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第16話 仲間?
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第16話 仲間?
フォンツベルン氏の騒動があってから2週間。
私たちは警察の人がミリッツとその仲間たちを検挙し、牢獄に入れられるまで、なるべく宿屋からは出ずに彼らと接触しないように、とのお達しがあったので、私とマレーは同じ宿屋の同じ部屋に泊まってゆっくりと疲れを取った。
警察の方から先の事件に関わったメンバー全員の検挙に成功したので、もう自由に外に出てもらって大丈夫ですよ、とわざわざ私たちが泊まっている宿屋まで来て説明してくれた。
「ん~!ようやく自由の身ね!次に色の解放をする都市ってどこだっけ?」
私はベッドに背中から倒れ込んでドッと疲れが溢れてくる感覚に欠伸をした。そんな私を横目に見てからマレーは地図を広げて現在地とまだ開放されていない都市の場所をトントンと指で突いた。
「まだ解放されてないのはクラレット、ヘリコニア、ゴデチア、セラサイト。今はフロックスの街にいるけど…、アイリスが必要な色素の小瓶の特定をしてあるのって、クラレットだっけ?」
「うん。そう。クラレットで必要な色素の小瓶は少しずつ集まって来てるから。」
「火山の麓に沿って行けば最短ルートでクラレットまで行けるはず…。早速明日からクラレットに向かおうか!」
「はーい!了解です!」
私はベッドに横になったまま、敬礼をした。私の態度にマレーが「もう…しっかりしてよね。」と呆れていたが、数秒の沈黙の後、2人してクスクスと笑い始めたので、こうして笑える日がやって来たことに私は幸福感を感じていた。
――――――
次の日から私とマレーは次なる都市の解放のためにフロックスの宿から一旦火山の麓まで行き、そこから火山の麓の外周をぐるりと沿うように移動して、カリステモンを経由して、私たちはクラレットに辿り着いた。
以前サーシャさんから、チラッと聞いたような気がするが、クラレットは音楽文化が盛んな街であり、街の至る所で歌う人、楽器を演奏する人、音楽に携わる人たちが楽しいことを共有してほしいという願いを込めて路上ライブをしているらしい。
そんな話を聞いてから私もその路上ライブを見てみたくてウズウズしていた。だが、現実では、クラレットの街はアンノーンの襲撃によって街の人の色が失われ、時が進むことがないまま、アンノーンから逃げ惑う人々の恐怖が顔に刻まれているそんな悲惨な街であった。それでも私は色素6カ国の都市としてこの街を復活させて、路上ライブを見てみたいと思った。
クラレットの街の中心部にある魔力の泉の井戸の中を見てみると下の方でこんこんと虹色に輝く魔力が湧き出ているのが見えた。
「良かった。ここの魔力の泉は枯れてないわ。」
「じゃあ、あの黒づくめの男が火山の火口に現れたのは…。」
「自然界で膨大な魔力を持っているとされている…、活火山。その魔力が欲しかったのかも。」
「それじゃあ、火山の自然の魔力を根こそぎ奪って何をするんだろう…。」
「うーん、謎は深まるばかりね。あっ、話し込んでいる場合じゃ無いわ。そろそろカリステモンからこっちに派遣されている色彩鑑定士と着彩士がやってくる時間だと思うんだけど…。あ、いたいた!こっちですー!」
マレーが時が止まっている街のベンチに座ってキョロキョロと辺りを見渡していると、街の入り口に二人組の男性が現れたので、彼らが色彩鑑定士と着彩士なのだろうと思って彼らの仕事ぶりを間近で再び見ることが出来た。
今日頼んだ色彩鑑定士も着彩士もハヅクさんやフルスナさんと同僚らしくてこの場にいない人たちの話で盛り上がってしまった。2人はインディゴの本部に戻って報告書の作成と別の仕事があるので…とのことでお別れをした。そしてそんなアイリスたちの後ろには至るところから音楽が溢れてくる、色鮮やかなクラレットが復活していたのだった。
――――――
私とマレーが街の解放をした頃は夕方だったので、今日はクラレットの宿屋でダブルベッドルームに宿泊することにして、チェックインを済ませると、2人で街に繰り出した。
そこらかしこで音楽が鳴っていてとても賑やかな街だとアイリスは思った。楽しみにしていた路上ライブも楽しめることが出来て、夕飯のために入った料理屋でアイリスは料理が届くまでの間、ホクホクとした満足感に浸っていた。
「ふふ、楽しかったみたいね。」
「うん!そりゃあ、もう!こんなに賑やかな街は初めてだしね!」
「それなら良かったわ。次の色の都市の解放のためにまたアイリスを連れて色素の小瓶の特定を急がないと。カーマインの連中から特定が出来たなら情報開示を早くしろ!って催促されちゃうからなぁ…。」
「私も特定のための魔法について情報開示はしてあるんだけどなぁ…。」
「「うーん」」
私とマレーが腕を組んで情報の開示について悩んでいると私たちのテーブルの前で立ち止まる人間の気配がしたので顔を上げるとそこにはウェイトレスさん…ではなく、ピンクゴールドの髪を髪の毛全体にウェーブがかかり、タレ目なエメラルドグリーンの瞳は優しそうな印象を受ける女性が立っていた。
「あ、あの!先程の話聞こえてしまったのですが…!次なる街の色素の小瓶を特定出来るってことは貴方達がミリッツを牢獄へ落としたアイリスさんとマレーさん、ですか!?」
「なんだか話が少し物騒になってる気がするけど…。まぁ、間違ってないわね。」
「あの、私たちに何かご用ですか?」
「わ、私を…仲間に入れてくだしゃい!!」
「(噛んだ…)」
「(噛んだわね。)」
大声で噛んだことに気を取られてしまったが、アイリスは彼女の言った言葉を数秒後にようやく理解した。
「私たちの仲間に…?」
「あの、話が長くなるのですが、相席してもよろしいですか?あっ、先日の騒ぎのミリッツさんとは違いますから!あ、安心してください!」
「まぁ、話は聞きましょう。何か訳ありな感じがするし。」
私がそういうとマレーは少しだけ肩をすくめてOKのサインを出したので、私は自分の隣の椅子をトントンと叩いて彼女に座るよう、促した。私に促されるままに、隣に座ってくれた彼女に私たちはまず自己紹介をした。
「そちらは私たちのことを知っているかもしれないけど、私がアイリス・シュガーツと言います。」
「私はマレー・クラウドっていうの。あなたは?」
「え、えっと、私はアメリア。アメリア・シャーレンと言います。よ、よろしくお願いしましゅ!」
「(また噛んだ…)」
「(噛んだわね。)」
アメリアが緊張からか、何度も噛んでしまうのを苦笑いで受け流すと、私はアメリアにどうして私たちに声をかけてきたのか、尋ねた。
「どうして私たちの仲間になりたいって?」
「あの…私、つい最近までミリッツさんの下働きとしてこき使われてて…。お二人がミリッツさんを牢獄に入れてくれたおかげでやっと解放されて…。私じゃなしえないことをお二人はしてて、憧れてるんです!お二人と一緒に旅をすれば、私も強くなれるかなって…!」
「あの偽物の下で働いてたのね…。それは苦労したでしょうに…。あなたのような子をあんな奴から解放できてよかったわ。それで、仲間のことだけど…マレー、どうする?」
「うーん、私たちの命を預けるような仲間だから、信用できるのか身辺調査をしたいの。それでもいいかしら?」
「い、いきなり話しかけて仲間にしてくださいって言っても信用できませんよね…!わ、分かりました。身辺調査でもなんでもしてください!」
そう言って意気込んだアメリアに私とマレーは顔を見合わせて、苦笑いをした。そして直ぐにサーシャさんにアメリア・シャーレンという人物についての情報を調べてくれるようにお願いした。それから、アメリアには自分の魔法のことについて紙に書き記して、まとめてもらい、私とマレーはそれとサーシャさんが用意してくれた身辺調査の結果を見ながら、アメリアを仲間にするかどうかの話し合いをした。
「サーシャさんの身辺調査によれば、怪しいところはないけど…。何も無さすぎて、逆に怪しんでいるみたいね。」
