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第2章 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【○○始めました……!?】
第83話 泥パックをして差し上げようと思って……。
しおりを挟む「あーっ!? ヤッパリでヤンス! この子どこかで見たことあると思ったら、聖歌隊期待の大型新人、プリメーラ・ソニードちゃんでヤンス! 前にライブに行ったことあるから知ってるでヤンス!」
「知っているのか、タニシ!?」
「変装してたのになんでバレたのーっ!?」
「あんなのバレバレだろ……。」
タニシが知っていたとは。飯を食っている間に怪訝そうにしていたのは見覚えがあったからか。まさかの形で正体が発覚した。聖歌隊は何者なのかは知らんが、聖女様の部下とかそんな立場なのだろう。
「というか、ホントに何をしでかしたの、コイツ?」
「啓蒙活動のスケジュールがあったのにも関わらず、直前に失踪したのだ。おかげでイベントはキャンセル! 信者の方々に多大な迷惑をかけ信頼を損ねた! 聖女様の名誉に泥を塗るが如くの行為! 許しがたい罪状である!」
「いやあ、聖女様に泥パックをして差し上げようと思って……。」
「これは例えの話だ! 冗談を言っている場合ではないぞ!」
聖女様に期待をかけられているというのに、不敬な行為ばかりしているのは気のせいだろうか? いや待てよ? 逆に割と将来大物になる器があるのかもしれない。バカというか、恐れ知らずというか……。
「まあ許してやってくれよ。コイツ、プリン食いに来ただけなんだが? その後、アリア飯をヤケ食いで平らげてるけど。」
「何ーっ!? またもそんな高カロリーな物を! 万死に値する!」
「甘い物食うためなら何でもするもんね! 死んでもやり遂げるのが私の信条だーっ!!」
何やらワケのワカラン理屈をごねるミスター?改めプリメーラ・ソニード。なにか色々事情がありそうだが……。
「大食いなのが問題あるんか? ちょっと量が度を過ぎてる感はあるけど。」
「そうだ、そうだ! 食べてる量は多いけど、その後のヤケ食いで相殺してるもんね! ゼロカロリーだもん!」
あの別腹は相殺目的だったのか? それはどうかわからないが、コイツの体型は食事前と変わっていない。細い。あり得ないくらい細い。食べた物はどこへ消えたのか? 大食い大会を制したダッフンダ氏と同じくらい謎である。
「大いに問題だ! 聖歌隊の“美”を保つためにそれに見合った生活習慣を過ごす必要がある。立ち振る舞い、日々の鍛錬、決められたスケジュールを熟した者だけが正しい“美”を身に付ける資格があるのだ!」
「あんな囚人みたいな生活で綺麗になれるもんか! あんな生活してたら、ミイラみたいにカラッカラに痩せ細っちゃうよ!」
「聖女様は日々実践しておられるからこそ、究極の美を手に入れられたのだ! 貴様も見習うべきなのだ。貴様は将来の“聖女候補”の一人なのだから!」
聖女様に気に入られるということはイコール次の聖女様候補になることを意味しているのかそりゃ、乱れた食生活をするわけにはいかないだろうな。大食いなんて知れたらイメージがガタ落ちになってしまうもんな。
「ここで押し問答をしていてもキリがない。続きは聖女様の元へ帰ってからにしておこう。その後は謹慎生活を申し渡されるであろう。覚悟しておけ!」
「嫌ぁーーっ!? またあの場所で缶詰になって聖書を写経し続けないといけなくなるの! 今度こそ死ぬわ、私!」
閉じ込められて延々写経か……。たしかにキツいな。まあ、宗教団体なんだから仕方ない。修行から逃げ出したようなもんだから、厳しくシメられるのは宿命だろう。
「見苦しいところを見せてしまって申し訳ない。ときに勇者よ、貴公は聖女様に謁見されるために参ったのであろう?」
「うん、まあ、そのつもりで聖都に向かっていた。その道中で聖女候補や聖女様の親衛隊に出くわすとは思ってなかったけどな。」
「フフ、それも神のお導きであろう。貴公が望んでいたからであろうし、私も貴公と戦う事を望んでいた。我々の日々の行いを神が見ておられたからこそ互いに導かれたのであろうよ。」
「ああ、そう……。」
そうなんかな? 別に良いことはしてないんだが? 逆におジャンクなフードを食べてたんだから、悪い行いをしてたとしか……。しかも、ニンニクの食い過ぎで臭くなってるし。
「では皆の者、聖女様の元へ帰還するぞ。勇者殿も共に参ろう。」
「ああ、よろしく頼むわ。」
かくして、俺達は聖女様の元への足取りを進めることになった。こんなぞろぞろと多人数で向かうことになるとは思わなかった。たまたま立ち寄ったガツ森での出会いが意外な連中と出会うことになるなんてな。
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