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番を追いかけて
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自らの小屋──隠れ家に逃げ帰ったビアンカはずるずると壁にもたれかかり、頭を抱えた。
「見られてしまった!」
屋外で自慰に及んでいる所を目撃されてしまった。しかもよりにもよって、男性に。あの軽蔑したような、見てはいけないものを──とんでもない痴女を見てしまったとでも言いたげな驚愕に見開かれた瞳。
「あああ、とうとう……いえ、とっくの昔に気が付かれていて噂になっているのかもしれないわ……」
こんな恥ずかしい姿を見られるくらいなら死んだ方がましだとさえ思う。だが、まだ死ぬわけにはいかない。
なんとかこの身に刻まれた呪いの効力が薄れるまでここで潜伏し、必ずあいつらに一矢報いてやるのだ。
ビアンカはぐっと握り拳を作った。
──それはそれとして。素敵な人だったな……。
ビアンカは先ほどの青年の事を思い返し、首を振った。自分のような存在は、もはや普通の恋愛をすることなど到底叶わないだろう。
「んっ……また、もう……っ」
見られていたことを思い出すだけで、身体の奥底が熱くなる。ビアンカは下半身の疼きに耐えられず、下着の中に手を滑り込ませると、敏感な部分を愛撫した。
ビアンカが一人遊びに耽っているころ、アルバートはまだ、その場に立ち尽くしていた。
俺の番だ。
アルバートははっきりとそれを認識していた。ただの女ではない。痛いほどに膨張した自身を見てそう思う。
あの女が、欲しい。
ビアンカの艶めかしいうめき声を思い出すと、体同様にアルバートの心の中の欲望がむくむくと膨れ上がってくる。
アルバートは駆け出した。目指す先は決まっている。人狼にとって、匂いを辿ることはたやすい。番となるべき女の体臭は、一度自覚した今となってはゼーラ草の生い茂る地帯でもはっきりと認識することができた。
やがて見えてきたのは木こりが仕事のために作った小屋だ。一通りの家具はあるものの、女一人で生活するには心許ないだろうと思われる場所だった。
何故こんな所に居を構えているのかとアルバートは小さくため息をつき、わずかに空いた窓から中の様子をうかがった。
中では、ビアンカが一心不乱に自慰にふけっていた。ビアンカは自分の指先が与える刺激に身をよじらせている。
まさか、俺の番が痴女だとは……。しかも痴女の上に怪人……いやいや、獣人と人間が番う場合、性欲の多い少ないですれ違いが発生すると聞く。そう考えると、多少性欲旺盛な方がいいんじゃないか……。
アルバートは自分と彼女の明るい生活について考えながらも、目の前の痴態から目を離せずにいた。
「あんっ……ああ……」
ビアンカの喘ぐ声を聞きながら、アルバートは自身の下半身に手を伸ばす。そこは、はちきれんばかりに膨張していた。
これは、違うんだ! とアルバートは自分に言い聞かせるが、そんなものでどうにかなるものではない。屋外はともかく女性の家をのぞき見している時点で今度はアルバートの方がより変態と言うことになってしまうのだが、アルバートはビアンカを凝視することをやめられずにいる。
「んっ……あっ……」
ビアンカは絶頂に達しようとしているらしく、手の動きが激しくなっていくが、なぜか躊躇いがちに動きがとまり、肩を落とした。
「あぁ……また、イけなかった……イかないとダメなのにぃ……」
──なんなんだよ、お前は!
アルバートは心の中で悪態をついた。どうやら女は淫乱なわりに感度はよろしくないらしく、達する前に自らを押しとどめてしまうクセがあるらしい。それにしたって「達さないといけない」とはどのような意味なのかと、アルバートは疑問や衝動を抑える事ができなくなり、真正面──小屋の扉から中へ押し入った。
「見られてしまった!」
屋外で自慰に及んでいる所を目撃されてしまった。しかもよりにもよって、男性に。あの軽蔑したような、見てはいけないものを──とんでもない痴女を見てしまったとでも言いたげな驚愕に見開かれた瞳。
「あああ、とうとう……いえ、とっくの昔に気が付かれていて噂になっているのかもしれないわ……」
こんな恥ずかしい姿を見られるくらいなら死んだ方がましだとさえ思う。だが、まだ死ぬわけにはいかない。
なんとかこの身に刻まれた呪いの効力が薄れるまでここで潜伏し、必ずあいつらに一矢報いてやるのだ。
ビアンカはぐっと握り拳を作った。
──それはそれとして。素敵な人だったな……。
ビアンカは先ほどの青年の事を思い返し、首を振った。自分のような存在は、もはや普通の恋愛をすることなど到底叶わないだろう。
「んっ……また、もう……っ」
見られていたことを思い出すだけで、身体の奥底が熱くなる。ビアンカは下半身の疼きに耐えられず、下着の中に手を滑り込ませると、敏感な部分を愛撫した。
ビアンカが一人遊びに耽っているころ、アルバートはまだ、その場に立ち尽くしていた。
俺の番だ。
アルバートははっきりとそれを認識していた。ただの女ではない。痛いほどに膨張した自身を見てそう思う。
あの女が、欲しい。
ビアンカの艶めかしいうめき声を思い出すと、体同様にアルバートの心の中の欲望がむくむくと膨れ上がってくる。
アルバートは駆け出した。目指す先は決まっている。人狼にとって、匂いを辿ることはたやすい。番となるべき女の体臭は、一度自覚した今となってはゼーラ草の生い茂る地帯でもはっきりと認識することができた。
やがて見えてきたのは木こりが仕事のために作った小屋だ。一通りの家具はあるものの、女一人で生活するには心許ないだろうと思われる場所だった。
何故こんな所に居を構えているのかとアルバートは小さくため息をつき、わずかに空いた窓から中の様子をうかがった。
中では、ビアンカが一心不乱に自慰にふけっていた。ビアンカは自分の指先が与える刺激に身をよじらせている。
まさか、俺の番が痴女だとは……。しかも痴女の上に怪人……いやいや、獣人と人間が番う場合、性欲の多い少ないですれ違いが発生すると聞く。そう考えると、多少性欲旺盛な方がいいんじゃないか……。
アルバートは自分と彼女の明るい生活について考えながらも、目の前の痴態から目を離せずにいた。
「あんっ……ああ……」
ビアンカの喘ぐ声を聞きながら、アルバートは自身の下半身に手を伸ばす。そこは、はちきれんばかりに膨張していた。
これは、違うんだ! とアルバートは自分に言い聞かせるが、そんなものでどうにかなるものではない。屋外はともかく女性の家をのぞき見している時点で今度はアルバートの方がより変態と言うことになってしまうのだが、アルバートはビアンカを凝視することをやめられずにいる。
「んっ……あっ……」
ビアンカは絶頂に達しようとしているらしく、手の動きが激しくなっていくが、なぜか躊躇いがちに動きがとまり、肩を落とした。
「あぁ……また、イけなかった……イかないとダメなのにぃ……」
──なんなんだよ、お前は!
アルバートは心の中で悪態をついた。どうやら女は淫乱なわりに感度はよろしくないらしく、達する前に自らを押しとどめてしまうクセがあるらしい。それにしたって「達さないといけない」とはどのような意味なのかと、アルバートは疑問や衝動を抑える事ができなくなり、真正面──小屋の扉から中へ押し入った。
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