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第11話 爆炎の錬金術師
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貴重な帰還アイテムを使って一瞬でテレポートした。
【アベオの葉】
【効果】
使用すると登録してある『冒険者ギルド』の前に転移する。
冒険者ギルドの前に戻った。
これでブルーハーブ採集は完了した。
「ありがとう、ウィルソン」
「礼ならいらない。自分はカイリと狩へ行けて良かった。これからも同行させてくれないか」
「もちろんだよ。ウィルソンがいれば心強い!」
「良かった。それと……ヴァルハラちゃん、ありがとう」
俺の頭上に乗るヴァルハラに顔を近づけるウィルソンは、礼を言った。
「わたしは何もしていませんよ」
「そんなことはない。カイリを守るために大魔法を使ってくれたじゃないか。……ちょっと変わった魔法だったけど」
「当然です。カイリさんは主ですから」
「これからもよろしく」
ウィルソンは、ヴァルハラに握手して背を向けた。
「行くのか、ウィルソン」
「ああ、自分は帰るよ。待たせている人がいるからね。カイリ、君はブルーポーションを完成させるんだ。期待しているよ! じゃあね!」
ニッと爽やかな笑みを浮かべ、走って行ってしまった。あれほど風のように小気味よい表情を向けられると、なんだか照れるっていうか……期待を裏切れないな。
俺は自分の家を踵を返し、自宅を目指す。
だけど、頭上のヴァルハラが止めてきた。
「カイリさん、少し寄り道しませんか」
「ん? いいけど、どこへ行けばいい?」
「直ぐ近くの噴水広場はどうでしょうか」
「分かった」
少し歩くと噴水広場がある。
冒険者ギルドにも近いので、冒険者が多く休憩している場所でもあった。
ベンチに腰掛けた。
するとヴァルハラは俺の頭から降りた。
なにか重大な話でもするのかなと身構えていると――
ヴァルハラの体がピカピカと光りはじめた。
なんだ、まぶしいっ!
猫の体がどんどん変化していき、やがて大きくなっていた。……あれ、なんか人型になっているような。
気のせいじゃないぞ!
「……ふぅ、久しぶりの人間の姿です」
俺の隣には、小さな女の子がいた。
三毛猫のような色をしたショートヘア。
イエローダイヤモンドのような瞳。
猫の形をした髪飾りをつけ、なぜか服装も可愛らしいワンピース。
……え、うそ。
「女の子だったの!?」
「はい、なにか問題でも?」
「いや、問題っていうか……」
とんでもない美少女だった。
小さくてお人形みたいだ。
天使という言葉がよく似合う。
「カイリさん、わたしは『アークトゥルス帝国』出身の人型にもなれる猫です。もともとはフォーマルハウトという錬金術師の使い魔でした」
「え……ええ!? フォーマルハウトって、このアルデバラン王国にいる宮廷錬金術師じゃないか!!」
「残念ながら、アンタレスという『爆炎の錬金術師』に狙われてしまい……フォーマルハウト様とは分断されてしまったのです」
「つまりなんだ……俺と会う前は逃げていたわけだ」
「そうです。フォーマルハウト様は行方知らず。実は、王国にいるのかも分からないのです。ですが、元主様はわたしには自由に生きろと……そう言い残してどこかへ」
そんな事情があったとはな。
しかし『爆炎の錬金術師』なんて存在は聞いたことがない。
「その爆炎ってなんだ?」
「詳しくは分かりません。突然現れた男です。……それくらいしか」
分からないのか。
正体不明の錬金術師――か。
ソイツがフォーマルハウトとヴァルハラの関係を破壊したわけか。ヴァルハラがあの枝にいた理由もなんとなく分かった。
「分かった。俺がヴァルハラを守るよ」
「ありがとうございます、カイリさん。わたし、怖くて……」
そう震えるヴァラハラの光景を見て、俺はこの子を守らないとなって思った。そうだ、主である俺が守らないと。
その為にも錬金術師として強くなっていかねば。
ヴァルハラの震える手を握り、安心させた。
「安心しろ。ヴァルハラがくれたスキルのおかげで俺の人生上手くいきそうなんだ……。その恩返しは必ずする」
「カイリさん……はい」
猫のようにヴァルハラは、俺に寄り添って甘えた。いや、猫か。でも、今は小さな人間の少女だ。
「さて、ブルーポーションを作るぞ。手伝ってくれ」
「もちろんです! カイリさんの為ならなんだってしますよ」
「ありがとう。帰ろう、俺たちの家へ」
けれど、ヴァルハラはしばらく俺の膝の上に顔を埋めていた。……まあいいか、こうしてゆっくりするのも必要な時間だ。
【アベオの葉】
【効果】
使用すると登録してある『冒険者ギルド』の前に転移する。
冒険者ギルドの前に戻った。
これでブルーハーブ採集は完了した。
「ありがとう、ウィルソン」
「礼ならいらない。自分はカイリと狩へ行けて良かった。これからも同行させてくれないか」
「もちろんだよ。ウィルソンがいれば心強い!」
「良かった。それと……ヴァルハラちゃん、ありがとう」
俺の頭上に乗るヴァルハラに顔を近づけるウィルソンは、礼を言った。
「わたしは何もしていませんよ」
「そんなことはない。カイリを守るために大魔法を使ってくれたじゃないか。……ちょっと変わった魔法だったけど」
「当然です。カイリさんは主ですから」
「これからもよろしく」
ウィルソンは、ヴァルハラに握手して背を向けた。
「行くのか、ウィルソン」
「ああ、自分は帰るよ。待たせている人がいるからね。カイリ、君はブルーポーションを完成させるんだ。期待しているよ! じゃあね!」
ニッと爽やかな笑みを浮かべ、走って行ってしまった。あれほど風のように小気味よい表情を向けられると、なんだか照れるっていうか……期待を裏切れないな。
俺は自分の家を踵を返し、自宅を目指す。
だけど、頭上のヴァルハラが止めてきた。
「カイリさん、少し寄り道しませんか」
「ん? いいけど、どこへ行けばいい?」
「直ぐ近くの噴水広場はどうでしょうか」
「分かった」
少し歩くと噴水広場がある。
冒険者ギルドにも近いので、冒険者が多く休憩している場所でもあった。
ベンチに腰掛けた。
するとヴァルハラは俺の頭から降りた。
なにか重大な話でもするのかなと身構えていると――
ヴァルハラの体がピカピカと光りはじめた。
なんだ、まぶしいっ!
猫の体がどんどん変化していき、やがて大きくなっていた。……あれ、なんか人型になっているような。
気のせいじゃないぞ!
「……ふぅ、久しぶりの人間の姿です」
俺の隣には、小さな女の子がいた。
三毛猫のような色をしたショートヘア。
イエローダイヤモンドのような瞳。
猫の形をした髪飾りをつけ、なぜか服装も可愛らしいワンピース。
……え、うそ。
「女の子だったの!?」
「はい、なにか問題でも?」
「いや、問題っていうか……」
とんでもない美少女だった。
小さくてお人形みたいだ。
天使という言葉がよく似合う。
「カイリさん、わたしは『アークトゥルス帝国』出身の人型にもなれる猫です。もともとはフォーマルハウトという錬金術師の使い魔でした」
「え……ええ!? フォーマルハウトって、このアルデバラン王国にいる宮廷錬金術師じゃないか!!」
「残念ながら、アンタレスという『爆炎の錬金術師』に狙われてしまい……フォーマルハウト様とは分断されてしまったのです」
「つまりなんだ……俺と会う前は逃げていたわけだ」
「そうです。フォーマルハウト様は行方知らず。実は、王国にいるのかも分からないのです。ですが、元主様はわたしには自由に生きろと……そう言い残してどこかへ」
そんな事情があったとはな。
しかし『爆炎の錬金術師』なんて存在は聞いたことがない。
「その爆炎ってなんだ?」
「詳しくは分かりません。突然現れた男です。……それくらいしか」
分からないのか。
正体不明の錬金術師――か。
ソイツがフォーマルハウトとヴァルハラの関係を破壊したわけか。ヴァルハラがあの枝にいた理由もなんとなく分かった。
「分かった。俺がヴァルハラを守るよ」
「ありがとうございます、カイリさん。わたし、怖くて……」
そう震えるヴァラハラの光景を見て、俺はこの子を守らないとなって思った。そうだ、主である俺が守らないと。
その為にも錬金術師として強くなっていかねば。
ヴァルハラの震える手を握り、安心させた。
「安心しろ。ヴァルハラがくれたスキルのおかげで俺の人生上手くいきそうなんだ……。その恩返しは必ずする」
「カイリさん……はい」
猫のようにヴァルハラは、俺に寄り添って甘えた。いや、猫か。でも、今は小さな人間の少女だ。
「さて、ブルーポーションを作るぞ。手伝ってくれ」
「もちろんです! カイリさんの為ならなんだってしますよ」
「ありがとう。帰ろう、俺たちの家へ」
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