とらわれ少女は皇子様のお気に入り

のじか

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「じゃあ、その中間で」

 ルイがパチンと指を鳴らすと、テントの中は薄暗くなった。フェリセットは思わず体を丸める。

「ふええ……や、やだ……」
「とは言ってもね。負けた方はいろんなものを奪われる。それが嫌で人は強くなろうとするんだよね」

 薄暗がりの中で、ルイの指がフェリセットの唇をふにふにと摘まんだ。

「噛んじゃダメだよ」

 フェリセットは、ぎゅっと目をつぶった。唇が重ねられる。誰ともしたことがなかったのに、と今更ながら考える。ちゅ、と淫靡な音が脳に響き、フェリセットの思考はかき乱される。

「んんっ……」
「口を開けて」
「……やだ」
「強情だなぁ。自分のお仕事、忘れた?」 

 ルイはフェリセットの亜麻色の髪の毛をくるくると指に巻き付け、遊んでいる。

「うっ……」

「そういえば、最初に殺せ、って言ってたね。どっちがいいのかな?」

 ルイはなんてことのない思いつきのように、フェリセットの細い首にきゅっ、と手をかけた。

「えっ、や、や、やだっ……」
「どっちが?」

「こ、殺さない、でぇ……」

 ルイにとっては軽い冗談でしかないが、圧倒的な力の差を見せつけられた側のフェリセットにとってはまさしく死活問題であった。

「なら、言う事を聞けるね?」

 フェリセットは半泣きでコクコクと頷いた。


「ふっ……んぅ」

 唇が再び重ねられ、自分より遥かに大きな質量がフェリセットにのしかかる。

 唇をついばまれ、こそばゆい感覚が全身に走る。舌が口腔内に侵入し、フェリセットは押し返そうとするが、手首を掴まれており、抵抗できない。ルイの舌が上顎をなぞり、触れられてもいない尻尾のあたりに妙な感覚が走った。

 ──また、この変な感じ。くすぐったい……。

「んっ、ん、んんんんっ」

 逃れようとしても、息継ぎの暇すら与えられず、フェリセットの体は酸素を求めてシーツの海の中をもがく。

「はあっ、あっ」

 ややしばらくして解放されたフェリセットはどくどくと鳴り続ける心臓の音と、荒い呼吸がうるさいとすら思うほどなのに、ルイはこの状況でも、いやに落ち着いているように見えた。

「君は本当に可愛いねぇ。遠征なんて面倒くさいと思っていたけど、真面目に働いてみるものだね」

 ルイはフェリセットの首筋に噛みつく。くすくすと笑う吐息がフェリセットの肌を撫でる。指は首筋を伝い、胸の先端をやわやわと摘まんだ。

「にゃっ……」

 体がびくりと跳ねる。触られている事実よりも、自分の「そこ」が寒くもないのに固くなっている事実の方が、フェリセットにとっては恥ずかしかった。

「猫みたいな鳴き声を出すんだね。かわいいね」

 ルイはそのまま、フェリセットの体を服の上から弄り始める。

「うう……っ」

 体がじんとしびれていく。フェリセットにはどうすることもできない。ワンピースのボタンが外され、肌着一枚のフェリセットの肢体があらわになる。

 どうしてこんな事に?

 その考えだけが、ぐるぐるとフェリセットの脳内を巡っていた。

 そんな気持ちを知ってか知らずか、ルイはフェリセットの細い脚をぷらぷらと弄び、足首の腱に齧りついた。

「……っ」

    体の震えが止まらないのは獰猛な獣に生殺与奪の権を握られているからだと、フェリセットは回らない頭で必死に考えた。

 
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