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第六章 娘の捜索
3 交換条件(領主視点)
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3 交換条件 (領主視点)
夏の屋敷を後にする。未練を断ち切るように、馬を走らせる。直ちに城に戻り、娘の捜索を打ち切るように命じなくては。家臣達に言ってまわるよりも、王に直談判するのが早いだろう。
消えた娘の行方について、噂好きのトーマがジュンを疑っている。
今朝は取り繕ったものの、捜査が長引けば、彼だってじっとはしていないだろう。ジュンの後をつけないとも限らない。アリオトを守るためには、奴よりも先に動く必要があった。
***********
議事報告に目を通し、サインをした後、父の部屋へと向かう。予定の面会時間より少し早いがノックする。
「父上、参りました」
「お入り」
中から扉を開けて出迎えたのはトーマだった。
「これは領主様、お加減はもうよろしいので?」
さも心配そうに小生の顔を覗き込んでくるが、その唇の端には意味ありげな笑いをたたえている。
「ええ、もうすっかり」
小生は彼を軽くにらんでやる。
「一つどうだね」
父上は宝石のようなチョコレートの入った皿を差し出して小生に勧めた。小生はそれを断り、ソファに座る。
「父上、折入ってお話が」
「なんだね」
「親子水入らずで話がしたいのです……」
そう言いながら、小生はチラと周囲に目をやる。
「よかろう」
王が手を挙げると、執事や侍従たちは一礼して部屋を退がっていった。
「これ、トーマ。お前もだよ」
「えっ、私もですか? 王子のお悩みに関しては、このトーマが一番良く承知しておりますのに」
父上は笑って首を振った。トーマはつまらなそうに肩をすくめて出て行った。二人きりになると、小生は単刀直入に話を切り出した。
「父上、あのおふれは取り下げていただきたいのです」
「あのおふれ、とは?」
「消えた娘を見つけたものに褒美を与えるというものです」
父上は微笑したまま、何も言わない。
「逃げるものを王宮に引き止める必要はありません。私も、あの娘に執着などしておりません」
「本当に?」
父上はイタズラっぽく右の眉尻を上げた。
「だが父は執着しておるのだ」
「どうしてまた……」
「息子の運命の相手に違いないと思ったからだ」
ロマンチックすぎる父上の言葉に、小生は、ははっと笑ってソファの背にもたれる。
「何を根拠に……」
「あの娘といる時のお前の顔だ」
「……どんな顔ですか」
「お前は笑っておった。王宮に来て以来、初めて」
小生はにっこり微笑んだまま首を傾げて見せた。
「そんな作り笑いではなく、だ」
王は首をふった。
「少なくとも、父と母は、初めて見たのだよ……お前の瞳が、あんなに生き生きと輝くのを」
「小生は7年間、死んだ目で作り笑いをしていたとおっしゃるのですか。心外だな……」
父の言葉を混ぜっ返す息子に腹を立てる様子もなく、寛容な王はゆっくりと語る。
「星の数ほどの人がいる。だが、長く生きてきた私に言わせれば……」
小生が口を挟もうとするのを、父上は笑顔で制した。
「自分の心に息を吹き込んでくれる友というものは、滅多に現われないのだよ」
父上はそれだけいうと椅子に深くもたれた。
「父上にも、そんな人が?」
思わず問いかけてしまったのは、父上の目が小生を通り越して、誰かを追憶するような表情を浮かべていたからだ。
「いたとも」
過去形で父は頷いた。つまりそれは、母上のことではなさそうだった。
「だが私は、彼を、なんのためらいもなく手放してしまった」
「彼?」
「代わりなどいくらでもいると……忘れられると、その時は思っていた」
沈黙が降りる。気付けば、父上の言葉を待っている自分がいた。いかん、つい父上のペースに乗せられてしまう。
