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第6話 夜風に吹かれて

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 真の味方などいなかった。

 周りは皆同情、慰め、励ましばかり。みんなどうせ同じ思いしてないから分からないんだろ、分からないなら声なんかかけてくんな。

 周りなんて大嫌いだ。人間なんか信用できない。「頑張れ」という言葉が一番嫌いだ。

ーーー

 歌詞考えよう、そう思って俺は机に向かった。

「蒼い…雲、空、光、強く…気持ち、足、透明…心、僕…」

 まずはフレーズを作り出す。2語、3語でいい。入れたい言葉を書きだす。今回は爽やかな感じの曲が書きたい。疾く、走る、明日…

「……」

「…ふぁぁああ」

 どうやら眠ってしまっていたようだ。組んでいた腕、机に乗せていた右頬のあたりがじんわりと痛い。

 書き込んでいたノートを見る。書いていたメモの上から、解読不能な文字が書かれている。その中の一部に顔らしきものが見えて、くすりと笑ってしまう。これがシミュラクラ現象というものなのか。

「ぅぅーーーーーーん、さて、夕飯でも食べますかね」

 俺は今一人暮らしをしている。親はおらず、祖母からの仕送りを受けて生活をしている。

「今日は、疲れたし適当にレトルトでいいか」

 炊飯器のご飯をしゃもじ一掬い分茶碗によそる。適当な量の水をやかんに入れ、水を沸かす。水が沸いたら、インスタント味噌汁の入っているお椀にお湯を注ぐ。あとは適当なおかずを冷凍食品から探す。うーん、今日はコンビニのサラダチキンとサラダにしよう。

 買いに行かないと、と思い自転車を出す。ここから最寄りまで大体3分だ。よし、じゃあ行くか。

 夜風が肩や首の横を通り過ぎる。ちょっと寒いな、もっと着て来ればよかった。でも、自然と考えがまとまってくる。

 そうこうしている間にコンビニに着いてしまった。

「あれ…透也?」

 声のした方向を向くと、そこには萌依が立っていた。

☆☆☆

「ふーん、透也は夕ご飯を買いに来たんだね」

「そそ、萌依はどうしたんだよ? 家出か?」

「違うって、ちょっとお菓子を買いに来たの」

「こんな時間にそんなもの食べたら太るぞぉ~」

 ガツン。萌依の右アッパーが見事俺の顎に決まり、俺は30センチくらい吹っ飛んだ。地雷踏んだかあ…いてえ。

「まあ、じゃあ俺はそろそろ帰るわ」

 時計はもう10時を指していた。そろそろ帰らないと明日に支障が出てしまう。

「気を付けてね~」

 何に気を付けることがあるのだろうか。まあいいや、ありがたくいただいておこう。

☆☆☆

 と思ったら電子レンジで温めたサラダチキンがちょっと爆発しました。萌依、末恐ろしい女なり。絶対違うけど。
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