7 / 43
第7話 落ちぶれた元ギルドマスター
しおりを挟む
翌朝、起きて俺はリビングへ。
父さんと母さんがもう起きていてた。
二人は相変わらず早起きだなぁ。
挨拶を交わし、俺は椅子へ座る。
すると父さんがこう言った。
「大変だぞ、カイリ」
「どうしたんだい、父さん。なんか深刻な顔をして怖いよ」
「……あぁ、昨日のフェンリルのことだ」
「えっ、あれから進展があったの?」
「情報屋から聞いた確かな情報だ」
「教えてくれ、父さん」
「いいだろう。フェンリルのギルドマスター・ベケットはお前から受けた屈辱、ギルドメンバーの全員脱退など不運が続き……精神崩壊を起こしたようだ」
「マジか」
「結果、彼は狂人となってしまった。いや、もともと彼の心は壊れていたのかもしれないが……ともかく、ベケットは殺人を犯してしまったようなのだ」
「さ、殺人だって!?」
アイツ、そこまで落ちぶれたのか。
続けて話を聞くと、ベケットは人を殺めた後に逃走。アルデバラン王国を脱出した可能性が高いらしい。今はどこかに潜伏しているのではないかということだった。
「――というわけだ、カイリ。お前は今後、命を狙われるかもしれん。出掛けるな」
「そ、そんな……でも、俺はブルーハーブを取りに行くとウィルソンと約束したんだ。悪いけど、父さんの言うことは聞けない」
「馬鹿者。殺されたらどうする! 私だけではない、母さんが悲しむだろう」
隣で話を聞く母さんは心配そうに俺を見る。そんな眼差しで見られると……心が苦しい。でも、今は錬金術師としてのレベルをアップしていかなければ……。
止まってなんていられない。
「それでも俺は上を目指す。大丈夫だよ、今日はウィルソンも一緒だし」
「だが……。分かった、お前の夢を応援するのも親としての務めだ。そうだろう、母さん」
母さんは頷き「そうですよ。大切な息子ががんばっているのだから応援してあげなきゃ」と言ってくれた。良かった。
その時、家の扉がドンドンと鳴った。
来客らしい。
俺が向かおうとしたが、父さんが向かった。
「まて。扉の向こうにベケットがいたらどうする。ここは父さんに任せなさい」
「分かったよ」
父さんは警戒しながら扉を開けた。
すると、そこには……あ、なんだ。
「おはようございます。カイリの家はここだと聞いたもので」
「む? 君はなんだね」
「自分はウィルソン。今日、カイリとダンジョンへ行く約束をしたんですよ」
「そうか、君が! ……ウィルソン?」
父さんがいきなり固まった。
どうしたんだ?
「あの~、自分がなにか?」
「ウィルソンくん、君はもしかして『フッカー家』の者ではないかな」
「御存知でしたか。そうです。自分は『ウィルソン・フッカー』です」
フッカー?
ああ、やっぱり噂の豪商だったのか。
少し前に父さんに教えてもらった。
もとから裕福で宝石を取り扱う商人らしく、今や莫大な財を築いているのだとか。
「そうだったか。ウィルソンくん、君にならカイリを任せられる」
「ありがとうございます、カイリのお父さん! では、カイリを借りますね」
「二人とも気をつけて。ヴァルハラもな」
父さんはそう言って最後まで見送ってくれた。母さんも手を振ってくれた。
そうして家を出たんだ。
* * *
「改めてよろしく、カイリ」
「こっちこそ、わざわざ迎えに来てくれるとは嬉しいよ」
「これくらい普通さ。それより、気になるんだが……」
ウィルソンの視線は俺の頭に向く。
そりゃ気になるよなぁ。
「この三毛猫は、俺の相棒でヴァルハラ。ちっこい猫だけど、不思議な力を持っているんだよ」
「ほ~、ヴァルハラと言うのか。すげぇ美猫だな。雄か? 雌か?」
「あー、それは俺にも分からない」
確認しようとしたら爪で引っ掛かれそうになったし、聞いても教えてくれないんだよな。
それに、ヴァルハラは俺以外には無口というか話す気はないようだった。
「そうか。気になるが、まあいいか! それより、ブルーハーブだったな」
「うん、どこへ行けば採れるんだ?」
「アルデバラン王国の外にある『ヒッパルコス』という森ダンジョンさ」
「ヒッパルコス、なんだか愉快な名だな」
「けどな、割りと高難易度で出現するモンスターも強いんだ」
「マジ? 俺の装備大丈夫かな。ていうか、俺……ポーションピッチャーくらいしか出来ないよ」
「カイリは後衛を頼むよ。自分が前衛で戦うからさ」
「すまないな、ウィルソン。ちなみに、武器は何を使うんだ?」
「自分はこれさ!」
と、ウィルソンは右手を見せた。
ん? 右手?
「って、ウィルソン。その指輪……」
彼の五本指にはそれぞれ細い指輪が嵌っていた。しかも、左手も。全部で十個の指輪がついていたんだ。
意識していなかったから気づかなかった。
こうして意識するようになると、とんでもないな。
「この指輪は、ただの指輪ではないんだ。まあ、モンスターと遭遇した時に力を見せようと思うよ」
「指輪かぁ、想像もつかないな。楽しみにしておくよ」
「おう。じゃあ、出発だ!」
ついに出発。
アルデバランの外へ向かった。
父さんと母さんがもう起きていてた。
二人は相変わらず早起きだなぁ。
挨拶を交わし、俺は椅子へ座る。
すると父さんがこう言った。
「大変だぞ、カイリ」
「どうしたんだい、父さん。なんか深刻な顔をして怖いよ」
「……あぁ、昨日のフェンリルのことだ」
「えっ、あれから進展があったの?」
「情報屋から聞いた確かな情報だ」
「教えてくれ、父さん」
「いいだろう。フェンリルのギルドマスター・ベケットはお前から受けた屈辱、ギルドメンバーの全員脱退など不運が続き……精神崩壊を起こしたようだ」
「マジか」
「結果、彼は狂人となってしまった。いや、もともと彼の心は壊れていたのかもしれないが……ともかく、ベケットは殺人を犯してしまったようなのだ」
「さ、殺人だって!?」
アイツ、そこまで落ちぶれたのか。
続けて話を聞くと、ベケットは人を殺めた後に逃走。アルデバラン王国を脱出した可能性が高いらしい。今はどこかに潜伏しているのではないかということだった。
「――というわけだ、カイリ。お前は今後、命を狙われるかもしれん。出掛けるな」
「そ、そんな……でも、俺はブルーハーブを取りに行くとウィルソンと約束したんだ。悪いけど、父さんの言うことは聞けない」
「馬鹿者。殺されたらどうする! 私だけではない、母さんが悲しむだろう」
隣で話を聞く母さんは心配そうに俺を見る。そんな眼差しで見られると……心が苦しい。でも、今は錬金術師としてのレベルをアップしていかなければ……。
止まってなんていられない。
「それでも俺は上を目指す。大丈夫だよ、今日はウィルソンも一緒だし」
「だが……。分かった、お前の夢を応援するのも親としての務めだ。そうだろう、母さん」
母さんは頷き「そうですよ。大切な息子ががんばっているのだから応援してあげなきゃ」と言ってくれた。良かった。
その時、家の扉がドンドンと鳴った。
来客らしい。
俺が向かおうとしたが、父さんが向かった。
「まて。扉の向こうにベケットがいたらどうする。ここは父さんに任せなさい」
「分かったよ」
父さんは警戒しながら扉を開けた。
すると、そこには……あ、なんだ。
「おはようございます。カイリの家はここだと聞いたもので」
「む? 君はなんだね」
「自分はウィルソン。今日、カイリとダンジョンへ行く約束をしたんですよ」
「そうか、君が! ……ウィルソン?」
父さんがいきなり固まった。
どうしたんだ?
「あの~、自分がなにか?」
「ウィルソンくん、君はもしかして『フッカー家』の者ではないかな」
「御存知でしたか。そうです。自分は『ウィルソン・フッカー』です」
フッカー?
ああ、やっぱり噂の豪商だったのか。
少し前に父さんに教えてもらった。
もとから裕福で宝石を取り扱う商人らしく、今や莫大な財を築いているのだとか。
「そうだったか。ウィルソンくん、君にならカイリを任せられる」
「ありがとうございます、カイリのお父さん! では、カイリを借りますね」
「二人とも気をつけて。ヴァルハラもな」
父さんはそう言って最後まで見送ってくれた。母さんも手を振ってくれた。
そうして家を出たんだ。
* * *
「改めてよろしく、カイリ」
「こっちこそ、わざわざ迎えに来てくれるとは嬉しいよ」
「これくらい普通さ。それより、気になるんだが……」
ウィルソンの視線は俺の頭に向く。
そりゃ気になるよなぁ。
「この三毛猫は、俺の相棒でヴァルハラ。ちっこい猫だけど、不思議な力を持っているんだよ」
「ほ~、ヴァルハラと言うのか。すげぇ美猫だな。雄か? 雌か?」
「あー、それは俺にも分からない」
確認しようとしたら爪で引っ掛かれそうになったし、聞いても教えてくれないんだよな。
それに、ヴァルハラは俺以外には無口というか話す気はないようだった。
「そうか。気になるが、まあいいか! それより、ブルーハーブだったな」
「うん、どこへ行けば採れるんだ?」
「アルデバラン王国の外にある『ヒッパルコス』という森ダンジョンさ」
「ヒッパルコス、なんだか愉快な名だな」
「けどな、割りと高難易度で出現するモンスターも強いんだ」
「マジ? 俺の装備大丈夫かな。ていうか、俺……ポーションピッチャーくらいしか出来ないよ」
「カイリは後衛を頼むよ。自分が前衛で戦うからさ」
「すまないな、ウィルソン。ちなみに、武器は何を使うんだ?」
「自分はこれさ!」
と、ウィルソンは右手を見せた。
ん? 右手?
「って、ウィルソン。その指輪……」
彼の五本指にはそれぞれ細い指輪が嵌っていた。しかも、左手も。全部で十個の指輪がついていたんだ。
意識していなかったから気づかなかった。
こうして意識するようになると、とんでもないな。
「この指輪は、ただの指輪ではないんだ。まあ、モンスターと遭遇した時に力を見せようと思うよ」
「指輪かぁ、想像もつかないな。楽しみにしておくよ」
「おう。じゃあ、出発だ!」
ついに出発。
アルデバランの外へ向かった。
10
お気に入りに追加
823
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
嫌味なエリート治癒師は森の中で追放を宣言されて仲間に殺されかけるがギフト【痛いの痛いの飛んでいけぇ〜】には意外な使い方があり
竹井ゴールド
ファンタジー
森の中で突然、仲間に追放だと言われた治癒師は更に、
「追放出来ないなら死んだと報告するまでだ、へっへっへっ」
と殺されそうになる。
だが、【痛いの痛いの飛んでけぇ〜】には【無詠唱】、【怪我移植(移植後は自然回復のみ)】、【発動予約】等々の能力があり·······
【2023/1/3、出版申請、2023/2/3、慰めメール】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界チートはお手の物
スライド
ファンタジー
16歳の少年秋月悠斗は、ある日突然トラックにひかれてその人生を終えてしまう。しかし、エレナと名乗る女神にチート能力を与えられ、異世界『レイアード』へと転移するのだった。※この作品は「小説家になろう」でも投稿しています。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。
どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!
スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!
天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
クロード・ディスタンスは最強の魔法使い。しかしある日勇者パーティーを追放されてしまう。
勇者パーティーの一員として魔王退治をしてくると大口叩いて故郷を出てきた手前帰ることも出来ない俺は自分のことを誰も知らない辺境の地でひっそりと生きていくことを決めたのだった。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる