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第2章 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【○○始めました……!?】
第98話 残飯! いや、残パン!?
しおりを挟む「ちくしょう! やられた! あんなウマそうなもん作られたら、歯が立たんわ!」
朝の食堂でゲリラ的に行われたアイリ陣営のパン試食会。その結果は言うまでもなく大盛況に終わった。おまけにその味はうちの陣営までをも虜にし、パスタパンの存在はなかったことのように扱われた。
「大丈夫ですよ。まだ時間はあります。勇者さんならきっと凄い物が作れますって!」
「ちょっと自信なくなった。俺にはあんなオシャンティな物作れないよ。勝つんだったらアレを超えないといけないし……。」
まああれだけここで人気が出るということは女子にバカウケであるのは間違いない代物ということだ! 見た目もおいしそうでしかも、食べるだけでおしゃれな代物が、俺のおジャンク思想で作られた低俗な物程度で勝てるはずがないのだ。
「プリメーラさんも昨日、あれだけ褒めてたんじゃないですか? それが今日のアイリさんの方が凄いって、あくまで冗談で言ってるんですよね?」
「冗談? 別に冗談じゃないよ。エッグ・ベネフィクトの方が遙かに凄かったのは本当だよ。ロアンヌのなんか、それに比べたらただの残飯! いや、パンだけに残パンだよ!」
プリメーラもしれっと名前を間違えている。やっぱ聞き馴染みのない言葉は覚えにくいよな。それがアレの唯一の弱点である!
「しょぎゃわーん!?」
「最近、あっしの芸がアニキに奪われつつあるでヤンス! あっ、今はアニキじゃなくてアネキだったでヤンス!」
残、パンだとぉ! ウマいこと言いやがって、俺の気持ちも知らないで! ちくしょう、このままではダメだ! アレのアレンジ程度では勝てそうもない! 根本から考え直さねば。
「あれ? その本は? 随分と大きな本ですね?」
「勇者養成ギプスもとい、“サヨちゃんのグルメ事典”だ。」
「ハンバーグ対決のとき以来の登場でヤンスね!」
「あの方ってお料理の事に関して幅広い知識を持っていられるんですね。凄い!」
「不本意だがコレの力を借りねばなるまい!」
旅のお荷物としてはデカすぎ、そして何よりも重たい代物ではあるが、古今東西、料理・食べ物の情報に関してはコレを見れば間違いない。パラパラッとめくって調べてみると、当然のようにエッグなんとやらに関してもちゃんと記述されているのが確認できた。俺は知らなかったのにサヨちゃんはとうの昔に知っていたようである。恐ろしい子!
「ああ……当然の様にパンの発明・歴史についても詳しく書かれているな。いちいち読むのも面倒くさいが、今一度パンの定義についても考えてみようじゃないか。」
「なんか脱法的な手段を模索している様な気がするでヤンしゅ!」
「脱法? 聞き分けの悪いことを言わないでくれ給え! あくまでも私は新天地を開拓しようと思っているのだよ!」
「あくまでも変則的な物で勝負しようとしてるんですね。」
「そ、そうとも言う!」
まあ、パンとはいえど多種多様な物がある。生地を捏ねて寝かせて膨らませた後に焼く物とか、そのまま焼いたりする物など、形状も色々あるのだ。穀物の粉に水分を加えて練った物であれば大体パンとして成立すると考えることにした。この範囲で自由に発想していけばいいが……。
「ん? 前回はハンバーグでこの本を使ったが……、」
「パスタの代わりにハンバーグを挟んだりとかするんでヤンスか? そんなの絶対においしいいに決まってるでヤンス!」
「ダメだな。ウマイかもしれんが、割とこの辺の地域ではありきたりな発想だ。もっとこう、インパクトのあるメニューにしないと!」
「インパクト? それだったら、この前、牧場で作ってくれた“ギョウザ”とかいうのがイチバンでヤンス!」
「アレ、おいしかったよね。私も好き。」
「な、何よ? なんかおいしそうな食べ物の話してる? 私も食べたい!」
「ギョウザか……?」
この前の休暇中に披露した我が故郷で一般的な料理だ。一部の調味料は手に入らなかったが大体向こうと同じ食材は調達出来たので作ってみたのだ。これが以外と好評でタニシやメイちゃん、ピエール君まで味の虜にしてしまった。おかげで二回も作ることになったが、割と向こうの味も受け入れられるという事が良くわかった。
「待てよ? アレは無理でも俺の故郷の料理で一発逆転を狙うというのもアリかもしれんな。」
「まだ、なんかとっておきのヤツがあるんでヤンしゅか?」
「今パッと思いついただけでも、割とパンに近い作り方のヤツが何個かあるな。しかも、具入りのヤツもあるから、味もインパクトもエッグなんとやらに負けず劣らずだ!」
「まだそんなんがあるんでヤンしゅかぁ!?」
問題は食材だ。完全に再現するには向こうにしかない食材で作るしかないが、代用品でアレンジして違和感なく且つおいしいのを厳選しなくてはならない。さて、何を作ろうかな?
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