48 / 180
第八章 貴賓館訪問
1 遠回り(領主視点)
しおりを挟む
1 遠回り (領主視点)
ジュンにはアリオトを待たせておくように頼んだ。僕が迎えに行く。束の間でもいいから、二人きりの時間が持ちたかったのだ。
皇女のためにお連れするという名目で、今日はアリオトと一緒にいることができる。内心、嬉しくて仕方がない。皇女が何をする気か若干心配だが、アリオトが嫌がるようなことは絶対させないつもりだ。
城代たちとのミーティング中も、この後のことで頭がいっぱいだった。
僕らは男同士。もはや恋愛対象として見ているわけでも、花嫁候補として見ているわけでもない。ただの主従として、友人として、距離を縮めたいだけだ。少女としての第一印象を塗り替えられるくらい、少年であるアリオトの素の姿に触れたい。
アリオトがジュンの親戚だったとは驚きだった。乳母からは親戚にそんな子供がいるなど聞いたこともなかった。遠い親戚らしいが、ジュンやトーマの家系ならあの美貌にも頷ける。
とにかく、ジュンの小姓ということだから丁重に扱おう。自然な主従関係を育もう。彼が今後も小姓として王宮でやっていくというなら、それが一番な健全な道だろう。今日はその第一歩になる。自然に、健全に。今日はこれを心の標語として掲げよう。
城代たちとのミーティングを終え、小生は会議の間を後にした。小生が何も口を挟まなければ、ミーティングはかくも速やかに終わるものなのか。
「よし、次は貴賓館訪問だな」
「はっ!」
廊下を進む小生の後を、執事は息を切らしながらついてくる。
「お待ちください。そんなに急がれては……」
「もー、なんでそんなに遅いの。大丈夫か?」
「老人を少しはいたわってくださいませ」
執事を待つため立ち止まって、ふと視界に入った中庭。こんなにも、世界が美しいなんて。憂い顔の天使の石像さえ、柔らかな早春の光に羽ばたいていきそうに見える。散歩日和だ。アリオトと庭を遠回りしながら貴賓館へ向かうつもりだった。少しでも早く迎えに行きたい。
「こっちの方が近いな」
「あ、お待ちください!そちらには今……!」
西の棟に向かう廊下を曲がり、会議室の前を通りかかると、対面からぞろぞろと大臣や有力商人たちがやって来た。
「げっ?!」
「商工ギルドの会議は欠席の手配をしましたので、西の廊下はお通りにならないようにと申し上げたではございませんか」
追いついてきた執事が、懐中時計を見る。ドタキャンした会議のメンバーと鉢合わせは流石に気まずい。引き返そうとする小生の袖を、執事は老人とは思えない強さでとらえて、すましている。
「あからさまに避けては、ますます覚えが悪くなります」
「ますます、ね……だがいちいち皆の機嫌を取る筋合いはないだろ」
「いいえ、上に立つ者の勤めにございます」
堅苦しいしきたりだらけで、廊下も自由に歩けない。
「これはこれは領主様……!本日はご機嫌麗しく……!」
大臣やその取り巻きたちから、いちいち慇懃な社交辞令を受けたせいで、時間をかなりロスしてしまった。
「……今、何時だろう」
「まだ時間にはかなり余裕がございます」
「急ごう」
小生は廊下を小走りに駆け出した。
「領主様! 廊下を走るとは何事です!」
執事は慌てて追いかけてくる。
*************
支度を整え、厩舎に向かう。いいというのに執事がずっとついてくる。厩舎の前にはすでに小生の白馬と、栗毛の馬に鞍が置かれていた。
「この馬は?」
「侍従にお供させます」
「一人で良いと言っているだろう」
「そうは参りません。王子の身に何かあっては困ります。……おい、トーマはまだ来ておらんのか」
「うっわ、しかもなんでトーマ。彼は父上の侍従だろ?」
「王直々の差配でございます」
厩舎長は、トーマは一度やって来たものの、またどこかにふらりと出ていってしまったと言う。執事は苦々しげにため息をつく。
「やれやれ、申し訳ありません」
「構わないさ。トーマが戻ったら、僕は先に行ったと伝えてくれ」
小生はそそくさと馬にまたがりながら、執事と厩舎長に声をかける。
「貴賓館で待っているように言っておいて」
執事の返事も聞かずに、小生は馬を走らせた。
**********************
敷地内なのだから、徒歩でも良いくらいなのだ。数分もかからず、ジュンの館の前に着いた。見上げると、2階のバルコニーにアリオトの姿があった。
小生は手を振った。頬杖をついていたアリオトは、小生に気付くとぱっと顔を輝かせ、窓の奥に駆け込んでいった。小生は馬を降りて、乱れた前髪と呼吸を整える。まもなく扉が開いて、アリオトが出てきた。扉の前で見送るメイドさんに手を振ってから、こちらに向かって駆けてくる。
なんだろう。もう小生の頭がおかしい。心臓の打ち方が早くなると、人は時間感覚が狂うのだろうか。アリオトの動きが全て、スローモーションに見える。
「お待たせいたしました」
そう言うなり、アリオトは小生の馬の轡をとった。目を合わせてくれない。まるで小生ではなく、馬に挨拶したみたいに見える。小生はきょとんとしてアリオトの横顔を見つめた。
「どうぞ……お乗りください」
アリオトは俯いたまま馬の口をとらえている。どうやら、小生が乗る馬を引いていくつもりらしい。
考えてみれば、それは当然の振る舞いだった。確かに小姓の役目はそうしたものだ。だが、小生はアリオトを一緒に馬に乗せていくつもりだった。無意識にまだ、アリオトを女の子扱いしていたのかもしれない。
「いや……一緒に乗ろうと思ってたんだけど」
「えっ?」
「嫌かな?」
僕が尋ねると、アリオトはようやく僕を見てくれた。
「いえ、その、どうすれば良いのか、よくわかっていなくて……」
可愛い。頭の中がその一言で埋め尽くされる。なんて初々しいんだろう。宮廷のマナーを学びに来ているのだから、本当なら歩かせるべきなのだけど。
「一緒に乗って」
何も知らないアリオトは素直にうなずいてくれた。誰もいないのを良いことに、小生はアリオトを抱え上げて馬に乗せてやった。自分もその後ろから馬にまたがり、アリオトの体を抱きよせる。懐かしいスズランの匂い。
「ここにつかまって」
手綱を握らせ、その上から自分の手を重ねる。断じてセクハラではない。アリオトが馬から落ちたら大変だからだ。
「大丈夫?」
耳元にささやくと、アリオトは小さく頷いた。小生は手綱をとり、貴賓館とは真逆の方向に馬の鼻を向ける。ゆっくりと馬を歩かせていると、アリオトはようやく辺りの様子を見回して、小生の顔を不思議そうに振り返った。
「どちらに向かわれるのですか?」
「少し遠回りしましょう。まだ約束の時間には早いから」
アリオトは少し困惑したようだったが、小生と目が合うと、微かにほほえんだ。鼓動が早くなったことに気付かれないよう、小生は馬の脚を早めた。風をきり、上下にはずみながら、裏庭に向かう。初めて出会った日に、一緒に夜風に当たったバルコニーや、噴水をめぐり、柳の湖に面したあずまやに向かう。
「あずまやに行くのですか?」
アリオトが振り返った。至近距離で見るアリオトの顔と可愛い声にうっとりしながら小生は答えた。
「そうだよ。あそこなら、誰も来ないから……」
そう言ってから、ハッとする。誰も来ないから、なんだと言うのか。下心があるように取られはしなかっただろうか。
「別に、人目を避ける必要もないのだけど……その、落ち着くからって言う意味で……」
時間を潰すのによく使うのだとか、なんとか、いらない言い訳を随分としているうちに湖に着いた。馬を降りて、あずまやに入った。隣に座るように促したつもりなのだが、アリオトは向かいのベンチに座った。言葉もなく、二人で湖を眺める。
「良い場所だね……じゃない、良い場所ですね」
「敬語はやめてよ」
小生は笑ってしまった。昨日までは平気でタメ口だったのに、今日は何故か敬語で、妙によそよそしいのが気になっていた。
「今までと同じで良いんだよ」
「でも、皇女様の前でタメ口が出ちゃったらまずいでしょう?」
これから皇女様に会うと言うことで、緊張しているらしい。無理もなかった。
「今日は、突然引っ張り出してすまなかったね……皇女様が貴方にぜひ会ってみたいと言うものだから」
「何か理由がおありなんでしょうか?」
なぜなら彼女が無類の美童好きだから。などと、面と向かって言えるはずもなく。
「それはその……子供好きでいらっしゃるらしくて……」
「子供?!」
アリオトはびっくりしたように目を大きく見開いた。小生が言葉に詰まっていると、彼はその可愛い唇を尖らせた。
「子供がいたら、お二人のお邪魔なのではないですか?」
アリオトは腕組みして、少し怒ったように言う。
「えっ、いや、そんなことないよ……」
小生は思わず腰を上げて、アリオトの隣に移動した。アリオトは反対に、湖の方を向いてしまった。子供と言われたことに対して怒っているのか。それだけではないような気がした。アリオトが、小生と皇女の間にヤキモチを焼いてくれているように感じてしまう小生は、やはりどこか倒錯しているのだろうか。
「ごめん。皇女様がご所望なのは事実だけど、君を連れ出したのはそれだけが理由じゃないよ」
アリオトの髪にそっと触れた。アリオトはぴくっと震えて、目を伏せた。指の先で耳にふれ、あごのラインをなぞり、こちらに顔を向けさせる。自然に、健全に。小生は自分に言い聞かせて手を離した。だが、潤んだ瞳で見つめられれば、そんな標語は頭から消えてしまう。
「僕が君に会いたかったんだ」
気付けば、本音を口にしていた。
ジュンにはアリオトを待たせておくように頼んだ。僕が迎えに行く。束の間でもいいから、二人きりの時間が持ちたかったのだ。
皇女のためにお連れするという名目で、今日はアリオトと一緒にいることができる。内心、嬉しくて仕方がない。皇女が何をする気か若干心配だが、アリオトが嫌がるようなことは絶対させないつもりだ。
城代たちとのミーティング中も、この後のことで頭がいっぱいだった。
僕らは男同士。もはや恋愛対象として見ているわけでも、花嫁候補として見ているわけでもない。ただの主従として、友人として、距離を縮めたいだけだ。少女としての第一印象を塗り替えられるくらい、少年であるアリオトの素の姿に触れたい。
アリオトがジュンの親戚だったとは驚きだった。乳母からは親戚にそんな子供がいるなど聞いたこともなかった。遠い親戚らしいが、ジュンやトーマの家系ならあの美貌にも頷ける。
とにかく、ジュンの小姓ということだから丁重に扱おう。自然な主従関係を育もう。彼が今後も小姓として王宮でやっていくというなら、それが一番な健全な道だろう。今日はその第一歩になる。自然に、健全に。今日はこれを心の標語として掲げよう。
城代たちとのミーティングを終え、小生は会議の間を後にした。小生が何も口を挟まなければ、ミーティングはかくも速やかに終わるものなのか。
「よし、次は貴賓館訪問だな」
「はっ!」
廊下を進む小生の後を、執事は息を切らしながらついてくる。
「お待ちください。そんなに急がれては……」
「もー、なんでそんなに遅いの。大丈夫か?」
「老人を少しはいたわってくださいませ」
執事を待つため立ち止まって、ふと視界に入った中庭。こんなにも、世界が美しいなんて。憂い顔の天使の石像さえ、柔らかな早春の光に羽ばたいていきそうに見える。散歩日和だ。アリオトと庭を遠回りしながら貴賓館へ向かうつもりだった。少しでも早く迎えに行きたい。
「こっちの方が近いな」
「あ、お待ちください!そちらには今……!」
西の棟に向かう廊下を曲がり、会議室の前を通りかかると、対面からぞろぞろと大臣や有力商人たちがやって来た。
「げっ?!」
「商工ギルドの会議は欠席の手配をしましたので、西の廊下はお通りにならないようにと申し上げたではございませんか」
追いついてきた執事が、懐中時計を見る。ドタキャンした会議のメンバーと鉢合わせは流石に気まずい。引き返そうとする小生の袖を、執事は老人とは思えない強さでとらえて、すましている。
「あからさまに避けては、ますます覚えが悪くなります」
「ますます、ね……だがいちいち皆の機嫌を取る筋合いはないだろ」
「いいえ、上に立つ者の勤めにございます」
堅苦しいしきたりだらけで、廊下も自由に歩けない。
「これはこれは領主様……!本日はご機嫌麗しく……!」
大臣やその取り巻きたちから、いちいち慇懃な社交辞令を受けたせいで、時間をかなりロスしてしまった。
「……今、何時だろう」
「まだ時間にはかなり余裕がございます」
「急ごう」
小生は廊下を小走りに駆け出した。
「領主様! 廊下を走るとは何事です!」
執事は慌てて追いかけてくる。
*************
支度を整え、厩舎に向かう。いいというのに執事がずっとついてくる。厩舎の前にはすでに小生の白馬と、栗毛の馬に鞍が置かれていた。
「この馬は?」
「侍従にお供させます」
「一人で良いと言っているだろう」
「そうは参りません。王子の身に何かあっては困ります。……おい、トーマはまだ来ておらんのか」
「うっわ、しかもなんでトーマ。彼は父上の侍従だろ?」
「王直々の差配でございます」
厩舎長は、トーマは一度やって来たものの、またどこかにふらりと出ていってしまったと言う。執事は苦々しげにため息をつく。
「やれやれ、申し訳ありません」
「構わないさ。トーマが戻ったら、僕は先に行ったと伝えてくれ」
小生はそそくさと馬にまたがりながら、執事と厩舎長に声をかける。
「貴賓館で待っているように言っておいて」
執事の返事も聞かずに、小生は馬を走らせた。
**********************
敷地内なのだから、徒歩でも良いくらいなのだ。数分もかからず、ジュンの館の前に着いた。見上げると、2階のバルコニーにアリオトの姿があった。
小生は手を振った。頬杖をついていたアリオトは、小生に気付くとぱっと顔を輝かせ、窓の奥に駆け込んでいった。小生は馬を降りて、乱れた前髪と呼吸を整える。まもなく扉が開いて、アリオトが出てきた。扉の前で見送るメイドさんに手を振ってから、こちらに向かって駆けてくる。
なんだろう。もう小生の頭がおかしい。心臓の打ち方が早くなると、人は時間感覚が狂うのだろうか。アリオトの動きが全て、スローモーションに見える。
「お待たせいたしました」
そう言うなり、アリオトは小生の馬の轡をとった。目を合わせてくれない。まるで小生ではなく、馬に挨拶したみたいに見える。小生はきょとんとしてアリオトの横顔を見つめた。
「どうぞ……お乗りください」
アリオトは俯いたまま馬の口をとらえている。どうやら、小生が乗る馬を引いていくつもりらしい。
考えてみれば、それは当然の振る舞いだった。確かに小姓の役目はそうしたものだ。だが、小生はアリオトを一緒に馬に乗せていくつもりだった。無意識にまだ、アリオトを女の子扱いしていたのかもしれない。
「いや……一緒に乗ろうと思ってたんだけど」
「えっ?」
「嫌かな?」
僕が尋ねると、アリオトはようやく僕を見てくれた。
「いえ、その、どうすれば良いのか、よくわかっていなくて……」
可愛い。頭の中がその一言で埋め尽くされる。なんて初々しいんだろう。宮廷のマナーを学びに来ているのだから、本当なら歩かせるべきなのだけど。
「一緒に乗って」
何も知らないアリオトは素直にうなずいてくれた。誰もいないのを良いことに、小生はアリオトを抱え上げて馬に乗せてやった。自分もその後ろから馬にまたがり、アリオトの体を抱きよせる。懐かしいスズランの匂い。
「ここにつかまって」
手綱を握らせ、その上から自分の手を重ねる。断じてセクハラではない。アリオトが馬から落ちたら大変だからだ。
「大丈夫?」
耳元にささやくと、アリオトは小さく頷いた。小生は手綱をとり、貴賓館とは真逆の方向に馬の鼻を向ける。ゆっくりと馬を歩かせていると、アリオトはようやく辺りの様子を見回して、小生の顔を不思議そうに振り返った。
「どちらに向かわれるのですか?」
「少し遠回りしましょう。まだ約束の時間には早いから」
アリオトは少し困惑したようだったが、小生と目が合うと、微かにほほえんだ。鼓動が早くなったことに気付かれないよう、小生は馬の脚を早めた。風をきり、上下にはずみながら、裏庭に向かう。初めて出会った日に、一緒に夜風に当たったバルコニーや、噴水をめぐり、柳の湖に面したあずまやに向かう。
「あずまやに行くのですか?」
アリオトが振り返った。至近距離で見るアリオトの顔と可愛い声にうっとりしながら小生は答えた。
「そうだよ。あそこなら、誰も来ないから……」
そう言ってから、ハッとする。誰も来ないから、なんだと言うのか。下心があるように取られはしなかっただろうか。
「別に、人目を避ける必要もないのだけど……その、落ち着くからって言う意味で……」
時間を潰すのによく使うのだとか、なんとか、いらない言い訳を随分としているうちに湖に着いた。馬を降りて、あずまやに入った。隣に座るように促したつもりなのだが、アリオトは向かいのベンチに座った。言葉もなく、二人で湖を眺める。
「良い場所だね……じゃない、良い場所ですね」
「敬語はやめてよ」
小生は笑ってしまった。昨日までは平気でタメ口だったのに、今日は何故か敬語で、妙によそよそしいのが気になっていた。
「今までと同じで良いんだよ」
「でも、皇女様の前でタメ口が出ちゃったらまずいでしょう?」
これから皇女様に会うと言うことで、緊張しているらしい。無理もなかった。
「今日は、突然引っ張り出してすまなかったね……皇女様が貴方にぜひ会ってみたいと言うものだから」
「何か理由がおありなんでしょうか?」
なぜなら彼女が無類の美童好きだから。などと、面と向かって言えるはずもなく。
「それはその……子供好きでいらっしゃるらしくて……」
「子供?!」
アリオトはびっくりしたように目を大きく見開いた。小生が言葉に詰まっていると、彼はその可愛い唇を尖らせた。
「子供がいたら、お二人のお邪魔なのではないですか?」
アリオトは腕組みして、少し怒ったように言う。
「えっ、いや、そんなことないよ……」
小生は思わず腰を上げて、アリオトの隣に移動した。アリオトは反対に、湖の方を向いてしまった。子供と言われたことに対して怒っているのか。それだけではないような気がした。アリオトが、小生と皇女の間にヤキモチを焼いてくれているように感じてしまう小生は、やはりどこか倒錯しているのだろうか。
「ごめん。皇女様がご所望なのは事実だけど、君を連れ出したのはそれだけが理由じゃないよ」
アリオトの髪にそっと触れた。アリオトはぴくっと震えて、目を伏せた。指の先で耳にふれ、あごのラインをなぞり、こちらに顔を向けさせる。自然に、健全に。小生は自分に言い聞かせて手を離した。だが、潤んだ瞳で見つめられれば、そんな標語は頭から消えてしまう。
「僕が君に会いたかったんだ」
気付けば、本音を口にしていた。
22
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~
兎森りんこ
BL
主人公のアユムは料理や家事が好きな、地味な平凡男子だ。
そんな彼が突然、半年前に異世界に転移した。
そこで出逢った美青年エイシオに助けられ、同居生活をしている。
あまりにモテすぎ、トラブルばかりで、人間不信になっていたエイシオ。
自分に自信が全く無くて、自己肯定感の低いアユム。
エイシオは優しいアユムの料理や家事に癒やされ、アユムもエイシオの包容力で癒やされる。
お互いがかけがえのない存在になっていくが……ある日、エイシオが怪我をして!?
無自覚両片思いのほっこりBL。
前半~当て馬女の出現
後半~もふもふ神を連れたおもしろ珍道中とエイシオの実家話
予想できないクスッと笑える、ほっこりBLです。
サンドイッチ、じゃがいも、トマト、コーヒーなんでもでてきますので許せる方のみお読みください。
アユム視点、エイシオ視点と、交互に視点が変わります。
完結保証!
このお話は、小説家になろう様、エブリスタ様でも掲載中です。
※表紙絵はミドリ/緑虫様(@cklEIJx82utuuqd)からのいただきものです。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる