闇の錬金術師と三毛猫 ~全種類のポーションが製造可能になったので猫と共にお店でスローライフします~

桜井正宗

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第7話 落ちぶれた元ギルドマスター

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翌朝、起きて俺はリビングへ。
父さんと母さんがもう起きていてた。
二人は相変わらず早起きだなぁ。

挨拶を交わし、俺は椅子へ座る。
すると父さんがこう言った。

「大変だぞ、カイリ」
「どうしたんだい、父さん。なんか深刻な顔をして怖いよ」

「……あぁ、昨日のフェンリルのことだ」
「えっ、あれから進展があったの?」
「情報屋から聞いた確かな情報だ」
「教えてくれ、父さん」
「いいだろう。フェンリルのギルドマスター・ベケットはお前から受けた屈辱、ギルドメンバーの全員脱退など不運が続き……精神崩壊を起こしたようだ」

「マジか」

「結果、彼は狂人となってしまった。いや、もともと彼の心は壊れていたのかもしれないが……ともかく、ベケットは殺人を犯してしまったようなのだ」

「さ、殺人だって!?」

アイツ、そこまで落ちぶれたのか。
続けて話を聞くと、ベケットは人を殺めた後に逃走。アルデバラン王国を脱出した可能性が高いらしい。今はどこかに潜伏しているのではないかということだった。


「――というわけだ、カイリ。お前は今後、命を狙われるかもしれん。出掛けるな」
「そ、そんな……でも、俺はブルーハーブを取りに行くとウィルソンと約束したんだ。悪いけど、父さんの言うことは聞けない」

「馬鹿者。殺されたらどうする! 私だけではない、母さんが悲しむだろう」


隣で話を聞く母さんは心配そうに俺を見る。そんな眼差しで見られると……心が苦しい。でも、今は錬金術師としてのレベルをアップしていかなければ……。

止まってなんていられない。

「それでも俺は上を目指す。大丈夫だよ、今日はウィルソンも一緒だし」

「だが……。分かった、お前の夢を応援するのも親としての務めだ。そうだろう、母さん」

母さんはうなずき「そうですよ。大切な息子ががんばっているのだから応援してあげなきゃ」と言ってくれた。良かった。

その時、家の扉がドンドンと鳴った。
来客らしい。

俺が向かおうとしたが、父さんが向かった。


「まて。扉の向こうにベケットがいたらどうする。ここは父さんに任せなさい」
「分かったよ」


父さんは警戒しながら扉を開けた。
すると、そこには……あ、なんだ。


「おはようございます。カイリの家はここだと聞いたもので」
「む? 君はなんだね」
「自分はウィルソン。今日、カイリとダンジョンへ行く約束をしたんですよ」
「そうか、君が! ……ウィルソン?」

父さんがいきなり固まった。
どうしたんだ?

「あの~、自分がなにか?」
「ウィルソンくん、君はもしかして『フッカー家』の者ではないかな」
「御存知でしたか。そうです。自分は『ウィルソン・フッカー』です」

フッカー?
ああ、やっぱり噂の豪商だったのか。
少し前に父さんに教えてもらった。
もとから裕福で宝石を取り扱う商人らしく、今や莫大な財を築いているのだとか。

「そうだったか。ウィルソンくん、君にならカイリを任せられる」
「ありがとうございます、カイリのお父さん! では、カイリを借りますね」
「二人とも気をつけて。ヴァルハラもな」

父さんはそう言って最後まで見送ってくれた。母さんも手を振ってくれた。

そうして家を出たんだ。


* * *


「改めてよろしく、カイリ」
「こっちこそ、わざわざ迎えに来てくれるとは嬉しいよ」
「これくらい普通さ。それより、気になるんだが……」

ウィルソンの視線は俺の頭に向く。
そりゃ気になるよなぁ。

「この三毛猫は、俺の相棒でヴァルハラ。ちっこい猫だけど、不思議な力を持っているんだよ」
「ほ~、ヴァルハラと言うのか。すげぇ美猫だな。雄か? 雌か?」
「あー、それは俺にも分からない」

確認しようとしたら爪で引っ掛かれそうになったし、聞いても教えてくれないんだよな。
それに、ヴァルハラは俺以外には無口というか話す気はないようだった。

「そうか。気になるが、まあいいか! それより、ブルーハーブだったな」
「うん、どこへ行けば採れるんだ?」

「アルデバラン王国の外にある『ヒッパルコス』という森ダンジョンさ」
「ヒッパルコス、なんだか愉快な名だな」
「けどな、割りと高難易度で出現するモンスターも強いんだ」

「マジ? 俺の装備大丈夫かな。ていうか、俺……ポーションピッチャーくらいしか出来ないよ」
「カイリは後衛を頼むよ。自分が前衛で戦うからさ」
「すまないな、ウィルソン。ちなみに、武器は何を使うんだ?」

「自分はこれさ!」


と、ウィルソンは右手を見せた。
ん? 右手?


「って、ウィルソン。その指輪……」


彼の五本指にはそれぞれ細い指輪がはまっていた。しかも、左手も。全部で十個の指輪がついていたんだ。
意識していなかったから気づかなかった。

こうして意識するようになると、とんでもないな。


「この指輪は、ただの指輪ではないんだ。まあ、モンスターと遭遇した時に力を見せようと思うよ」
「指輪かぁ、想像もつかないな。楽しみにしておくよ」
「おう。じゃあ、出発だ!」


ついに出発。
アルデバランの外へ向かった。
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