「確かに…。でも、サーシャさんの調査でもミリッツさんのところで下働きさせられてたって話は本当みたいだし…。試用期間として一緒にアンノーンを倒しに行ってみる?」
「まぁ、一緒に戦えば彼女が信頼できる人物かどうか見抜けるかもしれないしね!」
「じゃあ、アメリアを私たちの仲間にするってことで!」
こうして、アメリアを試用期間として一緒に戦ってみることから始まった。まず1日目からアンノーンと戦わせるのは酷かと思われたので、アイリスたちは街と街の間を結ぶ、街道沿いの草原でお互いの魔法の説明をすることになった。
「アメリアはもう私たちの魔法については知っているの?」
「いえ、魔法までは…。」
「そこまで情報が出回ってなくてよかったわ。サーシャさんのおかげかもしれないわね。」
そんな話をしながら、私はまず2個の飴玉をポンッと生成してみせるとアメリアは目を輝かせた。
「アイリスさんの魔法の飴を作るものなんですか!?」
「ええ。私の魔法属性はオレンジとインディゴ。身体強化と魔力強化なんだけど、その効果を付与できる飴玉を作る魔法なの。それで、これだけはあんまり外部に漏らしたくない情報なんだけど…。」
「??」
アメリアがコテンと首を傾げているのをみてから、私は周りに人がいないことを確認するとアメリアの耳にコソコソと私の魔法の最大の特徴について話した。それはアンノーンによって色が失われた色素6カ国ではその場にいるだけで魔力が吸われてしまって、魔法が上手く発動できない。だが、私の作った魔法の飴玉を舐めることで、その吸収を抑えることができ、色素6カ国でも行動が取れやすくなる。アンノーンと戦うのも楽になるというわけだ。その話をアメリアにすると彼女は目をキラキラと輝かせて、“すごい!“と絶賛してくれた。
そしてその日はお互いの魔法を実際に使って見せて、“こういう感じ“と実演付きで説明を行った。私とマレーはクラレットの宿屋にダブルベッドルームで泊まっているので、アメリアとは夕方になると解散することになった。
翌日。私たちはカリステモンとクラレットの境にある峡谷でアンノーンが出没して、商隊を襲っているという話をアメリアから聞いたので、私たちはその商隊を助けるべく、クラレットの街から峡谷へと向かった。
カラカラに乾いた大地の峡谷に入ると、峡谷の奥方から逃げ惑う人たちが数人やってきたので、アイリスたちは彼らに話を聞いた。
「俺たちはこの峡谷を通ってカリステモンとクラレットの貿易路にしようと思ってやってきたんだが…。この先でアンノーンと盗賊が手を組んでいるように、一斉に攻撃してきて…。俺たちは積荷よりも自分たちの命を優先してここまで逃げてきたんだ…。」
「アンノーンと盗賊が手を組んでいる…?それは本当ですか?」
「あ、ああ。まぁでも、アンノーンの言葉は人間に理解できないし、多分人間の盗賊の方がアンノーンの行動に付いていっている…って感じだと思うけど…。」
「そうですか…。分かりました。私たちがこの先にいるアンノーンとついでに盗賊も捕まえてきますね!」
「おお、ありがたい!頼んだよ、嬢ちゃんたち!」
私たちは商隊の人に頼まれて、峡谷の先にいるというアンノーンと盗賊たちを討伐するために、峡谷を突き進んだ。すると、逃げてきた商隊の人と別れてから10分ほど進んだところで、峡谷の崖の上から大きな岩がゴロゴロと落ちてきた。
「アイリス、アメリア、下がって!」
私とアメリアの前にマレーが出ると、灼熱の拳を作り、転がってきた大きな岩を粉砕した。いくつも落ちてくる落石をマレーは最も簡単に壊して見せた。
「ふう…。二人とも怪我はない?」
「うん。大丈夫。アメリアも大丈夫?」
「は、はい!マレーさんの魔法ってかっこいいですね!」
「えへへ、そうかな…。」
マレーは自分の魔法褒められることがあまり無いのか、照れたように頭を掻きながら、笑みを浮かべていた。
そして落石が起きてからも私たちの道を邪魔するかのように盗賊とアンノーンが何十体と出てきて、私たちはそんな連中らに取り囲まれることになったしまったのだった。
フォンツベルン氏の騒動があってから2週間。
私たちは警察の人がミリッツとその仲間たちを検挙し、牢獄に入れられるまで、なるべく宿屋からは出ずに彼らと接触しないように、とのお達しがあったので、私とマレーは同じ宿屋の同じ部屋に泊まってゆっくりと疲れを取った。
警察の方から先の事件に関わったメンバー全員の検挙に成功したので、もう自由に外に出てもらって大丈夫ですよ、とわざわざ私たちが泊まっている宿屋まで来て説明してくれた。
「ん~!ようやく自由の身ね!次に色の解放をする都市ってどこだっけ?」
私はベッドに背中から倒れ込んでドッと疲れが溢れてくる感覚に欠伸をした。そんな私を横目に見てからマレーは地図を広げて現在地とまだ開放されていない都市の場所をトントンと指で突いた。
「まだ解放されてないのはクラレット、ヘリコニア、ゴデチア、セラサイト。今はフロックスの街にいるけど…、アイリスが必要な色素の小瓶の特定をしてあるのって、クラレットだっけ?」
「うん。そう。クラレットで必要な色素の小瓶は少しずつ集まって来てるから。」
「火山の麓に沿って行けば最短ルートでクラレットまで行けるはず…。早速明日からクラレットに向かおうか!」
「はーい!了解です!」
私はベッドに横になったまま、敬礼をした。私の態度にマレーが「もう…しっかりしてよね。」と呆れていたが、数秒の沈黙の後、2人してクスクスと笑い始めたので、こうして笑える日がやって来たことに私は幸福感を感じていた。
――――――
次の日から私とマレーは次なる都市の解放のためにフロックスの宿から一旦火山の麓まで行き、そこから火山の麓の外周をぐるりと沿うように移動して、カリステモンを経由して、私たちはクラレットに辿り着いた。
以前サーシャさんから、チラッと聞いたような気がするが、クラレットは音楽文化が盛んな街であり、街の至る所で歌う人、楽器を演奏する人、音楽に携わる人たちが楽しいことを共有してほしいという願いを込めて路上ライブをしているらしい。
そんな話を聞いてから私もその路上ライブを見てみたくてウズウズしていた。だが、現実では、クラレットの街はアンノーンの襲撃によって街の人の色が失われ、時が進むことがないまま、アンノーンから逃げ惑う人々の恐怖が顔に刻まれているそんな悲惨な街であった。それでも私は色素6カ国の都市としてこの街を復活させて、路上ライブを見てみたいと思った。
クラレットの街の中心部にある魔力の泉の井戸の中を見てみると下の方でこんこんと虹色に輝く魔力が湧き出ているのが見えた。
「良かった。ここの魔力の泉は枯れてないわ。」
「じゃあ、あの黒づくめの男が火山の火口に現れたのは…。」
「自然界で膨大な魔力を持っているとされている…、活火山。その魔力が欲しかったのかも。」
「それじゃあ、火山の自然の魔力を根こそぎ奪って何をするんだろう…。」
「うーん、謎は深まるばかりね。あっ、話し込んでいる場合じゃ無いわ。そろそろカリステモンからこっちに派遣されている色彩鑑定士と着彩士がやってくる時間だと思うんだけど…。あ、いたいた!こっちですー!」
マレーが時が止まっている街のベンチに座ってキョロキョロと辺りを見渡していると、街の入り口に二人組の男性が現れたので、彼らが色彩鑑定士と着彩士なのだろうと思って彼らの仕事ぶりを間近で再び見ることが出来た。
今日頼んだ色彩鑑定士も着彩士もハヅクさんやフルスナさんと同僚らしくてこの場にいない人たちの話で盛り上がってしまった。2人はインディゴの本部に戻って報告書の作成と別の仕事があるので…とのことでお別れをした。そしてそんなアイリスたちの後ろには至るところから音楽が溢れてくる、色鮮やかなクラレットが復活していたのだった。
――――――
私とマレーが街の解放をした頃は夕方だったので、今日はクラレットの宿屋でダブルベッドルームに宿泊することにして、チェックインを済ませると、2人で街に繰り出した。