「話を戻しますが、小生はただあのお触れの取り消しを願っているだけです」
「何が気に食わないのだ」
「息子の元を去った娘に懸賞金をかけて捕まえようとする親がどこにいます」
「親バカだと言いたいのだな。だが、父はお前が私と同じ過ちをおかそうとしているのではないかと心配なのだ」
父上はチョコレートを摘んで、小生に再度すすめた。小生が首を振ると、やれやれと言いたげに笑って、自分の手に取ったそれを眺めた。
「自分の心を偽っても、それはいずれ人生の歪みとなって自分に返ってくるのだよ。人生は一度しかない。お前が自分の生を歩めなかったと悔やむことになるのは憐れだ」
小生は俯いて、父上の言葉を噛み締める。王はそれ以上何も言わなかった。
沈黙が続くので流石に顔を上げると、父上は目を閉じ、無心になって、口の中のチョコレートを味わっている。小生は思わず吹き出してしまった。
「甘いものがお好きですね」
「一日一個と決めておるのだ。ちゃんと味わわないとな」
王がチョコレートを堪能し終わるのを待って、小生は話を続けた。
「父上のお心はありがたく思います。ただ、消えた娘にも何か事情があるのでしょう。娘が今どんな思いをしているか。それを思うと気の毒でなりません」
「娘のために、捜査をやめろと申すのか」
小生はうなずいた。
「ならば極秘裏に身元だけでも突き止めて見てはどうだ。そうでなければ、前に進めまい」
「……身元なら、先ほどこの目で確かめてまいりました」
「まことか」
正確にいえば、本当の名前以外は何も知らない。だが、小生はうなずいた。彼は将来のあるいたいけな少年。それ以上の事実はなかった。
「その上での、お願いなのです」
あの少年にとって、領主からの倒錯した愛など迷惑に違いない。
「結婚を急ぐことはない。身元がわかったのなら、王宮の侍女か女官として取り立てて、そばに置いておけば良い」
「その必要もありません」
本当は、彼が欲しくてたまらない。王がいうように、全てを暴き、朝な夕な、そばで見守っていたい。同性であることを知ってもなお。
だが、この激しい想いはきっと、今だけのこと。長い目で見れば……彼の人生や国の行末を思えば、一時の感情に溺れるべきではないことは明らかだった。
「そのようなことは、誰の幸せにもなりません」
「なぜそんなことが分かる。それは神のお考えになること。お前はお前の気持ちに従って歩めばよいのだ」
「権力を持つ身である以上、それは難しゅうございます」
父上には、それができたのかもしれない。だって、一粒のチョコレートを子供のように無垢な心で堪能できるお人なのだ。初恋は叶わなかったにせよ、その思いは純粋で幸せなものだったにちがいない。
しかし今、小生が年下の少年に対して抱いている気持ちは、純粋な友情だけではないのだ。この醜くて邪な欲望に従うことを、神が許したもうはずはなかった。
どうすればこの劣情を秘したまま王を説得し、アリオトを自由にしてやれるのか。
「今夜の晩餐会には……東の国の第二皇女様がお見えですね」
「そのようだな」
小生は、切り口を変えることにした。
「小生も、官僚たちの考えには賛成なのです」
「考えというと?」
「結婚相手には第二皇女様をお迎えし、東の国との関係を盤石にすることが、一番の国益になるということです」
「何を愚かな……」
父上は天を仰いだ。
「そのようなことを王であるわしは望まぬぞ。第一、皇女様のお気持ちもあろう」
「今夜の晩餐会で、お気持ちは確かめて参ります」
小生は身を乗り出した。
「一晩で名前も告げずに消えてしまうような娘に未練はございません。小生は、生涯をともにできる伴侶を探したいのです」
父上は、教会学校のお説教に飽きたいたずらっ子のような顔で、小生の話を聞いている。だが小生はめげない。
「あのような娘を探す御触れが出ていては、小生から皇女様への真心が伝わりません。ですからどうか、御触れだけは至急取り下げていただきたい。東の国の皇女様に不愉快な思いをさせるあのおふれが、両国の平和の妨げになってはいけません」
父上は腕組みをしてしまった。小生は最後の切り札を出す。
「母上を安心させてあげたいのです」
父上の目がうっすらと開いた。父上の弱点は母上なのだ。王の母上に対する溺愛ぶりは、宮廷中の誰もが側で見ていて呆れるほどだった。
「なんでも母上は、昨夜からお元気がないとか」
これは執事からの情報である。昨夜から何か思い悩むような様子を見せているらしい。
「私も自分のことばかりで、母上のご心労にまで思い至らず。舞踏会ではご心配をかけてしまいました。その埋め合わせのためにも、今夜の晩餐会ではきちんと領主としての勤めを果たす所存です」
孝行息子になりきっている自分がいた。言いながら、それがあたかも自分の本心のように思えてくるから不思議だ。たった今考えた理屈なのに。
「全ては母上のためです、父上」
父上はソファに凭れていた体をゆっくりと起こし、姿勢を正した。
「口が達者だな、ケイト」
やれやれとため息をつき、長い眉毛の下から、小生の顔をじっと見つめてくる。
「一晩でお前に何があったのだ。舞踏会をすっぽかそうとした王子の言葉とは思えん」
目を逸らしたくなるのを必死で堪えた。見透かされてはだめだ。アリオトを自由にしてやるためには、この手しか残っていないのだから。
「お前は聡明な男だ。だが、本当の智者にとって肝心なのは、自分というものを分かっているかどうかだ」
「分かっております」
「……分かっていないと思うな」
父上は拗ねたように顔をしかめた。無邪気な表情だけ見れば子どものようだが、その実、小生の心を見抜いているような気もした。
「まあ良い。お前がそこまでいうのなら、あのおふれは取り下げてやろう」
父上がベルを鳴らすと、執事長がやって来た。父は手短に、娘の捜査を打ち切りにせよと命じた。これでアリオトは、晴れて自由の身となった。
「これで良いな?」
父上は小生に、肩をすくめてみせた。
「かたじけのうございます」
小生は深々と礼をすると、王の部屋を辞した。
これで、よかったのだ。
夏の屋敷を後にする。未練を断ち切るように、馬を走らせる。直ちに城に戻り、娘の捜索を打ち切るように命じなくては。家臣達に言ってまわるよりも、王に直談判するのが早いだろう。
消えた娘の行方について、噂好きのトーマがジュンを疑っている。
今朝は取り繕ったものの、捜査が長引けば、彼だってじっとはしていないだろう。ジュンの後をつけないとも限らない。アリオトを守るためには、奴よりも先に動く必要があった。
***********
議事報告に目を通し、サインをした後、父の部屋へと向かう。予定の面会時間より少し早いがノックする。
「父上、参りました」
「お入り」
中から扉を開けて出迎えたのはトーマだった。
「これは領主様、お加減はもうよろしいので?」
さも心配そうに小生の顔を覗き込んでくるが、その唇の端には意味ありげな笑いをたたえている。
「ええ、もうすっかり」
小生は彼を軽くにらんでやる。
「一つどうだね」
父上は宝石のようなチョコレートの入った皿を差し出して小生に勧めた。小生はそれを断り、ソファに座る。
「父上、折入ってお話が」
「なんだね」
「親子水入らずで話がしたいのです……」
そう言いながら、小生はチラと周囲に目をやる。
「よかろう」
王が手を挙げると、執事や侍従たちは一礼して部屋を退がっていった。
「これ、トーマ。お前もだよ」
「えっ、私もですか? 王子のお悩みに関しては、このトーマが一番良く承知しておりますのに」
父上は笑って首を振った。トーマはつまらなそうに肩をすくめて出て行った。二人きりになると、小生は単刀直入に話を切り出した。
「父上、あのおふれは取り下げていただきたいのです」
「あのおふれ、とは?」
「消えた娘を見つけたものに褒美を与えるというものです」
父上は微笑したまま、何も言わない。
「逃げるものを王宮に引き止める必要はありません。私も、あの娘に執着などしておりません」
「本当に?」
父上はイタズラっぽく右の眉尻を上げた。
「だが父は執着しておるのだ」
「どうしてまた……」
「息子の運命の相手に違いないと思ったからだ」
ロマンチックすぎる父上の言葉に、小生は、ははっと笑ってソファの背にもたれる。
「何を根拠に……」
「あの娘といる時のお前の顔だ」
「……どんな顔ですか」
「お前は笑っておった。王宮に来て以来、初めて」
小生はにっこり微笑んだまま首を傾げて見せた。
「そんな作り笑いではなく、だ」
王は首をふった。
「少なくとも、父と母は、初めて見たのだよ……お前の瞳が、あんなに生き生きと輝くのを」
「小生は7年間、死んだ目で作り笑いをしていたとおっしゃるのですか。心外だな……」
父の言葉を混ぜっ返す息子に腹を立てる様子もなく、寛容な王はゆっくりと語る。
「星の数ほどの人がいる。だが、長く生きてきた私に言わせれば……」
小生が口を挟もうとするのを、父上は笑顔で制した。
「自分の心に息を吹き込んでくれる友というものは、滅多に現われないのだよ」
父上はそれだけいうと椅子に深くもたれた。
「父上にも、そんな人が?」
思わず問いかけてしまったのは、父上の目が小生を通り越して、誰かを追憶するような表情を浮かべていたからだ。
「いたとも」
過去形で父は頷いた。つまりそれは、母上のことではなさそうだった。
「だが私は、彼を、なんのためらいもなく手放してしまった」
「彼?」
「代わりなどいくらでもいると……忘れられると、その時は思っていた」
沈黙が降りる。気付けば、父上の言葉を待っている自分がいた。いかん、つい父上のペースに乗せられてしまう。
「話を戻しますが、小生はただあのお触れの取り消しを願っているだけです」
「何が気に食わないのだ」
「息子の元を去った娘に懸賞金をかけて捕まえようとする親がどこにいます」
「親バカだと言いたいのだな。だが、父はお前が私と同じ過ちをおかそうとしているのではないかと心配なのだ」
父上はチョコレートを摘んで、小生に再度すすめた。小生が首を振ると、やれやれと言いたげに笑って、自分の手に取ったそれを眺めた。
「自分の心を偽っても、それはいずれ人生の歪みとなって自分に返ってくるのだよ。人生は一度しかない。お前が自分の生を歩めなかったと悔やむことになるのは憐れだ」
小生は俯いて、父上の言葉を噛み締める。王はそれ以上何も言わなかった。
沈黙が続くので流石に顔を上げると、父上は目を閉じ、無心になって、口の中のチョコレートを味わっている。小生は思わず吹き出してしまった。
「甘いものがお好きですね」
「一日一個と決めておるのだ。ちゃんと味わわないとな」
王がチョコレートを堪能し終わるのを待って、小生は話を続けた。
「父上のお心はありがたく思います。ただ、消えた娘にも何か事情があるのでしょう。娘が今どんな思いをしているか。それを思うと気の毒でなりません」
「娘のために、捜査をやめろと申すのか」
小生はうなずいた。
「ならば極秘裏に身元だけでも突き止めて見てはどうだ。そうでなければ、前に進めまい」
「……身元なら、先ほどこの目で確かめてまいりました」
「まことか」
正確にいえば、本当の名前以外は何も知らない。だが、小生はうなずいた。彼は将来のあるいたいけな少年。それ以上の事実はなかった。
「その上での、お願いなのです」
あの少年にとって、領主からの倒錯した愛など迷惑に違いない。
「結婚を急ぐことはない。身元がわかったのなら、王宮の侍女か女官として取り立てて、そばに置いておけば良い」
「その必要もありません」
本当は、彼が欲しくてたまらない。王がいうように、全てを暴き、朝な夕な、そばで見守っていたい。同性であることを知ってもなお。
だが、この激しい想いはきっと、今だけのこと。長い目で見れば……彼の人生や国の行末を思えば、一時の感情に溺れるべきではないことは明らかだった。
「そのようなことは、誰の幸せにもなりません」
「なぜそんなことが分かる。それは神のお考えになること。お前はお前の気持ちに従って歩めばよいのだ」
「権力を持つ身である以上、それは難しゅうございます」
父上には、それができたのかもしれない。だって、一粒のチョコレートを子供のように無垢な心で堪能できるお人なのだ。初恋は叶わなかったにせよ、その思いは純粋で幸せなものだったにちがいない。
しかし今、小生が年下の少年に対して抱いている気持ちは、純粋な友情だけではないのだ。この醜くて邪な欲望に従うことを、神が許したもうはずはなかった。
どうすればこの劣情を秘したまま王を説得し、アリオトを自由にしてやれるのか。
「今夜の晩餐会には……東の国の第二皇女様がお見えですね」
「そのようだな」
小生は、切り口を変えることにした。
「小生も、官僚たちの考えには賛成なのです」
「考えというと?」
「結婚相手には第二皇女様をお迎えし、東の国との関係を盤石にすることが、一番の国益になるということです」
「何を愚かな……」
父上は天を仰いだ。
「そのようなことを王であるわしは望まぬぞ。第一、皇女様のお気持ちもあろう」
「今夜の晩餐会で、お気持ちは確かめて参ります」
小生は身を乗り出した。
「一晩で名前も告げずに消えてしまうような娘に未練はございません。小生は、生涯をともにできる伴侶を探したいのです」
父上は、教会学校のお説教に飽きたいたずらっ子のような顔で、小生の話を聞いている。だが小生はめげない。
「あのような娘を探す御触れが出ていては、小生から皇女様への真心が伝わりません。ですからどうか、御触れだけは至急取り下げていただきたい。東の国の皇女様に不愉快な思いをさせるあのおふれが、両国の平和の妨げになってはいけません」
父上は腕組みをしてしまった。小生は最後の切り札を出す。
「母上を安心させてあげたいのです」
父上の目がうっすらと開いた。父上の弱点は母上なのだ。王の母上に対する溺愛ぶりは、宮廷中の誰もが側で見ていて呆れるほどだった。
「なんでも母上は、昨夜からお元気がないとか」
これは執事からの情報である。昨夜から何か思い悩むような様子を見せているらしい。
「私も自分のことばかりで、母上のご心労にまで思い至らず。舞踏会ではご心配をかけてしまいました。その埋め合わせのためにも、今夜の晩餐会ではきちんと領主としての勤めを果たす所存です」
孝行息子になりきっている自分がいた。言いながら、それがあたかも自分の本心のように思えてくるから不思議だ。たった今考えた理屈なのに。
「全ては母上のためです、父上」
父上はソファに凭れていた体をゆっくりと起こし、姿勢を正した。
「口が達者だな、ケイト」
やれやれとため息をつき、長い眉毛の下から、小生の顔をじっと見つめてくる。
「一晩でお前に何があったのだ。舞踏会をすっぽかそうとした王子の言葉とは思えん」
目を逸らしたくなるのを必死で堪えた。見透かされてはだめだ。アリオトを自由にしてやるためには、この手しか残っていないのだから。
「お前は聡明な男だ。だが、本当の智者にとって肝心なのは、自分というものを分かっているかどうかだ」
「分かっております」
「……分かっていないと思うな」
父上は拗ねたように顔をしかめた。無邪気な表情だけ見れば子どものようだが、その実、小生の心を見抜いているような気もした。
「まあ良い。お前がそこまでいうのなら、あのおふれは取り下げてやろう」
父上がベルを鳴らすと、執事長がやって来た。父は手短に、娘の捜査を打ち切りにせよと命じた。これでアリオトは、晴れて自由の身となった。
「これで良いな?」
父上は小生に、肩をすくめてみせた。
「かたじけのうございます」
小生は深々と礼をすると、王の部屋を辞した。
これで、よかったのだ。
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