闇の錬金術師と三毛猫 ~全種類のポーションが製造可能になったので猫と共にお店でスローライフします~

桜井正宗

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第1話 ギルド追放

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「なんだこのクソマズポーション!! カイリ、お前なんて追放だ!!」

地面には割れたポーション瓶。
足でグシャグシャ踏まれて、俺は後頭部を鈍器で殴られたようなショックを受けた。

こんなの酷過ぎる。

十年以上、錬金術師として頑張ってきたのに……この仕打ち。

「ベケット、追放はないだろ!?」
「僕の気はもう変わらない。カイリ、お前のポーションは味がまずいだけじゃない。回復力が無さすぎるんだよ!」

「待ってくれ。だからって追放なんて!」
「しつこいぞ。……分かった、ハッキリ言ってやる。お前は無能なんだよ」


……無能、そこまで言うか!
これでも並みの錬金術師であるとは自負している。
一応、Cランクだし。
そりゃ、AとかS級には敵わないけど。

確かに回復力はないかもしれないけど……。
それでも。


「頼む、チャンスをくれ」
「消え失せろ」


ベケットもその他のギルドメンバーも俺を見捨てて行ってしまった。

国の外側にある森の中。
俺は完全に孤立した。


……くそっ、どうしてこんなことに。


トボトボと薄暗い森の中を歩く。
これからどうすればいい?
あの大手ギルドに入れたのも奇跡だったのに。

さっきまで所属していた『フェンリル』は、王国の中でもトップクラスに分類されるギルドだった。

あらゆる冒険者を導く『ギルド連盟』のおかげでなんとか加入できたのに……こうして捨てられるとは思いもしなかった。

毎日必死だったのに。


無気力のまま森を抜けると、そこは“がけ”だった。


まさに断崖だんがい絶壁ぜっぺき
下が見えないほど底が深い。

このまま落ちたら楽になれるかなぁ……なんて思っていると。


『みゃー、みゃー』


なんて猫のような鳴き声がした。
って、猫だよ!

どこかなと周囲を見渡すと、崖のギリギリに生える木の枝にしがみつく三毛猫の姿があった。

あんなところに!

そうか下りれなくなっちゃったんだな。
助けに行こう。


俺は木登りしていく。
細い枝を伝って、猫に手を伸ばす。


「こっちこい、俺が助けてやる」
「みゃー」
「そうだ、そのままこっちへ……あっ!」


滑り落ちて……くそっ、せめて猫だけでも助けてやるさ!

猫の手を掴むと、枝が折れた。

俺はそのまま転落、底へ落ちていく。


あー…死んだなって思った。


けど、下は滝で湖だった。
深い深い湖のおかげで大きな怪我を負うことはなかった。
けど、溺れかけていた。

やっべ……息が。

そこで意識を失――いや、猫だけでも助ける。


気合で泳いで、なんとか陸地に上がった。

俺はそのまま倒れ、意識を失った。

 ・
 ・
 ・

ずっと暗闇だったから、死んだなって思った。
でも息が出来るし、視界もボヤけてはいたけど段々とハッキリしてきた。

ああ、俺は生きているんだ。

急に頬をペロペロ舐められた。

助けた三毛猫だ。


「良かった、無事だったんだな」
「みゃー」

「そうか。ケガもないか。俺もよく死ななかったと思う」
「そうだにゃ。おかげで助かったのにゃ」
「うんうん。命あっての何とやらだよな」
「ですにゃー」

「ああ…………あ?」

「どうしましたにゃ!?」

「へ……猫が……猫がしゃべったあああああああああ!?」


驚いた。
非常に驚いた。
この三毛猫、喋るぞ!!

この魔法のある世界に喋る猫がいても不思議ではないけど、レアすぎる。はじめて見た。

普通は、高レベルの魔法使いが使い魔とかにしているものだ。はぐれたのかな。

「わたしは“ヴァルハラ”と申します。よろしくですにゃ」
「お、俺は錬金術師のカイリだけど……何なんだ、お前」
「先ほどは助けていただき、ありがとうですにゃ! 実は悪い人に追われていたですにゃ~」

「そうなのか」
「ところで、あなた様は錬金術師なんですにゃ?」
「そうだけど、ギルドを追放されちゃってさ」
「ほほーぅ。では、助けてくれたお礼に“力”をプレゼントしましょうにゃ!!」

「え? 力を?」

「ええ。わたしにとってカイリ様は大恩人。これから、あなた様の従順なペットになりますにゃ。よろしくですにゃ! というわけで、パワー!!!」


ピカーッと光る。

うぉ……まぶしッ!!

キラキラ光ると俺は闇に包まれた。


え?


闇ィ!!?


なんか邪悪なオーラに包まれ、俺はぐるぐる巻かれて変な気分になった。おいおい、大丈夫なのこれ。呪いっぽいんだけど。


「うわ、怖っ」
「完了ですにゃ。これでカイリ様は『全種類ポーション製造』可能になりましたにゃ」

「ふぇ!? 全種類? うそ……」
「本当ですにゃ。スキルを確認してみてください~」


どれどれと俺はスキルをチェック。
すると本当に『全種類ポーション製造』があった。



【全種類ポーション製造】
このスキルを使用する場合『錬金術師のポーションレシピ』、『ポーション瓶』、『ハーブ』、『すり鉢』が必要です。
すべてのポーションを製造できます。
魔力は消費しません。

一括製造も可能です。
このスキルは世界でひとりしか使用できないユニークスキルとなります。



な、なんだこりゃー!!

三毛猫からとんでもないスキルを貰ってしまった。
もしかして……まだワンチャンあるのか!

諦めていた宮廷錬金術師を目指してもう一度、がんばってみようかな。
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