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第2章 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【○○始めました……!?】
第99話 スパイスを求めて
しおりを挟む「うう~む! ハッカクと山椒はさすがにゲット出来んなぁ。」
作るメニューの方針がある程度定まったところで、食材を揃えるためにメルカドと呼ばれる市場へタニシ、メイちゃんと共に出向いていた。肝心の“パン”に相当する部分の食材は揃ったが、懸念していたスパイスが手に入らない!
「それがどういう物かは知りませんけど、代用できる品物はないんでしょうか?」
「代用品ねぇ……? まあ、胡椒とかハーブで似たような効果は狙えるとは思うが、別物になりそうなんだよなぁ。」
「そんな変わるモンなんでヤンしゅかねぇ?」
ピリッとした辛さは似ているとはいえ、香りとか風味に違いがある。そうなると他が同じでも味が別物、食べたときの印象に違いが出てしまう。それはそれでいいのかもしれないが、それだと味に斬新さを感じられない。狙った効果を発揮することが出来そうにない。
「お客さん、お困りみたいアルね。」
「うわっ!? いきなり誰?」
「誰でヤンしゅか?」
食材が手に入らず困り果てていると、突然、誰かから声をかけられた。でも振り向いても見回してみても誰もいない。おかしいな?
「見下~げて~ごらん~!」
「えっ? って、うわあっ!?」
指示通り見下げてみたら、何かちっちゃいオッサンがいた! タニシより小さくない? しかもなんか、俺の故国の服装のどじょう髭のオッサンがそこにいた!
「アンタ、誰?」
「ワタシ、ミスター珍、言う者アルよ!」
「なんてベタな……。」
見るからに怪しい商人のオッサン。しかも名前がミスター珍! 割とありがちな怪しい人のスタイルで現れた! 大体、俺の故国ではこんな感じのオッサンが非合法なヤベー物を売るような怪しい商売をしているものである。加えて向こうの訛りでコッチの言葉を話しているので怪しさが二倍増し、いや、十倍増しになっている!
「アナタ、ハッカク、サンショウいると話していたネ?」
「まあそうだけど?」
「欲しいアルか?」
やはりそうきたか。まあ、あながち東洋人なのは間違いなさそうだし、見に行ってやるか。
「あるんならな。」
「では、付いてくるヨロシ。」
「えっ!? 付いていくんですか、勇者さん?」
「行くよ。とりあえずな。ウソだったり、ボッタクリだったりしたらシメればいいし。」
「そういう問題では……。」
戦力的には問題ない。しかも今は見た目が女の子になっているので、相手もなめてかかっているに違いない。そうやって油断して襲いかかってきたら、返り討ちにしてやろう。たかが裏社会とはいえ、相手は人間である。魔族・魔獣に比べればかわいいもんだ。
「ここがワタシの店アルよ。中に入るヨロシ!」
「見るからに怪しさが全開でヤンしゅ!」
路地裏に案内されてしばらく歩いて行くと、目的地へ辿り着いた。店先には風水の護符とか、壺とか木彫りの英雄像とか、東洋人にしか正体がわからなそうな物がいっぱい並んでいた。ウン。たしかに怪しいがなんか懐かしさを感じる。こういう店を都でよく見かけたよなぁ。
「嗅いだことのない怪しい匂いが充満してるでヤンしゅう!?」
「ええ? いい匂いだろ? こういうのがいいんだよ。」
中にはお香の匂いが立ちこめていた。懐い!過去の偉人を奉った廟とかを思い出すな。とかなんとか懐かしさに耽っていると、ミスター珍が色々出してきた。
「ハッカク、サンショウもいいアルけど、コレとかどうネ?」
「きゃあああっ!? む、虫!?」
珍は俺が求めていた物以外の食材まで出してきた。その中にはサソリとかのゲテモノの類が含まれていた。確かにうちら以外の国では絶対食べないような物ばっかりだろう。あっちでは割と何でもかんでも食材にしたり薬にしたりしてるからな。医食同源とは良くいったものだ。
「な、な、な、何かのお手々があるでヤンしゅう!? こ、こ、こ、コレも食べるんでヤンしゅかぁ?」
「あー、それは熊の手だな。煮込むとウマいんだぞ。高級食材だけどな。」
「く、く、クマしゃぁぁぁん!? お手々取られて食べられるでヤンしゅう!?」
「ちなみに向こうでは“犬”も食材になることがあるんだぜ?」
「しょ、しょぎゃわーーーーん!? ……キュウ!?」
タニシは卒倒した。やりすぎたか。マイナーだけどそういうのがあるって聞いたことあるから、つい口がスベってしまった。さすがに犬は食べたことないけど。
「勇者さん、も、も、も、もしかして、こういうのを使おうとしてるんですかぁ?」
「いや、さすがにそんなことはしないから! やったら、イベント会場が阿鼻叫喚の地獄絵図と化してしまう!」
そんなことしたら、色んな所から出禁にされてしまうだろう。しかも、男に戻してもらえず、額冠も没収されてしまいかねない。まあ、ちょっとしたイタズラ目的で何個か買っておいてもいいかもな。あの食いしん坊将軍に一泡吹かせてやるのも一興かもしれん。
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