ムゲンセカイ - 異世界ゲームでサポートジョブに転生した俺の冒険譚 -

ろうでい

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六章『魔力列車は きたへ』

七十話『柊への ばつ』

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――― …

「ふーん。コイツがムークラウドを瘴気で包んでいた犯人ねぇ」

朝。ルーティアさんは縄で縛られた柊生徒会長を睨むように見つめている。
生徒会長は… 視線を斜め下に逸らしながら胡坐をかいて土に座っていた。

「… で、アタシにどうしろっていうんだい?マコト」

「あの… ですね。出来れば…でいいんですけれど、少しの間でいいので、この人の力を封じ込めておいたりできませんかね?」
「捕まえてきておいてなんですけれど…この人、かなり強力な死霊術師ネクロマンサーでして。放っておくとまた悪さをしかねないし…」
「大魔導士のルーティアさんなら、この人をどうにかしておく方法を知らないかなぁ、と」

「… ふーん」

…虫のいい話だ。
イオットの村には悠希や敬一郎を匿ってもらったり、ムークラウド奪還の手助けをしてもらったりと恩を借りっぱなしになっている。
その上、柊宗司の力を封じ込める術を借りるなどこの上更に世話をかけることになるが…。

他に方法が思いつかないのも事実だった。
ムークラウドの街に柊を留めておくワケにもいかないし、牢屋にぶち込んでおいたとしてもすぐに魔法で脱出してしまうだろう。

魔法使いの事は、魔法使いに。
イオットの村の大魔導士であるルーティアさんならなにかいい方法を知らないか… と、俺達は柊を連れて、イオットの村へ戻ってきた。

… 面倒事にまた巻き込むつもりか、という心境なのだろうか。
ルーティアさんは柊を、そして俺を…真剣な表情で見つめている。

そして、言った。

「この村でコイツを預かろう」

… … …。

「え… ええええええッ!?」

俺と敬一郎、悠希とカエデは、素っ頓狂な驚きの声をあげる。

「で、でも!このうえまたルーティアさんにメイワクかけちゃうじゃないっスか! サイアク、私達で生徒かい…じゃなくて、ソウジを連れて旅をするっスよ!?」

悠希の質問にルーティアさんはケラケラ笑った。

「ムークラウドの街を支配しようとしていた死霊術師ネクロマンサーを傍において旅なんて出来ないだろう?いつ寝首をかかれるかわからないじゃないか」
「あのねぇ。アンタ達はアタシに迷惑だと思っているんだろうけれど… むしろアタシ達イオットの村の住人は、アンタらに感謝してるんだよ?」

「そ…そうなんですか?」

「前も言っていたように、ムークラウドの街とは交流や交易がある。この村で採れる野菜以外にも魔法具や武器を輸出しているのさ」
「一方でイオットの村も、金銭を受け取り、魔法具に必要不可欠な鉱石や魔力源の購入をしなくちゃあいけない。野菜の栽培に必要な農具だってあの街の鉄鋼職人がいなけりゃ手に入らないしね」
「だからあの街の危機を救ってくれたアンタらの協力ならなんでもするさ。感謝をするのはこっちの方さ」

「で、でもルーティアさん、すげー不機嫌そうだったし…」

「顔色見て判断するのはよくないよ、ケーイチロー。今はその男をどうするのかをちょっと考えていたワケ」

… 杞憂だったわけだな。一安心した。

ルーティアさんはしゃがみ込んで、紐で縛られた柊の両手をとる。
そして人差し指を柊の両手につけたかと思うと… なにやらブツブツと、詠唱のような言葉を呟き始めた。
柊がジロリ、と眼鏡の奥からルーティアさんを睨んだ。

「… なにを、するつもりだ…!」

「ソウジ、って言ったっけ。殺さないだけ有難いと思いなよ。本来ならムークラウドを支配しようとしていたってだけでも危険人物なワケなんだから」
「見たところ、アンタの魔力じゃあしばらくアタシを追い越せないしね。まだ若いのに、それだけの魔力を持っているのは勿体ない」
「… 改心するまで、しばらくイオットの村に居てもらうよ」

言い終わると、ルーティアさんの人差し指の先から、僅かな白色の光が出ていた。
それを、まるで鉛筆のように。空間に描画をするように、ルーティアさんは『輪』を描く。

二つの輪を描くと… それは光の腕輪のような形になり、柊の両手首にぴったりとはまった。

「…!?」

「封魔の呪。要するに魔法が使えないようになる『手錠』だね。結構強力にかけておいたから、しばらくは破れないと思うよ」
「アタシがその呪いを解くか… アタシの魔力をアンタが超えるか、しないとね」

ルーティアさんは大きな帽子の鍔をくい、とあげてにっこりと歯を見せて、無邪気に柊に微笑んだ。

「… … …」

ルーティアさんは、次に指先から小さな炎を出し、それをカッターのような形にして柊を縛っていた縄を切る。
自由になった柊は立ち上がり、両手の封魔の呪をマジマジと見つめていた。

