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七話 『風来の、猫』
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「……猫だ」
翌日。
学校帰り、坂道を自転車を押して帰る私は……猫を見た。
白黒模様の、でっぷりした体格の猫。
やや年老いて見えるのんびりした様子のその猫は……。
ポン、だった。
「…………は?」
ポンと思わしき猫……というか、ポンは……民宿から数十メートル離れた民家の庭にのんびりと座り込んでいる。
視線は、民家の中。家の大きな窓からは…… 美しい、ペルシャ猫がソファーの上でポンを眺めていた。
お互いに視線を交わす、オスとメス。
窓ガラスに隔てられた二匹の視線は……まるで、恋をしているような、そんな様子だったのだ。
「……まさか。ポン、キミ……この家に居座ってずっとこの子のところにいたとか、そういうオチ……!?」
「うなー」
自分の背後にいる人間に気付いたポンは「そうだが何か問題でも?」という様子で私に鳴き声を浴びせる。
思わずその態度に、私は声を荒げた。
「ふ……ふざけんじゃないわよーーっ!!昨日、悠と夏とキミのこと心配してたんだからねっ!?こっちはもうキミにお別れまで言ってるんだから!」
「……」
私の様子をポンはじーっと見て……。やがて、「やれやれ」という感じで私の元へゆったりと歩んでくる。
猫の癖に、溜息を吐いているようだ。
そして、ポンは……私の足元にぴったりとくっついた。
「…………は?」
「なー」
「……まさか、キミ……それで諦めがついて、民宿に帰ろうってつもりじゃないでしょうね……!?」
「にゃ」
こ……この、猫……!!
「さ、さすがに許さないからね!?今更どんな顔して家に戻ってくるっていうのよ!彼女猫たちだってキミのこと心配してたんだから!キミみたいな浮気者に貸す敷地なんて……」
物言わぬ相手に、説教をしていた、その時。
「あ、柚子ちゃん」
「あ、悠」
小学校帰りの悠が、私を見つけて道の反対側から声をかけていた。
そして、私の足元にいる生物を見つけ……喜びの声をあげる。
「……!ポン!ポン!柚子ちゃん、見つけてくれたの!?」
「あー、まぁ……見つけたというか、なんというか……」
「すごい、柚子ちゃん!ありがとう!ポン、心配したんだからね」
「にゃー」
私では埒があかないと悟ったのだろう。ポンは悠の元へと歩んでいき、足元に擦り寄るのだった。
「ウチに帰ってきてくれるんだね。じゃ、ポン、一緒にかえろ」
「にゃ」
そうして……純粋無垢な我が妹と、狡猾な浮気猫は、二人仲良く、数十メートル先の我が家の敷地へと、入っていくのだった。
「……」
虚しさ。苛立ち。虚脱感。悲哀。
様々な感情が私の中に渦巻き……。
「……おそれ、いりました……」
あんなに上手く世渡りをする猫に、感服をするのだった。
――
こうして、我が家の庭には時々、白黒の年を取った猫がたまに居座るようになっていた。
その時によって寝床は変えているようで、たまに数日帰って来ない時がある。しかし恐ろしいことに、またいつの間にか我が家に帰ってきているのだ。
我が民宿ヤマガミは、風来坊の浮気者猫の拠点として、活用されることになってしまったのだった。
たまに違う猫を連れてきているようだけれど……基本的にお客さんに迷惑はかけていないし、餌も欲しがらない。ただただ、傍観するしかなかいのだ。
人懐っこい猫が、良い猫だとは限らないのだ。
しかし……彼にとってはきっと、最高の余生の過ごし方を、しているのだろう。
もしも、貴方の庭先に白黒のデブ猫がいたら……。
それは、ひょっとして……。
――
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