闇の錬金術師と三毛猫 ~全種類のポーションが製造可能になったので猫と共にお店でスローライフします~

桜井正宗

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第5話 大手ギルド解散!?

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平和な日々がはじまった。
あの撃退以降、フェンリルの気配はない。

俺は家に帰ってはレッドポーション改を作り続けた。
改造ポーションの噂はどんどん広まり、今や列ができるほどの盛況っぷり。

高需要のおかげでもあって、少し高く売れるようになった。
それに感謝されるようにもなった。


「ありがとう、カイリ。このポーションは回復力が素晴らしい」「コスパ最高だよね。接近物理職には助かる」「もっとたくさん作ってくれ!」「予約とかできないの~?」「全部欲しいなぁ」「宮廷錬金術師を超えとるよ、これは!」


絶賛の嵐。
まさかお客さんから喜びの声が貰えるとは、俺も嬉しかった。

「良かったですね、カイリさん」
「君のおかげだよ、ヴァルハラ」
「いえいえ、わたしはキッカケを与えたに過ぎません。力をどうするかはカイリさん次第でしたし」

「けど……いや、分かった」
「それで、お金はどうです?」
「ああ、レッドポーション改を売り続けたおかげで、金貨二枚分になったよ。次の製造に必要な金は貯まった」


フォーゲル銅貨1000ベル、
バーナム銀貨10000ベル、
ハーシェル金貨100000ベル、

と、それぞれの価値がある。
それが今回は金貨二枚分――つまり、20万ベルを獲得した。
これは、まともに働いても得るまでに二ヶ月か三か月以上は掛かる。

「あの、カイリさん。貨幣って硬貨とベルどっちがいいんです?」
「どっちも全地域で使えるよ。でも、場所によっては金貨の価値が下がっていたり、上がっていたりする。その場合は、ベルで所持する方がいいのかもね」

このアルデバラン王国にいる限りは、どっちでもいいといった感じだ。

この資金を元手に、次の改造ポーションを作る。


魔力を三回も回復できる『ブルーポーション改』、状態異常を三回も回復できる『グリーンポーション改』、一定の間だけ攻撃速度と攻撃力を三倍アップする『ダークポーション』、人造傭兵を召喚する『ホムンクルスポーション』……などなど中級から上級のものまで手をつけていこうと考えた。


そうして家に帰ると父さんと母さんが出迎えてくれた。


「おかえり、カイリ!」
「おかりなさい、カイリ」


父さんが俺の肩を叩き、ニコニコしていた。


「今日どうだった、カイリ。また売り上げが上がったのか?」
「まあね。今日で二十万も貯まった」
「二十万!? 凄い稼ぎじゃないか、これで引越しも出来るぞ」
「いや、家とかまだ先の話だよ。この資金でもっと凄いポーションを作って、もっと稼ぐ」

「……ふむ、事は慎重にか。分かった、お前の邪魔はせん。好きにしなさい」
「ありがとう、父さん。それに母さんも」

母さんは微笑んで「晩御飯ができているわよ」と言った。

二人には苦労を掛けているけど、もう直ぐだ。


* * *


晩御飯を食べていると、父さんが神妙な表情で驚くべき情報を教えてくれた。


「カイリ、聞いたか」
「なにを?」
「大手ギルド、フェンリルが……解散したそうだ」

「え!?」

俺は思わず声が裏返った。
あのフェンリルが……解散?
ウソだろ。
信じられなかった。


「驚くのも無理はないだろう。ギルドマスターとメンバーは、お前のことで揉めたらしくてな」
「ベケットは何をしたんだ?」

「元から不満があったのだろろうな。ギルドメンバーは全員脱退したとさ」

そうだったのか。
あのフェンリルのメンバーは、俺を笑う程度の人間だった。けど、ベケットは違った。貴族出身らしいと聞いたから、きっとそういう傲慢ごうまんな性格が仇となったのだろうな。


「そうか。これでフェンリルも終わりか」
「どうだろうな。ベケットは諦めないじゃないか」
「かもね。アイツの諦めの悪さと言ったら……」

「近所の住人が彼を目撃したそうだ。聞いたところによれば、悔しがり叫ぶベケットの姿があったとか。同時に、怒り心頭のようでな……カイリの名を何度もつぶやき、憎悪しているようだったとか」


マジかよ。
逆恨みとかされても困るな。
焦っていると母さんが俺の手を優しく握った。

「カイリ、何が合っても母さんたちが助けてあげるからね」
「大丈夫だよ。俺はもうC級ランクの錬金術師じゃない。以前とはまるで違う力を手に入れたんだ」

「その言葉を信じているよ。がんばりなさい」


そうだ、母さんたちに不自由ない生活をしてもらいたい。俺自身も今よりもっとマシな生活がしたい。
ヴァルハラの期待を裏切らない為にも、俺はポーションを作り続ける。
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