俺はルーティアさんに聞いてみる。

「預かる、って… 牢屋とかに入れておくんですか?」

「いいや。魔法が使えない状態のコイツにそんな事をわざわざしなくてもいいだろ?」
「せっかくの人手なんだ。有効活用させてもらうとするよ」

「で、でも、逃げるかもしれませんよ?この村から…」

敬一郎の疑問に、ルーティアさんはケラケラ笑う。

「アタシが解除しない限り魔法は使えないんだ。この村から逃げ出したところで辺りは神樹の森か、草原が広がるだけ…」
「魔法が使えない魔法使いじゃ、モンスターを倒すのだって一苦労だよ。この村を出たって、何一ついい事はない。むしろ…死ぬのが早まるかもね」
「ね?ソウジ」

「… … …」

ルーティアさんは柊に言い聞かせるようにそう言い、言葉を続ける。

「逆に…この村に留まるのなら、チャンスをあげるよ」

「チャンス…だと?」

「時々、アタシが魔法の稽古をつけてやるよ。聞けば、アンタも魔王討伐の意志はしっかり持っているっていうじゃないか」
死霊術師ネクロマンサーの、そして魔法の才覚はあるにしろ… 見たところ、その使い方や魔力運用の効率ってモンをまだ理解していないからね。勿体ない逸材だ」
「その封印が解けるようになるまで、アタシが稽古をつけてやる。軍備なんか整えなくても、自分の力で魔王を倒せるようになるくらいの才能を得るまで…ね」

「…で、でも危ないんじゃないんスか?そんな事したら、ルーティアさんをこの人、襲うかも…」

悠希の疑問はもっともだが、ルーティアさんはあっけらかんと笑っていた。

「大丈夫大丈夫。アタシを倒すなんざ、百万年あっても出来ないから」

… 相当、魔力には自信があるんだな。ルーティアさん。

「ソウジ。但し… アンタの本業は、魔法の稽古じゃないよ?さっきも言ったように、アンタは『人材』だ。この村のために…みっちり働いてもらうからね」

「… 僕に、何をさせるつもりだ…」

ルーティアさんは腕組みをして「ふっふっふ」と笑い… そして、宣告した。


「農業」

「… なん… だと…」

「鍬を持って畑を耕し… 春夏秋冬、この村の野菜作りに勤しんでもらうよ。朝は早く、各地への出荷作業で地獄のような労働が待ち構えているからね」
「まあ、一種の刑罰みたいなもんさ。飯は食わせて、人間らしい生活はさせてやるから有難く思いな」
「…サボったり逃げ出したりしようものなら、アタシの魔法で限界までの痛みを味わわせるからね?ソウジ」

「…ぐ…。 こ、この僕に… 畑仕事をさせるというのか…?」

「いいじゃん。その綺麗な手じゃあ、農作業なんか経験もした事ないだろう?社会貢献活動も少しは身に着けておいて損はないよ~?」
「美しい自然とのどかな村がアンタの心を浄化させてくれるさ。がんばるんだよ、ソウジ」

その時。

がし。
がしがし。

柊の肩を、腰を、何人もの人の手が掴んだ。

あれは…。

村の御老人たちだ。

「あらぁ~、わけえ男じゃなぁ~。鍛えがいがあるべぇ~」

「教え甲斐があるってもんよ。さ、まずは鍬を握ってみようかあ。ちょうど耕してない畑があるんだあ」

「慣れるまでは肩と腰が大変な事になるけんど… まあわけえんだ。大丈夫じゃろう。みっちり教え込んでやっからなあ」

そして… 柊の身体は、後ろに、後ろに…。

畑の方へと、幾人もの老人に引きずられていく。

「は… はな… 離せぇ…! やめろぉ…! 僕を、僕を農業に引きずり込むなぁ!僕はこの世界を支配するんだぁああ!」
「やめろおお! 鍬を持たせるな!手ぬぐいを肩に巻くな!帽子を被らせるなぁああ!!」
「うわあああああああ… … !!!」

… … …。

やがて柊の身体は、村の奥の方へと消えていった。


「一件落着、だね」

「は、はは…。 良かった…」

なんにせよ… これで、ムークラウドの異変は、解決だな。


そう思った時、突然頭に… ファンファーレが鳴り響いた。

パッパパーパパパパー!!♪♪

「… ッ!?」

「こ、この音… !?」

俺達が頭をおさえた様子を、カエデもルーティアさんも、不思議そうに見つめている。

そして…。

俺達の目の前に、ウインドウが表示された。

【 緊急クエスト 『ムークラウドの瘴気を払え』 クリア 】

【 達成おめでとうございます。 クリア報酬として 経験値:2000 を取得しました 】

「な…!?」

俺は、俺達はそのウインドウに驚愕した。

おかしい。
今回の出来事は… 柊宗司と竹川将太の…プレイヤーの意志が引き起こした事態に過ぎない。
それが、クエスト扱いされている…!?どういう事だ…!?


『説明するね』


その聞き慣れた、頭に響く声に、俺達は振り返る。


黒鳥は、村の大きな、朽ちた老木の枝に留まり、俺達を見下ろしていた。


――― …
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