、意識を取り戻していた。

ウソ……ヒールが使えるのか!

「……ん、ここは」
「ウィルソン! 良かった、無事で」
「なぜ自分は……」
「お前は“爆炎の錬金術師”にやられたらしいな。本当か?」
「ああ……そうだ。突然襲われて……それでカイリのことを聞かれたんだ」
「俺のことを?」

「お前の頭に乗せているヴァルハラについて聞かれたよ。知らんと答えたら、この有様さ」

そうか、俺のせいだったのか。
くそっ……大切な友達を巻き込んでしまった。

「すまない、ウィルソン」
「なぜお前が謝る。悪いのはその爆炎の錬金術師だ」
「だけど……」

「気にするな。幸い、死んではいないし……今はあれだ。お客さんを待たせてやるな。今日も商売だろ?」

「その予定だ。でも、今はウィルソンの体調の方が!」
「自分は平気だ。あとで詳しいことを話すからさ」
「……分かった。俺は露店をするから後で来てくれ」
「もちろんだ」


衰弱しているウィルソンを運び、バズさんに任せた。

俺は露店へ向かった。


「なあ、ヴァルハラ」
「分かっています。爆炎の錬金術師ですね」
「そうだ。この国にいたのかよ」
「そうでしょうね。だって、わたしを狙っていたのですから」
「なぜ狙う」
「さあ、分かりません。ですが、覚えがあるとしたら……『全種類ポーション製造』でしょうね」

「……!」

聞き返そうと思ったけど、露店には既に列が出来ていた。三十人以上は並んでいた。……まずはブルーポーション改を売ってからだな。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

嫌味なエリート治癒師は森の中で追放を宣言されて仲間に殺されかけるがギフト【痛いの痛いの飛んでいけぇ〜】には意外な使い方があり

竹井ゴールド
ファンタジー
 森の中で突然、仲間に追放だと言われた治癒師は更に、 「追放出来ないなら死んだと報告するまでだ、へっへっへっ」  と殺されそうになる。  だが、【痛いの痛いの飛んでけぇ〜】には【無詠唱】、【怪我移植(移植後は自然回復のみ)】、【発動予約】等々の能力があり······· 【2023/1/3、出版申請、2023/2/3、慰めメール】

異世界チートはお手の物

スライド
ファンタジー
 16歳の少年秋月悠斗は、ある日突然トラックにひかれてその人生を終えてしまう。しかし、エレナと名乗る女神にチート能力を与えられ、異世界『レイアード』へと転移するのだった。※この作品は「小説家になろう」でも投稿しています。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
クロード・ディスタンスは最強の魔法使い。しかしある日勇者パーティーを追放されてしまう。 勇者パーティーの一員として魔王退治をしてくると大口叩いて故郷を出てきた手前帰ることも出来ない俺は自分のことを誰も知らない辺境の地でひっそりと生きていくことを決めたのだった。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...