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33 フェリセット、昔の話をする
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ぺちり、ぺちり。
フェリセットはいつものように、ルイの膝の上で寝そべることを強要されている。そして今、ついでの様に尻を叩かれている。
フェリセットは締め付けの少ないゆったりとした寝間着を身につけている。絹は摩擦が少なくて、肌を傷めないそうだ。そして、毎晩のように香油でルイ手ずからのマッサージを受けているため、フェリセットは全身すべすべのつやつやなのであった。いつの間にやら、なんだかんだと触られる事に抵抗がまったくなくなりつつある今日この頃であると、フェリセットは生あくびをした。
「うんうん、いい触り心地だ」
ルイは満足げにフェリセットの尾をふわりとなでた。その手を、べし、と尾ではたきおとす。ルイは全く意に介さない様子で毛のブラシを手にとり、フェリセットの髪を梳き始める。
男のクセに、髪の毛の手入れが好きなんて女々しいやつ……と心の中で悪態をついていたのも今は昔。
ざんばらだった毛先は切りそろえられ、風呂上がりは濡れたまま寝るな、髪の毛が痛むからと言い含められ、油を塗り、熱い風で乾かした後は冷たい風で整えて……と手間暇をかけた髪の毛は見違えるほど美しくなった。
「フェリセットは可愛いなあ。大好きだよ」
「きらーい!」
とんでもなく恥ずかしい事を言われた気がして、フェリセットは叫び声と共にぴょんとルイの膝から飛び降りた。するりと、ルイの掌から薄茶の尻尾が抜け落ちていく。
「嫌いだなんて、そんな。こんなに丹精込めてお世話しているのに……」
ルイはよよよ、と泣き崩れるふりをした。そんな事ぐらいで傷つきはしないのは、とっくの昔に見抜いているんだよ、とフェリセットは本棚の上によじ登りながら考えた。
「ふん。ルイなんて、ダンタリオンの次ぐらいにきらーい」
その言葉は本心とは言いがたかった。しかし、好きであるとも言い切れない。もしも好きの方に感情の針が傾いてしまったら。その時は、誇り高きオークの騎士であるフェリセットが本当の敗北を迎える時なのだ。
「……ダンタリオン?」
意外なことに、ルイはその名前に聞き覚えがあるようだった。
「それって、リザードマンの族長のことかい?」
「ふぇ?」
どうしてルイがリザードマンの族長のことを知っているのか。と今度はフェリセットが首をかしげる番だった。
フェリセットはいつものように、ルイの膝の上で寝そべることを強要されている。そして今、ついでの様に尻を叩かれている。
フェリセットは締め付けの少ないゆったりとした寝間着を身につけている。絹は摩擦が少なくて、肌を傷めないそうだ。そして、毎晩のように香油でルイ手ずからのマッサージを受けているため、フェリセットは全身すべすべのつやつやなのであった。いつの間にやら、なんだかんだと触られる事に抵抗がまったくなくなりつつある今日この頃であると、フェリセットは生あくびをした。
「うんうん、いい触り心地だ」
ルイは満足げにフェリセットの尾をふわりとなでた。その手を、べし、と尾ではたきおとす。ルイは全く意に介さない様子で毛のブラシを手にとり、フェリセットの髪を梳き始める。
男のクセに、髪の毛の手入れが好きなんて女々しいやつ……と心の中で悪態をついていたのも今は昔。
ざんばらだった毛先は切りそろえられ、風呂上がりは濡れたまま寝るな、髪の毛が痛むからと言い含められ、油を塗り、熱い風で乾かした後は冷たい風で整えて……と手間暇をかけた髪の毛は見違えるほど美しくなった。
「フェリセットは可愛いなあ。大好きだよ」
「きらーい!」
とんでもなく恥ずかしい事を言われた気がして、フェリセットは叫び声と共にぴょんとルイの膝から飛び降りた。するりと、ルイの掌から薄茶の尻尾が抜け落ちていく。
「嫌いだなんて、そんな。こんなに丹精込めてお世話しているのに……」
ルイはよよよ、と泣き崩れるふりをした。そんな事ぐらいで傷つきはしないのは、とっくの昔に見抜いているんだよ、とフェリセットは本棚の上によじ登りながら考えた。
「ふん。ルイなんて、ダンタリオンの次ぐらいにきらーい」
その言葉は本心とは言いがたかった。しかし、好きであるとも言い切れない。もしも好きの方に感情の針が傾いてしまったら。その時は、誇り高きオークの騎士であるフェリセットが本当の敗北を迎える時なのだ。
「……ダンタリオン?」
意外なことに、ルイはその名前に聞き覚えがあるようだった。
「それって、リザードマンの族長のことかい?」
「ふぇ?」
どうしてルイがリザードマンの族長のことを知っているのか。と今度はフェリセットが首をかしげる番だった。
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