ホシワタリのあなたへ

Kotoh

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1-8: スヴィリタリフの雨(Rain of "Sebewitalif")(前編)

6.幕間の二人

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オルダーウィックから徒歩で一時間ほど離れた森の街道。そこに二人の人影があった。

一人は背が高く、歳の頃は三十代半ば。知的で油断のない瞳が夜空の流星を見上げていた。

もう一人は十代の半ば頃の少年。ウェーブのかかった明るい髪と、好奇心に満ちた深い青色の瞳をしている。

二人ともヘリンボーン柄のコートを着用し、その裏には細かく複雑な刺繍が入っている。旅行用の小さな鞄を持って静かに森を進んでいた。

「先生、足が速すぎます。もうちょっとゆっくり歩いていただけませんか?」
少年、リュカ・アルベルティは息を切らせながら言った。前を小走りで進む長身の男へ、着いて行くので精一杯のようだった。
「間もなくか」長身の男、サイラス・ヴァロは夜空を見上げた。流星が終わろうとしている。

「先生、聞いてます?全然スピードが変わらないんですけど」
リュカが眉を上げて抗議したその時、二人の通り過ぎた後方から一羽の鳥が飛び去った。
雪のように白い羽毛を持つ、しなやかな鳥だった。その美しい飛び姿は、暗闇の中で僅かに光っているようにも見える。四つ葉遺跡でルミニタ達が精霊を呼び出した際、近くに現れた鳥だった。
その様子を見て、サイラスは漸く歩幅を緩めた。

「あれ、普通の動物ではありませんね。精霊の気配がします」リュカが遠目に眺めながら言った。
「だろうな。我々が索敵範囲から脱したのだ」
「何者の仕業でしょう?」
「こんな距離まで精霊を使わせられる術士など、そうはいない。ましてやあの村にはな。森の国ヴェルナルの風使い、アヤメ・ブラッケン、過保護なことだ」
「先生って本当に、ご自分の興味のあることしかお話ししませんよね」
「だから教えてやったじゃないか」
「何をです?」
「急いでいた理由をだ」
「ようするに、あの鳥から逃げるために走っていたということですか。そのために、僕をひたすらに無視するという、残酷な仕打ちをした訳ですね?だったら最初からそういえばいいのに」
「まあな」サイラスはきびすを返し歩き始めた。

「スヴィウィタリフの雨が終わり、審判が始まる。世界が混沌に包まれる」静寂を取り戻しつつある空を見ながら、サイラスが呟いた。そしてオルダーウィックで出会った二人の兄妹を思い浮かべた。「まあ頑張ってみることだな」

「頑張る?僕のことですか?もっと理解力をあげて、言う前に察しろとか、そういう感じのことを言ってます?うわぁ、性格悪……びっくりしますよ。ねえ、先生?聞いてます?先生?」

リュカの小言を夜の街道に響かせながら、二人は闇へ消えていった。
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