そこらかしこで音楽が鳴っていてとても賑やかな街だとアイリスは思った。楽しみにしていた路上ライブも楽しめることが出来て、夕飯のために入った料理屋でアイリスは料理が届くまでの間、ホクホクとした満足感に浸っていた。
「ふふ、楽しかったみたいね。」
「うん!そりゃあ、もう!こんなに賑やかな街は初めてだしね!」
「それなら良かったわ。次の色の都市の解放のためにまたアイリスを連れて色素の小瓶の特定を急がないと。カーマインの連中から特定が出来たなら情報開示を早くしろ!って催促されちゃうからなぁ…。」
「私も特定のための魔法について情報開示はしてあるんだけどなぁ…。」
「「うーん」」
私とマレーが腕を組んで情報の開示について悩んでいると私たちのテーブルの前で立ち止まる人間の気配がしたので顔を上げるとそこにはウェイトレスさん…ではなく、ピンクゴールドの髪を髪の毛全体にウェーブがかかり、タレ目なエメラルドグリーンの瞳は優しそうな印象を受ける女性が立っていた。
「あ、あの!先程の話聞こえてしまったのですが…!次なる街の色素の小瓶を特定出来るってことは貴方達がミリッツを牢獄へ落としたアイリスさんとマレーさん、ですか!?」
「なんだか話が少し物騒になってる気がするけど…。まぁ、間違ってないわね。」
「あの、私たちに何かご用ですか?」
「わ、私を…仲間に入れてくだしゃい!!」
「(噛んだ…)」
「(噛んだわね。)」
大声で噛んだことに気を取られてしまったが、アイリスは彼女の言った言葉を数秒後にようやく理解した。
「私たちの仲間に…?」
「あの、話が長くなるのですが、相席してもよろしいですか?あっ、先日の騒ぎのミリッツさんとは違いますから!あ、安心してください!」
「まぁ、話は聞きましょう。何か訳ありな感じがするし。」
私がそういうとマレーは少しだけ肩をすくめてOKのサインを出したので、私は自分の隣の椅子をトントンと叩いて彼女に座るよう、促した。私に促されるままに、隣に座ってくれた彼女に私たちはまず自己紹介をした。
「そちらは私たちのことを知っているかもしれないけど、私がアイリス・シュガーツと言います。」
「私はマレー・クラウドっていうの。あなたは?」
「え、えっと、私はアメリア。アメリア・シャーレンと言います。よ、よろしくお願いしましゅ!」
「(また噛んだ…)」
「(噛んだわね。)」
アメリアが緊張からか、何度も噛んでしまうのを苦笑いで受け流すと、私はアメリアにどうして私たちに声をかけてきたのか、尋ねた。
「どうして私たちの仲間になりたいって?」
「あの…私、つい最近までミリッツさんの下働きとしてこき使われてて…。お二人がミリッツさんを牢獄に入れてくれたおかげでやっと解放されて…。私じゃなしえないことをお二人はしてて、憧れてるんです!お二人と一緒に旅をすれば、私も強くなれるかなって…!」
「あの偽物の下で働いてたのね…。それは苦労したでしょうに…。あなたのような子をあんな奴から解放できてよかったわ。それで、仲間のことだけど…マレー、どうする?」
「うーん、私たちの命を預けるような仲間だから、信用できるのか身辺調査をしたいの。それでもいいかしら?」
「い、いきなり話しかけて仲間にしてくださいって言っても信用できませんよね…!わ、分かりました。身辺調査でもなんでもしてください!」
そう言って意気込んだアメリアに私とマレーは顔を見合わせて、苦笑いをした。そして直ぐにサーシャさんにアメリア・シャーレンという人物についての情報を調べてくれるようにお願いした。それから、アメリアには自分の魔法のことについて紙に書き記して、まとめてもらい、私とマレーはそれとサーシャさんが用意してくれた身辺調査の結果を見ながら、アメリアを仲間にするかどうかの話し合いをした。
「サーシャさんの身辺調査によれば、怪しいところはないけど…。何も無さすぎて、逆に怪しんでいるみたいね。」
「確かに…。でも、サーシャさんの調査でもミリッツさんのところで下働きさせられてたって話は本当みたいだし…。試用期間として一緒にアンノーンを倒しに行ってみる?」
「まぁ、一緒に戦えば彼女が信頼できる人物かどうか見抜けるかもしれないしね!」
「じゃあ、アメリアを私たちの仲間にするってことで!」
こうして、アメリアを試用期間として一緒に戦ってみることから始まった。まず1日目からアンノーンと戦わせるのは酷かと思われたので、アイリスたちは街と街の間を結ぶ、街道沿いの草原でお互いの魔法の説明をすることになった。
「アメリアはもう私たちの魔法については知っているの?」
「いえ、魔法までは…。」
「そこまで情報が出回ってなくてよかったわ。サーシャさんのおかげかもしれないわね。」
そんな話をしながら、私はまず2個の飴玉をポンッと生成してみせるとアメリアは目を輝かせた。
「アイリスさんの魔法の飴を作るものなんですか!?」
「ええ。私の魔法属性はオレンジとインディゴ。身体強化と魔力強化なんだけど、その効果を付与できる飴玉を作る魔法なの。それで、これだけはあんまり外部に漏らしたくない情報なんだけど…。」
「??」
アメリアがコテンと首を傾げているのをみてから、私は周りに人がいないことを確認するとアメリアの耳にコソコソと私の魔法の最大の特徴について話した。それはアンノーンによって色が失われた色素6カ国ではその場にいるだけで魔力が吸われてしまって、魔法が上手く発動できない。だが、私の作った魔法の飴玉を舐めることで、その吸収を抑えることができ、色素6カ国でも行動が取れやすくなる。アンノーンと戦うのも楽になるというわけだ。その話をアメリアにすると彼女は目をキラキラと輝かせて、“すごい!“と絶賛してくれた。
そしてその日はお互いの魔法を実際に使って見せて、“こういう感じ“と実演付きで説明を行った。私とマレーはクラレットの宿屋にダブルベッドルームで泊まっているので、アメリアとは夕方になると解散することになった。
翌日。私たちはカリステモンとクラレットの境にある峡谷でアンノーンが出没して、商隊を襲っているという話をアメリアから聞いたので、私たちはその商隊を助けるべく、クラレットの街から峡谷へと向かった。
カラカラに乾いた大地の峡谷に入ると、峡谷の奥方から逃げ惑う人たちが数人やってきたので、アイリスたちは彼らに話を聞いた。
「俺たちはこの峡谷を通ってカリステモンとクラレットの貿易路にしようと思ってやってきたんだが…。この先でアンノーンと盗賊が手を組んでいるように、一斉に攻撃してきて…。俺たちは積荷よりも自分たちの命を優先してここまで逃げてきたんだ…。」
「アンノーンと盗賊が手を組んでいる…?それは本当ですか?」
「あ、ああ。まぁでも、アンノーンの言葉は人間に理解できないし、多分人間の盗賊の方がアンノーンの行動に付いていっている…って感じだと思うけど…。」
「そうですか…。分かりました。私たちがこの先にいるアンノーンとついでに盗賊も捕まえてきますね!」
「おお、ありがたい!頼んだよ、嬢ちゃんたち!」
私たちは商隊の人に頼まれて、峡谷の先にいるというアンノーンと盗賊たちを討伐するために、峡谷を突き進んだ。すると、逃げてきた商隊の人と別れてから10分ほど進んだところで、峡谷の崖の上から大きな岩がゴロゴロと落ちてきた。
「アイリス、アメリア、下がって!」
私とアメリアの前にマレーが出ると、灼熱の拳を作り、転がってきた大きな岩を粉砕した。いくつも落ちてくる落石をマレーは最も簡単に壊して見せた。
「ふう…。二人とも怪我はない?」
「うん。大丈夫。アメリアも大丈夫?」
「は、はい!マレーさんの魔法ってかっこいいですね!」
「えへへ、そうかな…。」
マレーは自分の魔法褒められることがあまり無いのか、照れたように頭を掻きながら、笑みを浮かべていた。
そして落石が起きてからも私たちの道を邪魔するかのように盗賊とアンノーンが何十体と出てきて、私たちはそんな連中らに取り囲まれることになったしまったのだった。
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