94 / 112
第2章 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【○○始めました……!?】
第93話 次期勇者の有力候補
しおりを挟む「あの女について少し情報を仕入れた。アイツは聖女直々にスカウトを提示しに行くほどの逸材だったそうだ。」
「あんなじゃじゃ馬娘を? 聖歌隊に入る前から聖女様に目を付けられていたのか。」
最初聖女様のお気に入りって話を聞いたときは大した逸材なんだろうなと思っていた。しかし、一旦身近な存在、後輩になってみたら、そのイメージは崩壊した。割と横暴で後先考えない行動が目立ち、気分屋で我が儘放題といった、絵に描いたような問題児だったのだ。
「大体、聖歌隊ってのは自ら志願、もしくは他薦で入隊するもんなんだが、アイツだけは異例中の異例ってことさ」
で、そんなじゃじゃ馬娘の教育係みたいな感じで俺は押しつけられたのだ。ファルの話では法王庁の陰謀が疑われているという事実が判明し困惑している。
「実はお前が現れるまでは次期勇者の有力候補の一人だったんだ。法王庁側としても身内から勇者が輩出されるってことで躍起になっていたのさ。」
「ほへー! カレルの次はアイツってのはほぼ確定してたってワケだ。それでもまだ諦めてないから強引な手段を用いてきたという流れなワケね。」
有力候補の一人? ってことはアイツ以外にも何人か候補がいたということになる。俺の知らないところで、お株を奪われた人間が何人もいたってことか。先代のカレルから直々に譲り受けたとはいえ、本来予定のない人間にその座が渡ってしまったのは、彼らからしたらたまったもんじゃないと言えそうだ。人知れず恨みを買っていたのかもしれない。
「実はな、カレルの死は仕組まれた陰謀だったという説がクルセイダーズ内で有力視されているんだ。」
「カレルの死が陰謀? ありゃただのヴァル・ムングの野心が引き起こした事件ってだけでは? ヤツ自身もそれは否定してなかったし。」
「あの男自身も野心はあったろうさ。常々、勇者を凌駕する存在になると宣言もしていた。だがヤツ自身の野心すら利用されていたとすればどうだ?」
ヴァルは昔からカレルとライバル関係だったみたいだし、お互いの実力を認め合っていた。そんな関係だというのに、カレルの命を奪った。俺は最初、その事実に何も疑問に感じたことはなかったが、近頃になってその考えが変わってきたのだ。何か動機が不自然だな、と。
「お前、七賢人って連中の事を知っているか?」
「いや、知らない。 なんだそれ? なんか四天王とか八傑衆みたいな新手の勢力?」
「この世界じゃ、一定の権力者や実力者くらいしか知らない、都市伝説に語られる存在さ。世界を有史以前から操り、運営しているっていう集団のことだ。」
「そんなのホントにいるの?」
「実体が掴めないから都市伝説になっているんだ。そのメンバーとされる人間は過去に何度もいたのは事実なんだがな。」
世界を裏から操っている勢力……。俺の国でもそういう存在は噂レベルで聞いたことはあったが、どんな国でもそういう話はあるんだな。大体そういうのは古代文明とか古代王朝の末裔が中心になって動いているとされるものだが、果たしてこの国ではどういう連中なのか? 気になるところだ。
「フェルディナンド、ヤツもその一人だったってのは通説だ。」
「アイツが? それで世界をどうこうって言ってたのか。元から支配する立場の人間だったとは!」
「ヤツだけじゃない。法王庁の要人も絡んでるってのは昔から言われている。少なくともヴァルは法王庁やフェルディナンドと対立していたという噂があるのさ。」
ヴァルが目の敵にするのもなんとなくわかる。ヤツ自身も世界を支配するつもりはあるようだから、覇道を突き進む上では最大の障害になり得るだろう。
「ヴァルと勇者カレル、そして竜帝。七賢人はこの三名が共倒れになることを画策していた可能性が高い。七賢人にとって竜帝や勇者ってのは都合が悪い存在だったわけだ。」
「サヨちゃんのお父さんとも仲が悪かったのか。そんな有力者をまとめて葬ろうだなんて、大それたことをやらかす連中なんだな。」
「ヴァルは“血の呪法”の知識をどこからともなく手に入れ、我が物としていた。実はその知識を手に入れる様に仕向けたのも七賢人なのではってのがもっぱらの噂だ。使うだけ使わせておいて、邪魔になれば禁呪法を使ったって事で糾弾する口実にも使えるから、最初からそのつもりだったんだろうぜ。」
まんまと利用されていたとはな。ヤツとしちゃあ、うっかりだったな。でもそのままでは終わらないのが、ヤツの逞しいところなんだが。
「その事件で勇者を葬り、自分たちに都合のいい勇者を祭り上げてしまえば運営をスムーズに行うことが出来る。そう考えていたと見ればしっくりくるだろう? それがヤツらの計画だったんだ。」
俺が勇者となった影でそんな陰謀が動いていた可能性があるのか。そりゃ煙たがれるワケだ。異国からやってきた異分子、邪魔者、それが俺に対しての認識なんだろうな。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります
まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。
そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。
選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。
あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。
鈴木のハーレム生活が始まる!
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件
後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。
転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。
それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。
これから零はどうなってしまうのか........。
お気に入り・感想等よろしくお願いします!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる