とらわれ少女は皇子様のお気に入り

３２

「──はっ！」

　  真夜中、フェリセットは覚醒した。体はすっきりと拭き清められ、いかがわしさのない普通の寝間着を着ていた。

　部屋には睡眠の妨げにならない程度の薄ぼんやりとした照明がついており、横ではルイが眠っている。何かが起きたとは思えない、静かな夜であった。

「起きたの？」

　ルイは薄暗がりの中、的確にフェリセットの尻尾を見つけ、さわさわと撫でた。

「あ、うん……」

　あられもない姿を晒したばかりだと言うのになぜだか羞恥はなく、すっきりとした気分だ。自分の中に開き直りにも似た感情がある事に、フェリセットは驚いていた。

「あの、ところで……さ、最後まで……した？」

　  正直最後の方は行為に没頭しすぎていて、あまり記憶にない。下腹部に違和感は無いのだが……とフェリセットはおそるおそる尋ねた。

「さて、どうでしょう」

　その発言に、丁度手元にあった枕を投げつける。ぼふっ、と間抜けな音を立て、枕は跳ね上がり、床に転がった。

「やっぱり悪いと思ってないよね？」

　フェリセットはルイの肩をつかみ、ぎゅっと指に力を込めた。

「そんな事はないよ。反省してます。だから最後まではしなかったし」
　  
「……」

　それで良かったのか、と自分から改めて尋ねるのはおかしいので、フェリセットは黙った。

　抱き寄せられたフェリセットは、ふとこの位置が落ち着く事に気がついた。今までは腕の中に居ると気持ちがざわざわとしていたのに──。なんだか、ここが定位置でも良いかもしれない、と思い始めたのだった。