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エピローグ(最終話)モブ転生は、思わぬ幸せな結婚へ

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「先程から申し上げていますけど、姉上は何が心配なんです? ばっちりですよ」
「だって、美しい白騎士と言われているクラウスとの結婚式なのよ?」
「……それで?」
「私は平凡だから、彼の隣に立ってもいいように着飾らないといけないし」

 ドミニクがなぜか一周回った。リーシェが小さく吐息をもらしている。

「おっほん、僕の尊敬する大好きな姉上」
「どうして回ったの?」
「言葉を整えるのに必要だったからです。あのですね、いったい何を言っているのか分からないのですが、そもそも姉上は美し――うわっ」

 クラウスが、後ろからドミニクの肩に腕を回して引き寄せる。

「そこは俺だけ分かっていればいいんだ」
「出た! すでに夫宣言がむかつく……っ!」

 そう反論したかと思ったら、ドミニクが「夫」と繰り返してなぜか泣いた。

「……えぇと、ごめんなさいクラウス、なんだか緊張して情緒不安定みたいなの」

 クラウスが「リーシェ」と呼んで彼女にドミニクを任せ、シルフィアの肩を抱いて自分に向かわせた。

「姉離れの年頃がきたんだろう。大丈夫だ」

 化粧が崩れないよう彼が額へ控えめにキスをする。

「そう、かしら。ならいいのですけれど」

 シルフィアはどきどきしてそういうことにした。普段からクラウスは白い軍服だが、今日のタキシード姿は特別に見えた。

(とても似合っていて、また褒めたくなってしまうわ)

 試着で何度か見たはずなのに胸が高鳴ってしまう。

 その時、扉が開き、ミュゼスター公が顔を覗かせた。

「うるさいけど、いったい何をやっているのかな?」
「ミュゼスター公様。陛下のご案内は」
「ああ、してきたところだよ。白騎士部隊もいてくれるから護衛の配置も安心だ。ところで」

 と言った彼の目が、リーシェに「よしよし」とされているドミニクへ向く。

 するとミュゼスター公の後ろからアードリューも現れた。続いて室内を見たアルベリオも「えっ」と目を丸くする。

「状況が分からない、なぜ弟の方が泣いているんだ……?」

 まだ泣きじゃくっているドミニクを、ミュゼスター公が平然と連れて二人に紹介した。彼らは涙をかなり気にしていた。

 その時、転移魔法が発動してドミニクの涙が悲鳴と共に止まった。

「よっ、白騎士! 綺麗な花嫁はどこかな~」
「花嫁は準備大丈夫か、不安がってないか? ――って、痛い!」
「なんでお前らまで来るんだよ」

 バクザのマントが落ち着くよりも早く、クラウスが彼と、そしてチャラい雰囲気が衣装からも滲み出ているルカディオの顔面を掴んで押さえた。

 すると廊下の奥から、ぱたぱたと可愛らしい足音がしアルベリオが扉の向こうに指示する。

「ハルジオ、ロジェの相手をしろ」
「はっ。しかしながらマディオン共もついておりますが」
「あいつらほんと仲いいな。控え室に男だけで押しかけるなと教えてやれ」

 というかあなた様たちみんな殿方……とシルフィアは思った。

 レイニアの件をきっかけに、気づけば個人的な交流まで始まってしまって、あれからシルフィアは攻略対象たちと仲良くなっていた。

 社交の味方としては頼もしいのだが、何やらクラウスはいい顔をしていない。

「っておい! ハルジオ、なぜ連れてくる!」
「いえ、みんないるならのけ者みたいと言われたら」
「相変わらずほだされやすいというか真面目すぎる……いいから、全員、とっとと戻れっ。式が始まるまで大人しく待ってろっ」

 クラウスが全員を追い出しにかかる。

 改めて眺めてみると美しい顔ぶれだった。ゲームのエンディングを思わせる攻略対象の七人の光景は、薔薇でも舞っているかのよう。

(もしかしたら彼女は、このゲームがとても大好きだったのかもしれない)

 しみじみとそんなことを思ったシルフィアは、ふと首を捻った。

(……ん? これに近い光景をゲームの終わりに見たような)

 と、賑やかだった男たちがミュゼスター公の指示で出ていく。

「シルフィア」

 リーシェと再び三人で残された時、クラウスが白い手袋がされたシルフィアの手を取って、嬉しそうに目を細めた。

「綺麗だよ。こんなに美しい花嫁は見たことがない」

 真っ向から改めて伝えられ、シルフィアはぼっと頬を赤くした。

「さ、先程も伝えてくださいましたのに」
「何度だって言いたくなるんだ」

 彼も同じ気持ちだったみたいだ。ときめきと共に、嬉しくて涙が出そうになる。

「それに不安になっているみたいだから、教えてあげようと思って」
「ありがとうございます――クラウスと結婚できることになって、嬉しいです」
「俺こそだ。とてつもない幸せを感じてる」

 彼が正面から抱き上げた。

 衣装が崩れるのではないかとシルフィアは慌てたが、リーシェが裾を素早く持って形を保ち、その間にもクラウスがシルフィアの頬へ唇を押し当てる。

「君を誰にも見せたくないな。いや、でも自慢したい」
「ふふっ、どちらですか?」
「どちらも本心だ。結婚しても心配が減らないのがネックだな、君の周りには美しい男が多すぎる」

 彼は、ちゅっちゅっとキスをしながら言う。

(なんて、……可愛い人なのかしら)

 結婚するのに、シルフィアを独占したくてたまらないでいるのだろう。ウエディングでの初夜も楽しみだとは散々言っていた。

「大丈夫です。私は、クラウス以外見えていないですから」

 シルフィアは甘えさせるように、クラウスの頭を優しく抱き寄せた。

「心を揺らすのも、私にときめきを与えるのもあなただけよ」

 シルフィアも挙式から初夜まで、特別な今日という一日が楽しみでいっぱいだった。


 ――時間がきた。

 始まった結婚式は盛大だった。神官総出で頭を下げられての新郎新婦の入場は、見ていた貴族や人々を自然と起立させ大きな拍手を起こさせたほどだ。

 神殿側としては、聖女の結婚とあってそこは譲れなかったのだろう。

 そこにシルフィアは恐縮しつつ、多くの人たちに祝福されている喜びを噛みしめ、クラウスと寄り添いながらヴァージン・ロードを歩いた。

 祭壇はとても大きくて美しかった。

 そこにクラウスと立った瞬間、神聖な気持ちで胸が満たされるのを感じた。

 いや、これは旅立ちの喜びだ。

 つつがなく進んでいく挙式にシルフィアは、緊張もいつの間にか、手を繋いでいるクラウスへの愛に塗り替えられていた。

「本日よりシルフィア・マルゼルは、白騎士クラウス・エンゼルロイズの妻となり、この時をもってシルフィア・エンゼルロイズとなりました」

 大きな拍手が会場から上がった。

 そうして結婚指輪の交換がされ、全員に見守られての誓いのキスとなった。緊張はしたが、クラウスと向き合った途端にシルフィアは心が安らぐ。

「俺、白騎士クラウス・エンゼルロイズは生涯あなたを愛し、騎士として守り、そして夫としてそばにいて支え続けることを約束します」

 胸がいっぱいになった。

 一瞬、声が詰まってしまったシルフィアは、一呼吸置かなければならなかった。

「私も――どんな困難があろうと、共に乗り越えられる妻であることをここに誓います」

 言葉を交わしたのち、キスのため二人は唇を寄せ合った。

「愛してる、シルフィア」
「私も、あなたを心から愛しています」

 二人の唇が重なった瞬間、会場から感動の拍手が鳴り響いた。

 人生は、モブとかはなくて、その人にとっては自分こそがまさに主役なのだ。

 シルフィアはクラウスと迎えた結婚と、そしてこれから彼と築いていく新たな家庭という人生のスタートへの喜びで胸は薔薇色に染まっていた。


                了
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感想 18

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みんなの感想(18件)

もふもふママ

本当に素敵なお話しでしたのに誤字脱字が残念_:(´ཀ`」 ∠):

解除
華子
2024.06.28 華子

お話は面白かったのですが、誤字・脱字・誤変換などが多々あり「んん?」と読み返して脳内変換で読みすすめまた。

魅了を解くのは会ってちょっと触れるだけなのに何で1日一人? 
全員一気にやってしまわないの?とモヤモヤ。日にちがかかれば聖女にバレるだろ思ってました。
無自覚の力でシルフィアも疲れた感じもないし、クラウスも男性と会うことに神経質になってるのに1日で全て解除しようとは思わなかったんだー。と。

貞操観念も他の女性がほぼ出てこないので分からないですが、初体験が連れ込み宿みたいな宿で三時間て。無いわー。
次の日も同じ宿で三時間。マジで無いわ。

解除
沙吉紫苑
2024.06.15 沙吉紫苑

変換ミスがかなりあります。
せっかく楽しく拝読させていただいているのにお話の世界から弾き出されたような感じになって非常に残念です。
私もたいていは自動的にスルーしてしまえる方なのですが言葉の部分的(一文字だけ)重複などあって意味などで引っかかったりしてしまって残念です。
誤字誤用は不治の病とは言いますが少し確認いただけるとありがたいと思います。
楽しいお話なのにとてももったいなく損なさっている気がします。
失礼申しあげすみません。

解除

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