とらわれ少女は皇子様のお気に入り

のじか

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「今日は……もう少し、頑張ってもらおうかな」

 壁に手を当てたまま腰を突き出すように指示され、フェリセットは恥ずかしがる暇もなくその通りにした。

 あらわになった秘所は一眼でわかるほどに妖しく濡れそぼり、赤く色づいている。だらりと垂れた蜜がフェリセットの太ももに筋を作っていた。

「挿れないよ、まだ」

 固くそそり立ったルイの剛直が、フェリセットの入り口にあてがわれる。そのまま太股の間に差し込まれた熱が、ぴったりと密着した状態でフェリセットを愛撫し始めた。

「ああっ……」

 ずちゅずちゅと淫靡な音を立て、粘膜同士が擦れ合う。

「ひゃ……んんっ、ああっ……」

 与えられる快感の濁流の中でもがきながらも、フェリセットの内にさらなる欲求が生まれていく。

 もっと密着したい。もし、本当に、最後まで繋がったなら──どれだけ、幸福になれるだろう。

 こうして肌を重ね合わせても、最後の一線だけは守ってきた。自分はいつか忘れ去られる存在で、ひとときの遊び相手にすぎない。

 でも、そんな事を考えて──意味はあるだろうか? ただただ、もっと気持ちよくなりたい──その感情が、フェリセットを支配していた。

 挿れていいか、と耳元で囁かれ、フェリセットはためらいもなく頷いた。

「……っ、でも……っ後ろからは、いや……ギュッてして……」

 体を抱えられたままベッドに倒れ込み、貪るようなキスをする。

「んっ……ふうっ……」

 貪るような口づけを交わしながらも、フェリセットは獲物を逃がすまいと、ルイの首に手を回し、足を絡めた。

「フェリセットはかわいいね」

  甘い声で褒められて、髪の毛をくしゃくしゃとかき回されると、フェリセットは手のひらの熱でそのままどろりと蕩けてしまいそうになる。

 やや黄ばんだレースのカーテンの隙間から、晴れ渡った青空がちらりと見え隠れした。

 こんな昼間から、しかもこんなたまたま通りがかっただけの場所で、自分は今から欲望に身を任せてしまうのだ──。

 でも、もうどうなっても構わない、とフェリセットは静かに目を閉じた。


 その瞬間、けたたましい警報音が鳴り響いた。

「にゃっ!」

   フェリセットはびくりと体を起こす。二人の世界に乱入してきたのは、ルイが緊急時に部下と通信するために常に携帯している魔力通信機であった。

   ルイとフェリセットは無言のまま、チカチカと魔力の力で光る通信機を眺めた。

「……で、出なくていいの?」
「どうせ大した用事じゃない」

 ルイの手によって、通信は切断される。しかし間髪入れず次の通信が入り、ルイは片手にフェリセットをしっかりと抱え込んだまま、諦めたのか通信に応答した。

 フェリセットは声が漏れぬよう息を殺し、ルイの体の下で丸まる。

「なんだ? ああ、……うん。わかった。すぐ戻る」

  通信を切った後、 ルイはフェリセットにのしかかりながら深いため息をついた。やはり大層な用事ではあったらしい。

『本当にこの国にはろくな奴がいない』あまりに実感のこもったその言葉に、フェリセットは可笑しくなって笑ってしまった。

「笑い事じゃないね。せっかくフェリセットが乗り気だったのに、惜しい事をした。──普段の行いが悪かったのかな?」

「……そうかもね?」

 フェリセットはのろのろと起き上がった。機会を逃したのは、良かったのか、悪かったのか──。

 冷静に考えると、とんでもない状況だった──と急に恥ずかしくなり、フェリセットは裸のまま洗い場に飛び込んだ。
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