84 / 194
第2章 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【○○始めました……!?】
第83話 泥パックをして差し上げようと思って……。
しおりを挟む「あーっ!? ヤッパリでヤンス! この子どこかで見たことあると思ったら、聖歌隊期待の大型新人、プリメーラ・ソニードちゃんでヤンス! 前にライブに行ったことあるから知ってるでヤンス!」
「知っているのか、タニシ!?」
「変装してたのになんでバレたのーっ!?」
「あんなのバレバレだろ……。」
タニシが知っていたとは。飯を食っている間に怪訝そうにしていたのは見覚えがあったからか。まさかの形で正体が発覚した。聖歌隊は何者なのかは知らんが、聖女様の部下とかそんな立場なのだろう。
「というか、ホントに何をしでかしたの、コイツ?」
「啓蒙活動のスケジュールがあったのにも関わらず、直前に失踪したのだ。おかげでイベントはキャンセル! 信者の方々に多大な迷惑をかけ信頼を損ねた! 聖女様の名誉に泥を塗るが如くの行為! 許しがたい罪状である!」
「いやあ、聖女様に泥パックをして差し上げようと思って……。」
「これは例えの話だ! 冗談を言っている場合ではないぞ!」
聖女様に期待をかけられているというのに、不敬な行為ばかりしているのは気のせいだろうか? いや待てよ? 逆に割と将来大物になる器があるのかもしれない。バカというか、恐れ知らずというか……。
「まあ許してやってくれよ。コイツ、プリン食いに来ただけなんだが? その後、アリア飯をヤケ食いで平らげてるけど。」
「何ーっ!? またもそんな高カロリーな物を! 万死に値する!」
「甘い物食うためなら何でもするもんね! 死んでもやり遂げるのが私の信条だーっ!!」
何やらワケのワカラン理屈をごねるミスター?改めプリメーラ・ソニード。なにか色々事情がありそうだが……。
「大食いなのが問題あるんか? ちょっと量が度を過ぎてる感はあるけど。」
「そうだ、そうだ! 食べてる量は多いけど、その後のヤケ食いで相殺してるもんね! ゼロカロリーだもん!」
あの別腹は相殺目的だったのか? それはどうかわからないが、コイツの体型は食事前と変わっていない。細い。あり得ないくらい細い。食べた物はどこへ消えたのか? 大食い大会を制したダッフンダ氏と同じくらい謎である。
「大いに問題だ! 聖歌隊の“美”を保つためにそれに見合った生活習慣を過ごす必要がある。立ち振る舞い、日々の鍛錬、決められたスケジュールを熟した者だけが正しい“美”を身に付ける資格があるのだ!」
「あんな囚人みたいな生活で綺麗になれるもんか! あんな生活してたら、ミイラみたいにカラッカラに痩せ細っちゃうよ!」
「聖女様は日々実践しておられるからこそ、究極の美を手に入れられたのだ! 貴様も見習うべきなのだ。貴様は将来の“聖女候補”の一人なのだから!」
聖女様に気に入られるということはイコール次の聖女様候補になることを意味しているのかそりゃ、乱れた食生活をするわけにはいかないだろうな。大食いなんて知れたらイメージがガタ落ちになってしまうもんな。
「ここで押し問答をしていてもキリがない。続きは聖女様の元へ帰ってからにしておこう。その後は謹慎生活を申し渡されるであろう。覚悟しておけ!」
「嫌ぁーーっ!? またあの場所で缶詰になって聖書を写経し続けないといけなくなるの! 今度こそ死ぬわ、私!」
閉じ込められて延々写経か……。たしかにキツいな。まあ、宗教団体なんだから仕方ない。修行から逃げ出したようなもんだから、厳しくシメられるのは宿命だろう。
「見苦しいところを見せてしまって申し訳ない。ときに勇者よ、貴公は聖女様に謁見されるために参ったのであろう?」
「うん、まあ、そのつもりで聖都に向かっていた。その道中で聖女候補や聖女様の親衛隊に出くわすとは思ってなかったけどな。」
「フフ、それも神のお導きであろう。貴公が望んでいたからであろうし、私も貴公と戦う事を望んでいた。我々の日々の行いを神が見ておられたからこそ互いに導かれたのであろうよ。」
「ああ、そう……。」
そうなんかな? 別に良いことはしてないんだが? 逆におジャンクなフードを食べてたんだから、悪い行いをしてたとしか……。しかも、ニンニクの食い過ぎで臭くなってるし。
「では皆の者、聖女様の元へ帰還するぞ。勇者殿も共に参ろう。」
「ああ、よろしく頼むわ。」
かくして、俺達は聖女様の元への足取りを進めることになった。こんなぞろぞろと多人数で向かうことになるとは思わなかった。たまたま立ち寄ったガツ森での出会いが意外な連中と出会うことになるなんてな。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる