ホシワタリのあなたへ

Kotoh

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1-6: 伝い手(Contezio)

1. 流星の日の夜

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その日、リベルとルミニタは二人で連れ立ってオルダーウィックを散歩していた。川沿いに近づくと、虫の鳴き声と水の流れる音が少しずつ大きくなっていく。夕食を終え、辺りはすっかり暗くなっていた。

「昨日より少しだけ日が長かった気がするね」
ルミニタが夜空を見上げて歩きながら言った。

「あと2週間もすれば繁緑の月だからね」
リベルはその少し後ろを歩きながら答えた。
この時間になると通りに人の出はほとんどない。静かな中、夕食を終えたであろう家庭から、食器を片付ける音が聞こえた。ほとんど散りかけた桜の花びらが、時折空を泳いでいた。

二人はそのまま丘の上まで歩いた。以前、ルミニタと師匠が精霊術ファズマニクスの訓練をしていた場所だった。

「きっとこの場所が、一番綺麗に見えるよ。一人の時、こうやって夜ここに来ていたからね」
ルミニタはそう言って、柔らかいスカートが皺にならないよう伸ばし、芝生に座った。

「どれくらい経ったら流星が見えるのかな?」ルミニタがわくわくしたように言った。
「どうだろう……そういえば彼は、日にちと、夜ということしか言っていなかった。学者だと言うからにはそういう所は正確にして欲しいね」
リベルが、ポケットから取り出した懐中時計を眺めながら言った。

「リベルはサイラスさんのこと嫌いなの?」
「そういう訳じゃないけど。まあ、学者と言うだけあって、そこそこ勉強はしているようだしね」
「珍しいね」ルミニタは口に手を当てて笑った。手に着いていた草が自然に落ち、夜風に吹かれてどこかへ舞っていった。

その風に釣られて、ルミニタは丘の上から村を見下ろした。暗闇の中、無数の家から漏れる、光だけが明るくかった。住人の動きで遮られるのか、その灯りが時々揺れている。それを見ると、こんな暗い夜の中でも、確かに人が生きていて、世界が動いていることを感じさせる。小さな時からルミニタが見てきた光景だった。

「この光景もしばらく見られないのかな」
ルミニタは自分の膝を抱えて呟いた。

明後日、二人はオルダーウィックを出る。平野の国プラトーの首都、ランディニウムへ行き、ホシワタリの訓練生として、学校に通うことになっていた。

ルミニタは見下ろした村の中から、オルダーウィック唯一の宿、「小鳥の泊まり場」を見つけた。その窓から漏れる灯りを物憂げに眺めながら、あの日の事を思い返した。
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