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■We can't do it alone
■008 We can't do it alone①
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子供の頃、私は誰かを導く光になれるのだと思っていた。
でも、大人になるにつれ光にはなれないのだと思い知らされた。
──でも、良かった。
君は、大きくなったね。
刻むんだ。報復の光を。刻むんだ。抱腹の物語を。
それが君の血なのだから。
◆
かつて、一人の男が居た。
名を秋大椛音。一つの家族を巻き込む洗脳殺人でただ一人犯人を殺し、その頭を警察につき出し逮捕された。常に笑顔で細まった目の奥には常になにもなかった。殺意も悪意もなく、ただ殺したいから殺した、そう供述したそうだ。
その男には二人の息子が居た。白髪青目、ギョロッとした双眸がおぞましい秋大豆夜。黒髪赤目、貫き殺すような三白眼がおそろしい秋大豆助。彼らは『混沌の象徴』の息子として社会から隔離されていた。
そして、兄の豆夜は自殺した。弟の豆助は一人になり、ただただ誰も手を差しのべてくれないくそったれな世界が嫌いになった。それでいて、明るく己を嘲笑うような斜陽を知ろ示す世界が大嫌いだった。
故に人を殺した。殺して、嗤った。
そのあまりにも野性的で計画的な殺人は『悪意の象徴』と認めさせるには充分すぎるものだった。
──俺達は一人ではなにもできないのだから。
◆
「仲間集め忘れてない?」
飯屋のメニュー表から顔をあげ、俺は清彦にそう問いた。清彦は少し固まったのちにてへぺろっというしぐさを作った。殴りてぇです。
「荷物持ちが欲しいところだよな」
「となると……《亜空間収納》のスキル持ちを探さなきゃね。フリーの人いるかな…とっても貴重な人材でしょ?」
「知り合いに一人いるが……」
アーロン氏が、控えめにそう言う。
「なにか問題が?」
「すぐに脱ぐ」
Oh……。
「それはすごいやつだな。腐れ納豆が靡きそうだ」
「女性ならね」
「ガチムチの男だ」
「確定だな」
「え? 何が? もしかしてだけどスノウさ、俺のことホモにしようとしてない? 靡かないからね? ガチムチの男なら殊更にね!」
「ガチホモの腐れ納豆は置いといて」
そっちがその気なら俺も、しまいにゃ泣くけど? 男の大泣き見せてやるよ。
「俺腹筋すら割れてない……」
「落ち着け。アーロン。この腐れ納豆は割れてない方が萌えるらしいぞ」
「スノウてめぇ表出ろよ」
「どうした腐納豆」
「思ったが納豆元から腐ってね!?」
「二重腐。いや、三重腐か?」
「やめろてめぇこの野郎……!!」
胸ぐらをつかみ合い、睨み合った。
ガッシャァァン! テーブルが倒れる音、食器が割れる音、女性の悲鳴。
なんだなんだとそちらへ目を向けると、おおっと?
「スノウ。昨日の今日でスタンピードらしい」
「腐れ納豆。もう行けるか?」
「おうともさ!」
そういえば、名無しの神様とやらが俺にと用意したらしい
武具防具は何処へ。
「まぁいいか。じゃあ、スノウ。囮は任せろ!」
「おうよ」
清彦を影で覆い、出撃させる。
俺もなるべく遠くへ行こう。ヘイト稼ぎつつね。
「ちょ、ちょっと待て血便!!」
「けっ血便? ……どうしたのアーロンくん」
「俺はどうすりゃいいんだよ」
あ、確かに。
「あー……じゃあ、なるべくスノウを照らさないように応戦してくれるかな。というか、殴らなくなったね」
「もう殴れるわけないだろ」
なんで? ああ、俺の身体ボロボロだから! いやぁ、でもほとんど傷跡だから問題ないんだけどね。まあ、殴られないならそれに濾したことはないんだけどね。
「それじゃあ、健闘を!」
「お、おう!」
店の外に出て、遠目に見えるゴーレムの首に影を絡ませてスパ●ダーマンのごとき移動を魅せる。テクニシャンである。
「ああ、いた! お客さん! 装備を忘れてますぜ!」
──ゴーレムの頭におっさんが降り立った。
「何者だ、貴方」
「宿屋<エイコウ亭>の主人、アース・ディ・ケルドでさァ」
「貴族さんすか」
「おうよ」
「物好きですねぇ。宿屋なんて」
とりあえず、俺が忘れたらしい装備を受けとる。あれ、これ件の武具防具じゃないの? ケルドさんマジで有能。
「ありがとうございます! これで頑張れそうです!」
「おうよ。頑張んな!」
「はい!」
ちょっとオーバーするけど、4%出してこのゴーレムを中心にモンスターの注意を引こう。頼んだよ二人とも。
◆
──それじゃあ、健闘を!
はじめて言われた。
……頑張ろう。ノーズが期待してくれてんだ。
レベルで比べれば俺の方が強い。でもそこに実力をプラスしてしまうと圧倒的にノーズの方が強い。スキルの使い方がうますぎる。骨折や肉体の破裂がなくなれば最強になると思う。
俺は、そんな男に応援されたんだ。
ここで頑張らなければ男じゃない。
やってやろう。
でも、大人になるにつれ光にはなれないのだと思い知らされた。
──でも、良かった。
君は、大きくなったね。
刻むんだ。報復の光を。刻むんだ。抱腹の物語を。
それが君の血なのだから。
◆
かつて、一人の男が居た。
名を秋大椛音。一つの家族を巻き込む洗脳殺人でただ一人犯人を殺し、その頭を警察につき出し逮捕された。常に笑顔で細まった目の奥には常になにもなかった。殺意も悪意もなく、ただ殺したいから殺した、そう供述したそうだ。
その男には二人の息子が居た。白髪青目、ギョロッとした双眸がおぞましい秋大豆夜。黒髪赤目、貫き殺すような三白眼がおそろしい秋大豆助。彼らは『混沌の象徴』の息子として社会から隔離されていた。
そして、兄の豆夜は自殺した。弟の豆助は一人になり、ただただ誰も手を差しのべてくれないくそったれな世界が嫌いになった。それでいて、明るく己を嘲笑うような斜陽を知ろ示す世界が大嫌いだった。
故に人を殺した。殺して、嗤った。
そのあまりにも野性的で計画的な殺人は『悪意の象徴』と認めさせるには充分すぎるものだった。
──俺達は一人ではなにもできないのだから。
◆
「仲間集め忘れてない?」
飯屋のメニュー表から顔をあげ、俺は清彦にそう問いた。清彦は少し固まったのちにてへぺろっというしぐさを作った。殴りてぇです。
「荷物持ちが欲しいところだよな」
「となると……《亜空間収納》のスキル持ちを探さなきゃね。フリーの人いるかな…とっても貴重な人材でしょ?」
「知り合いに一人いるが……」
アーロン氏が、控えめにそう言う。
「なにか問題が?」
「すぐに脱ぐ」
Oh……。
「それはすごいやつだな。腐れ納豆が靡きそうだ」
「女性ならね」
「ガチムチの男だ」
「確定だな」
「え? 何が? もしかしてだけどスノウさ、俺のことホモにしようとしてない? 靡かないからね? ガチムチの男なら殊更にね!」
「ガチホモの腐れ納豆は置いといて」
そっちがその気なら俺も、しまいにゃ泣くけど? 男の大泣き見せてやるよ。
「俺腹筋すら割れてない……」
「落ち着け。アーロン。この腐れ納豆は割れてない方が萌えるらしいぞ」
「スノウてめぇ表出ろよ」
「どうした腐納豆」
「思ったが納豆元から腐ってね!?」
「二重腐。いや、三重腐か?」
「やめろてめぇこの野郎……!!」
胸ぐらをつかみ合い、睨み合った。
ガッシャァァン! テーブルが倒れる音、食器が割れる音、女性の悲鳴。
なんだなんだとそちらへ目を向けると、おおっと?
「スノウ。昨日の今日でスタンピードらしい」
「腐れ納豆。もう行けるか?」
「おうともさ!」
そういえば、名無しの神様とやらが俺にと用意したらしい
武具防具は何処へ。
「まぁいいか。じゃあ、スノウ。囮は任せろ!」
「おうよ」
清彦を影で覆い、出撃させる。
俺もなるべく遠くへ行こう。ヘイト稼ぎつつね。
「ちょ、ちょっと待て血便!!」
「けっ血便? ……どうしたのアーロンくん」
「俺はどうすりゃいいんだよ」
あ、確かに。
「あー……じゃあ、なるべくスノウを照らさないように応戦してくれるかな。というか、殴らなくなったね」
「もう殴れるわけないだろ」
なんで? ああ、俺の身体ボロボロだから! いやぁ、でもほとんど傷跡だから問題ないんだけどね。まあ、殴られないならそれに濾したことはないんだけどね。
「それじゃあ、健闘を!」
「お、おう!」
店の外に出て、遠目に見えるゴーレムの首に影を絡ませてスパ●ダーマンのごとき移動を魅せる。テクニシャンである。
「ああ、いた! お客さん! 装備を忘れてますぜ!」
──ゴーレムの頭におっさんが降り立った。
「何者だ、貴方」
「宿屋<エイコウ亭>の主人、アース・ディ・ケルドでさァ」
「貴族さんすか」
「おうよ」
「物好きですねぇ。宿屋なんて」
とりあえず、俺が忘れたらしい装備を受けとる。あれ、これ件の武具防具じゃないの? ケルドさんマジで有能。
「ありがとうございます! これで頑張れそうです!」
「おうよ。頑張んな!」
「はい!」
ちょっとオーバーするけど、4%出してこのゴーレムを中心にモンスターの注意を引こう。頼んだよ二人とも。
◆
──それじゃあ、健闘を!
はじめて言われた。
……頑張ろう。ノーズが期待してくれてんだ。
レベルで比べれば俺の方が強い。でもそこに実力をプラスしてしまうと圧倒的にノーズの方が強い。スキルの使い方がうますぎる。骨折や肉体の破裂がなくなれば最強になると思う。
俺は、そんな男に応援されたんだ。
ここで頑張らなければ男じゃない。
やってやろう。
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