97 / 194
第2章 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【○○始めました……!?】
第96話 食いしん坊将軍!
しおりを挟む「なるほど、聖歌隊といえばパンっていうのはこういうところからも来ているのか。」
翌日の朝、宿舎の食堂へ朝食を摂りに来ていた。俺は朝っぱらからその景色に圧巻されていたのである。何しろ、様々な種類のパンが並べられており、その中から選び放題、食べ放題なルールになっている。
「食べ放題だけど、体型の維持とかの理由もあるから、実質制限はしないと大変な事になるんだろうな。全部自己責任てことだな。」
「目移りしちゃいますけど、こういう誘惑に負けないようにする訓練も兼ねてるのかもしれませんね。」
今はメイちゃんと共にこの場所に来ている。寝泊まりする私室はユニットのメンバー毎で共有するかたちになっている。でも、元々が男な俺にとっては、随分と肩身の狭い居心地の悪い空間だった。色々見るな、近寄るなのオンパレード! こんな思いをするんだったらタニシと同じ部屋にして欲しかった。プリメーラ? アイツは朝起きたらいつの間にか姿が見えなくなっていたのでそのままメイちゃんと二人で来た。
「番が回ってきましたよ。」
「ようやくか! 結構、時間がかかるな。腹が減ってしょうがないや。」
訪れた時には長蛇の列! 聖歌隊ってこんなに人がいるのかっていうくらいの人数が殺到している。こんなに待たされるなら、空いている時間に来るか? いや、そんなだとお目当てのパンにありつけない可能性もある。悩ましいところだ。今の場合はとりあえずなくなっているパンはないので、全種類の中から選ぶことが出来る。待たされた甲斐はあったかもしれない。
「結構、朝から食べるんですね?」
「ああ、なるべく種類を知っておきたいしね。今度のパン対決のためにパンって物を理解しておきたいから。」
「勉強熱心ですねぇ。」
メイちゃんを始めとして大抵の子は一種類しか選んでいないというのに、俺は三種類ほど選んだ。なんかスライスされた四角いヤツと丸いヤツとか、螺旋状に巻かれた形状のヤツを選んでみた。スタンダードな物から奇抜な物を幅広く選択してみた。
「あっちで色々、トッピングとかスープ、飲み物をもらうことも出来るみたいですね。」
「なるほど。パン以外のメニューも充実しているようだな。」
どうやらパンに塗るって味付けする物、バターとか蜂蜜、ジャムなどが揃っていた。好みに合わせて色んな味付けで食べることが出来るようだ。後はスープ、これもパンを浸したりして食べるので、組み合わせなども考慮に入れておきたいところだ。パンに別の物を組み合わせてはいけないというルールはなかったはずなので、合わせ技みたいなのも有りだと思う。
「空いている席は……、あっ!?」
「ん? どうした?」
メイちゃんが空いている席を探していたときに、何かを見つけてしまったようだ。起きたときには姿を消していた、アイツがそこにいたのだ!
「もぐっ! はむっ!」
プリメーラが一心不乱にパンを黙々と食べていた。テーブルを見ると、すでに半分食べた形跡が見られた。とても一人分とは思えないほどの量のパンが盛られていたことを示すように、持ち運び用のトレーには不自然なスペースが空いていた。山が半分崩されたような感じになっている。
「おいっ! 食いしん坊将軍!」
「はひっ!? な、何よ! 人を失礼な呼び方するんじゃないわよ!」
「お前には協調性という物がないのか? 初日くらい一緒に食べに来るくらいのことはするべきだろ?」
「うるひゃい! アンタ達が中々起きないから、我慢できずに食べに来たのっ!」
同じユニットに配属されたんだから、お互いのことを知るために食事をしながらでも語り合った方がいいと思ったんだが……。コイツときたら、そんな物より食欲を優先させたようだ。コイツの食欲はマジで半端ない事は良くわかった。俺との受け答えの間もパンをほおばっている。こういう時くらいは食べる手を止めてほしいものだ。
「あ~、マジでどうしてくれんのよ!」
「は? 何が?」
「昨日のアレのせいで、ここにある全てパンが過去の物になっちゃったじゃないのよ!」
「アレって……パスタパンのことか?」
「そうよ! あまりにも物足りない物だから、こんなに大量に食べないと満足できない体になっちゃったじゃない!」
なんで俺のせいなんだよ……。あんなダブル主食の料理界のキメラともいうべき食べ物を食べたくらいで、他じゃ満足できない様になるとは……。他のまともなパンに失礼だろ!
「あの味が忘れられないから、いつもより早く目が覚めちゃったから、速攻で食べに来た!」
「食べた過ぎて目が覚めるって聞いたことねえよ……。」
「んで、アレを再現するためにパスタを要求したけど、朝に用意出来ないとかなんとかでオバチャンに断られちゃったのよ!」
「そりゃそうだ! あの時のは残り物を拝借しただけだからな。そんなニッチな食べ方のためだけに用意なんかしてられないって事だろ。」
「ムキー! そんなわけナイナイ! 絶対、ここに置いてたら絶対流行るって! おいしいから! 革命だから! マジハマるから!!」
そんな豪語されてもなぁ……。アレはおジャンクな味を愛するコイツみたいなヤツには刺さるんだろうけど、一般女子には……ねぇ? それはともかくコイツがまともな女子ではないのはよくわかった。ある意味男らしさがあるような気がする。俺とかタニシよりもよっぽどね。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる