6 / 80
一章『ゆめの はじまり』
五話『はじまりは きょうかい』
しおりを挟む――― …
目を開いた時、俺は…。
教会にいた。
「… … … は?」
教会。礼拝堂というのが正しいだろうか。
信者が座る椅子がずらりと並び、少し古ぼけた祭壇がステンドグラスから漏れる光に照らされている。
誰もいない。物音の無い教会の中央に俺は座り込んでいた。
「… これが、俺の、『あるべき場所』?」
始まりの街… 黒い鳥、イシエルとか名乗っていたか。アイツが言うに、ここはムークラウドという街の中らしい。
おそらく、ここがゲームのスタート位置なのだろう。教会…まぁ、アリと言えばアリなんだろうが。草原の真っただ中とか洞窟の中よりはマシか。
「… … …」
しばし俺は周りを見回し、状況を確認する。
すると… 俺の後ろに、人の足音を感じた。慌てて俺はそちらの方を振り向く。
「… ッ!?」
俺は驚いた。
なぜなら、そこにいたのは…。
担任の安田先生だったからだ。
「や、すだ… 先生…!?」
「これ。なにを言っておるかマコト。さてはまた昼寝をしておったな」
安田先生は白と紫の司祭服に身を包み、厳かに歩きながら俺の方へ近づいてくる。…なんだか異様に似合う服装だ。
「少し散歩でもして目を覚ましてきなさい。教会の掃除はそれからでよろしい」
「そうじ、って…。俺が…?」
「お前以外に誰がおるのか。ほれ、行ってきなさい」
「で、でも安田先生…」
「やすだせんせい? さっきから私を見てそう言っておるが、私の名前を忘れたわけではあるまいな」
安田先生は少し怒ったように咳払いをして俺に告げた。
「私はキオ。この教会の司祭。 そしてマコト。お前は此処の『僧侶』だろうが」
… … …。
キオ。確か安田先生の本名…安田昭雄だったな。そこからとったのか。
いや、そんな事はどうでもいい。それより、後半。もっと大切な事を言っていた気がする。俺は確認するように安田せんせ… いや、司祭のキオに尋ねる。
「えと… 俺は、ここの… なんて言いました?」
「此処の、僧侶だ」
「… … …」
そう、りょ。
そして俺は、自分の着ている服に初めて気付く。
キオの着ている服のカラーリングと似た…法衣、というのだろうか。簡素で動きやすい服。首からはこの教会のシンボルのような紋章のエンブレムのついたネックレスをつけていた。
…そうりょ。
「ええええええ…」
「なんだそのがっかりした声は」
驚きより、落胆の方が大きい。
「戦士(せんし)の下だから…まぁ、あいうえお順なら、僧侶(そうりょ)か」
僧侶…。ゲームの初期ジョブとしては…俺ならまず選ばないな。回復とサポート魔法に特化している面はおそらくあるんだろうが…ソロプレイにはまず向かない職業。
こういう職業って中盤からようやく使いものになってくるんであって…序盤のレベル上げとか苦労するんだよなぁ。
俺は安全にレベル上げてから石橋を叩くプレイが好きなのに、それに苦労するなんて事はしたくない派であって…。
「なにをブツブツいっておるマコト」
… どうやら小声で口に出していたらしい。
「いいから外に出て頭を冷やしてきなさい」
「ふえ… はい」
俺は肩を落として落ち込みながら、教会の重いドアを開けて、街中に出る事にした。
0
お気に入りに追加
185
あなたにおすすめの小説

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます
白い彗星
ファンタジー
魔力の溢れる世界。記憶を失った少女は最強魔導士に弟子入り!
いずれ師匠を超える魔導士になると豪語する少女は、魔導を極めるため魔導学園へと入学する。しかし、平穏な学園生活を望む彼女の気持ちとは裏腹に様々な事件に巻き込まれて…!?
初めて出会う種族、友達、そして転生者。
思わぬ出会いの数々が、彼女を高みへと導いていく。
その中で明かされていく、少女の謎とは……そして、彼女は師匠をも超える魔導士に、なれるのか!?
最強の魔導士を目指す少女の、青春学園ファンタジーここに開幕!
毎日更新中です。
小説家になろう、ノベルピア、カクヨムでも連載しています!
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!
yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。
だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。
創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。
そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる