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2章 三人でドライブ
3話 白雪の策略
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素早く座席とミラーを合わせ、発進する。昨日のドライブでクラッチタイミングはバッチリだ。特にカクカクすることもなく道路に出る。
下道ではタコメーター2000回転以下をキープしながら走る。このエンジンは3500回転以上から本気を出してくる。上り坂ならいいが平坦な道だとドコにすっ飛んでいくかわからない。昨日の運転で発見したポイントだ。
しかも今回は朱音も同乗している。いきなり乱暴な運転で失望されたくはない。できるだけスマートな運転を心がける。信号での滑らかなストップ&ゴー、カーブでのGを感じさせない減速とハンドリング、ペーパーもやればできるというところを見せてやらないとな!若干調子に乗る拓斗であった。
「どうだい朱音、拓斗の運転は?」
図らずとも助手席の白雪がもう一人の教官に聞いてくれていた。
「すごく快適だよ~。シロちゃんより上手かも!」
「なん…だと…!?このオレが拓斗ごときに負けるだとォォーッ!?」
「まじか朱音ちゃん!なんだシロも大したことないじゃないか。」
やったぜ。わざとらしくオーバーアクションする白雪をしり目に、白雪より上手と言われてかなり上機嫌の拓斗であった。
しばらく走るといよいよ山道の入り口に差し掛かる。『ようこそ八方ヶ原へ』の看板を左手にずんずん木々で薄暗くなった坂道を登ってゆく。田舎過ぎるのか拓斗達以外全く車は走っていない。ここもいわゆる2車線のワインディングロードという感じで曲がりくねった道である。昨日のように元気よくこんな道を走ってしまうと朱音が車酔いしてしまうかもしれない。気配りもデキる拓斗はギヤを落としゆっくり走ることにした。決して本気走行して昨日のような膝ガクガクを朱音に見られたくないわけではない。…たぶん。
「朱音に気を使ってゆっくり走ってるのかい?オレの時とはえらい違いだな。」
さっそく白雪がイヤミを言ってくる。
「昨日はシロも楽しんでただろ?何の問題もなかったじゃないか~。」
こんなふざけたやり取りをしていると急に背後から冷たい空気が流れてきた気がした。
「…ふぅん、拓斗さんは私には面白いこと隠して、シロちゃんとコッソリ楽しんでるんですね。」
「うげっ!?」
ルームミラーを見た拓斗は冷気の正体に思わず息を呑んだ。朱音である。眼鏡の反射で見えないがその瞳は間違いなく拓斗を貫いているだろう。ただならぬプレッシャーに背筋が凍り付く拓斗である。
朱音は基本内気でオドオドしているような娘だが、この状態になった朱音は要注意である。周りにある事ない事言いふらしてしまうジェラシックモードなのだ。
かつて拓斗も朱音に内緒で白雪と二人で遊びに出かけたのが朱音にバレたとき、二人は付き合ってるんだとか、そのまま二人はホテル街の方に消えただの、あらぬ話をよりによって拓斗の母親に告げ口をされてしまい、誤解を解くのに一週間かかった苦い思い出がある。流石に拓斗が大人になった今ではそんなことで告げ口はされなくなったが、久しぶりの朱音のジェラシックモードに拓斗のお兄さん的威厳は見事に打ち砕かれてしまったのである。
「い、いやぁ、てっきり朱音ちゃんはドライブに興味無いとばかり思っていたけど…こうゆう道走るの好きなのかな?」
恐る恐る拓斗が質問する。隣ではしてやったりという顔で白雪がニヤニヤしている。あとで覚えとけよ…
「私もシロちゃんと山道ドライブしますもん!いつもジェットコースターみたいで面白いですよ!」
この子ジェットコースターとか言いましたよ白雪さん!?あんた普段山道でどんな運転していらっしゃるんですか!?
「オレより運転上手な拓斗さんなら朱音を楽しませてくれるんじゃないですかねぇ~?」
白雪がイヤミったらしく煽ってくる。さっきのオーバーアクションも含めて全て白雪の策略か!?運転テクニックで負けたからって朱音を巻き込まないで頂きたい。そもそも優しい朱音のお世辞だってことは白雪も知っていたはずである。
「だから拓斗さんの隣に座ってじっくり運転を観察したいです!あっ、でも無理にシロちゃんみたいな運転しなくてもいいですよ。本当に危ないですから。」
朱音のプレッシャーは無くなったが今度は朱音を助手席に乗せて運転しろとのご依頼だ。これは別の意味でのプレッシャーが拓斗にのしかかる。今までは白雪が道路状況に合わせて適時アドバイスをくれたが今度の教官は甘えることが実質上不可能だ。拓斗の素の能力が試される。
朱音が目をキラキラさせながら訴えてくる。これは逃げられないようだ。
「朱音に言われたんなら仕方ない。拓斗、座席代わるからそこの横に停めてくれ。」
やっぱり白雪も本気で代わるらしい。ちょうどY字路で広くなった場所があったのでそこの脇に車を停める。いそいそと二人が乗り代え、朱音が助手席に座った。
「それじゃあよろしくお願いしますね拓斗さん。」
妙に距離が近いせいか妙に緊張してしまう。ぱっと見普通にデートである。後部座席でニヤニヤしていて気持ち悪い白雪を除けばだが。
下道ではタコメーター2000回転以下をキープしながら走る。このエンジンは3500回転以上から本気を出してくる。上り坂ならいいが平坦な道だとドコにすっ飛んでいくかわからない。昨日の運転で発見したポイントだ。
しかも今回は朱音も同乗している。いきなり乱暴な運転で失望されたくはない。できるだけスマートな運転を心がける。信号での滑らかなストップ&ゴー、カーブでのGを感じさせない減速とハンドリング、ペーパーもやればできるというところを見せてやらないとな!若干調子に乗る拓斗であった。
「どうだい朱音、拓斗の運転は?」
図らずとも助手席の白雪がもう一人の教官に聞いてくれていた。
「すごく快適だよ~。シロちゃんより上手かも!」
「なん…だと…!?このオレが拓斗ごときに負けるだとォォーッ!?」
「まじか朱音ちゃん!なんだシロも大したことないじゃないか。」
やったぜ。わざとらしくオーバーアクションする白雪をしり目に、白雪より上手と言われてかなり上機嫌の拓斗であった。
しばらく走るといよいよ山道の入り口に差し掛かる。『ようこそ八方ヶ原へ』の看板を左手にずんずん木々で薄暗くなった坂道を登ってゆく。田舎過ぎるのか拓斗達以外全く車は走っていない。ここもいわゆる2車線のワインディングロードという感じで曲がりくねった道である。昨日のように元気よくこんな道を走ってしまうと朱音が車酔いしてしまうかもしれない。気配りもデキる拓斗はギヤを落としゆっくり走ることにした。決して本気走行して昨日のような膝ガクガクを朱音に見られたくないわけではない。…たぶん。
「朱音に気を使ってゆっくり走ってるのかい?オレの時とはえらい違いだな。」
さっそく白雪がイヤミを言ってくる。
「昨日はシロも楽しんでただろ?何の問題もなかったじゃないか~。」
こんなふざけたやり取りをしていると急に背後から冷たい空気が流れてきた気がした。
「…ふぅん、拓斗さんは私には面白いこと隠して、シロちゃんとコッソリ楽しんでるんですね。」
「うげっ!?」
ルームミラーを見た拓斗は冷気の正体に思わず息を呑んだ。朱音である。眼鏡の反射で見えないがその瞳は間違いなく拓斗を貫いているだろう。ただならぬプレッシャーに背筋が凍り付く拓斗である。
朱音は基本内気でオドオドしているような娘だが、この状態になった朱音は要注意である。周りにある事ない事言いふらしてしまうジェラシックモードなのだ。
かつて拓斗も朱音に内緒で白雪と二人で遊びに出かけたのが朱音にバレたとき、二人は付き合ってるんだとか、そのまま二人はホテル街の方に消えただの、あらぬ話をよりによって拓斗の母親に告げ口をされてしまい、誤解を解くのに一週間かかった苦い思い出がある。流石に拓斗が大人になった今ではそんなことで告げ口はされなくなったが、久しぶりの朱音のジェラシックモードに拓斗のお兄さん的威厳は見事に打ち砕かれてしまったのである。
「い、いやぁ、てっきり朱音ちゃんはドライブに興味無いとばかり思っていたけど…こうゆう道走るの好きなのかな?」
恐る恐る拓斗が質問する。隣ではしてやったりという顔で白雪がニヤニヤしている。あとで覚えとけよ…
「私もシロちゃんと山道ドライブしますもん!いつもジェットコースターみたいで面白いですよ!」
この子ジェットコースターとか言いましたよ白雪さん!?あんた普段山道でどんな運転していらっしゃるんですか!?
「オレより運転上手な拓斗さんなら朱音を楽しませてくれるんじゃないですかねぇ~?」
白雪がイヤミったらしく煽ってくる。さっきのオーバーアクションも含めて全て白雪の策略か!?運転テクニックで負けたからって朱音を巻き込まないで頂きたい。そもそも優しい朱音のお世辞だってことは白雪も知っていたはずである。
「だから拓斗さんの隣に座ってじっくり運転を観察したいです!あっ、でも無理にシロちゃんみたいな運転しなくてもいいですよ。本当に危ないですから。」
朱音のプレッシャーは無くなったが今度は朱音を助手席に乗せて運転しろとのご依頼だ。これは別の意味でのプレッシャーが拓斗にのしかかる。今までは白雪が道路状況に合わせて適時アドバイスをくれたが今度の教官は甘えることが実質上不可能だ。拓斗の素の能力が試される。
朱音が目をキラキラさせながら訴えてくる。これは逃げられないようだ。
「朱音に言われたんなら仕方ない。拓斗、座席代わるからそこの横に停めてくれ。」
やっぱり白雪も本気で代わるらしい。ちょうどY字路で広くなった場所があったのでそこの脇に車を停める。いそいそと二人が乗り代え、朱音が助手席に座った。
「それじゃあよろしくお願いしますね拓斗さん。」
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