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第2章 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【○○始めました……!?】
第72話 ちょっとワシャシャって行きますか!
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「いやぁ、やっぱ恐い話の後はガツ丼でしょ!」
クルセイダーズ詰め所で読んだエルの手紙とファルからの話。それはどちらも学院で起こった魔王配下が引き起こした一大事件に関わる話だった。当初はフェルディナンドの弟子達が引き起こした武装蜂起的な事件だと思われていた。だが実際、蓋を開けてみれば、その中に紛れたアイローネとかいうサギ魔神がそそのかして発生したものだったらしい。そいつが仲間を封印から解き放ち、大ピンチに陥った。危機は突如現れた謎の勇者の手によって救われたものの、魔神達は手負いのまま逃亡したらしい。つまりいずれは俺と戦う可能性があるというわけだ!
「なんでそうなるんだよ……。」
「恐い話聞いたら、恐ろしくて震えてしまうだろ? それで減ったカロリーを補充するんだよ。」
「どういう原理なんだ……。」
「だから、あれがこうしてこうなって……ゼロカロリーなんです!」
「意味がわからん。」
今はそういうわけで聖都を目前にして英気を養っていこうとなったのだ。聖都に入ると色々制限がかかってしまうとかで“ガツ森”みたいな俗っぽい店は存在していないらしい。いつ行くの? 今でしょ、ってことになった。だが、ファルは全力で拒否っている。何かアホっぽいから、ああいう店は嫌いであるらしい。
「ファル兄さんも一回経験してみた方がいいでヤンスよ! 聖都に入ったらワシャシャれなくなってしまうでヤンス!」
「なんだよ、ワシャシャるって?」
「ワシャシャるをご存じない? だってあのワシャシャりんぐでヤンスよ? しかも、ミャーコちゃんの目がないんで、今なら思う存分ワシャシャれて、ワシャシャり放題なんでヤンしゅよ?」
「ますますわからないんだが?」
「俺もわからん。」
タニシから謎用語が飛び出て事態は更に混迷を極めた。恐らく意味合い的にはっちゃけることを意味しているのだろうが、正解は不明だ。ミヤコがいないとしたい放題、され放題という点に着眼して意訳すると多分そうなる。……多分。
「メイはどうなんだ? やっぱりああいうジャンクな店はイヤだろう?」
「私は……、」
ファルはメイちゃんの力も借りて反対意見を押し通そうとしている。確かに食べ物に関する女性票の影響は大きいだろうからな。今までミヤコの独断で“イケてない”店は全て却下されてきたという経緯がある。アイツのせいで今までの道中、ガツ森に行くことは出来なかったのだ。そういう意味では今は絶好のチャンス……と言いたいところだが、メイちゃんがいる。果たして影響は……?
「私も行きたいんです!」
「いやいや、あの店は女の子向きの店じゃないだろ? どうしてだ?」
「普通の店舗には行かないでしょうけど、あの店舗には……、」
「あの店舗? あれがどうかしたのかよ?」
「あの店舗には限定メニューの“絶壁プリン”があるんです!」
「なんだそれはっ!?」
メイちゃんめっちゃお目々キラキラしてる。ハッキリとそのプリンとやらがお目当てのようだ。やっぱ女の子はみんな甘い物には目がないんだな。メイちゃんじゃなくともエルも同じ様な目をして行きたいことを猛烈に主張してくるだろう。でも絶壁という名がついているので今の内からイヤな予感がしてたまらないんだが……。
「絶壁プリン、実はあっしの姉、シジミ姉ちゃんの考案メニューなんでヤンスよ。」
「なんだ、お前の姉が考えたメニューだったのかよ。」
「もっと女の子も気軽に入れるような店にした方がいいって、タガメおじさんに提案したのが切っ掛けだったでヤンス。おじさんは姉ちゃんを可愛がってて、頼みは断れないから、店舗限定で試験販売してるんでヤンスよ。」
「そうなんですよ! 前々からシジミちゃんからもオススメされてたから挑戦してみたかったんですよ! ファルさんも一緒に食べましょうよ、ね? ね?」
「あ、ああ……。」
メイちゃんの熱心な誘いにファルは若干引き気味だった。普段、メイちゃんはおとなしいのでここまで積極的な姿は初めて見た。やっぱ甘い物は女子に対して特別な魔力みたいな物を持っている様だ。ここまで性格を変えてしまうとは中々どうして侮れんヤツよ……。
「じゃあ決定だな! 賛成派が過半数を超えたので。」
「へいへい。どうにでもしやがれってんだ、全く。」
これで入ることは確定になったので、店へと歩みを進める。店先を見てみるとある程度行列が出来ているのが見えた。聖都には存在していないということで、聖都に住んでいる人が殺到するのだろう。
「行列に並ぶのも楽しみの内でヤンス! ワクワクテカテカ、ワシャシャりんぐるでヤンしゅ!」
タニシはまたしても謎用語を口にしている。最早、俺の意訳は合っていたんだろうかとも思えてくる。その間にも俺達が並んでいる後ろにもどんどん行列は長くなっていった。しかし、すぐ後ろに妙な人物がいることに気付いた。
「ああ、もう! これじゃ、なかなか目的にありつけないじゃない!」
なんかフードやマスクで顔を隠した怪しげな格好をしていた。声や口調からすると若い女の子であることは間違いなさそうだった。一体、何者? こんな格好でガツ森に何の用なのだろう?
クルセイダーズ詰め所で読んだエルの手紙とファルからの話。それはどちらも学院で起こった魔王配下が引き起こした一大事件に関わる話だった。当初はフェルディナンドの弟子達が引き起こした武装蜂起的な事件だと思われていた。だが実際、蓋を開けてみれば、その中に紛れたアイローネとかいうサギ魔神がそそのかして発生したものだったらしい。そいつが仲間を封印から解き放ち、大ピンチに陥った。危機は突如現れた謎の勇者の手によって救われたものの、魔神達は手負いのまま逃亡したらしい。つまりいずれは俺と戦う可能性があるというわけだ!
「なんでそうなるんだよ……。」
「恐い話聞いたら、恐ろしくて震えてしまうだろ? それで減ったカロリーを補充するんだよ。」
「どういう原理なんだ……。」
「だから、あれがこうしてこうなって……ゼロカロリーなんです!」
「意味がわからん。」
今はそういうわけで聖都を目前にして英気を養っていこうとなったのだ。聖都に入ると色々制限がかかってしまうとかで“ガツ森”みたいな俗っぽい店は存在していないらしい。いつ行くの? 今でしょ、ってことになった。だが、ファルは全力で拒否っている。何かアホっぽいから、ああいう店は嫌いであるらしい。
「ファル兄さんも一回経験してみた方がいいでヤンスよ! 聖都に入ったらワシャシャれなくなってしまうでヤンス!」
「なんだよ、ワシャシャるって?」
「ワシャシャるをご存じない? だってあのワシャシャりんぐでヤンスよ? しかも、ミャーコちゃんの目がないんで、今なら思う存分ワシャシャれて、ワシャシャり放題なんでヤンしゅよ?」
「ますますわからないんだが?」
「俺もわからん。」
タニシから謎用語が飛び出て事態は更に混迷を極めた。恐らく意味合い的にはっちゃけることを意味しているのだろうが、正解は不明だ。ミヤコがいないとしたい放題、され放題という点に着眼して意訳すると多分そうなる。……多分。
「メイはどうなんだ? やっぱりああいうジャンクな店はイヤだろう?」
「私は……、」
ファルはメイちゃんの力も借りて反対意見を押し通そうとしている。確かに食べ物に関する女性票の影響は大きいだろうからな。今までミヤコの独断で“イケてない”店は全て却下されてきたという経緯がある。アイツのせいで今までの道中、ガツ森に行くことは出来なかったのだ。そういう意味では今は絶好のチャンス……と言いたいところだが、メイちゃんがいる。果たして影響は……?
「私も行きたいんです!」
「いやいや、あの店は女の子向きの店じゃないだろ? どうしてだ?」
「普通の店舗には行かないでしょうけど、あの店舗には……、」
「あの店舗? あれがどうかしたのかよ?」
「あの店舗には限定メニューの“絶壁プリン”があるんです!」
「なんだそれはっ!?」
メイちゃんめっちゃお目々キラキラしてる。ハッキリとそのプリンとやらがお目当てのようだ。やっぱ女の子はみんな甘い物には目がないんだな。メイちゃんじゃなくともエルも同じ様な目をして行きたいことを猛烈に主張してくるだろう。でも絶壁という名がついているので今の内からイヤな予感がしてたまらないんだが……。
「絶壁プリン、実はあっしの姉、シジミ姉ちゃんの考案メニューなんでヤンスよ。」
「なんだ、お前の姉が考えたメニューだったのかよ。」
「もっと女の子も気軽に入れるような店にした方がいいって、タガメおじさんに提案したのが切っ掛けだったでヤンス。おじさんは姉ちゃんを可愛がってて、頼みは断れないから、店舗限定で試験販売してるんでヤンスよ。」
「そうなんですよ! 前々からシジミちゃんからもオススメされてたから挑戦してみたかったんですよ! ファルさんも一緒に食べましょうよ、ね? ね?」
「あ、ああ……。」
メイちゃんの熱心な誘いにファルは若干引き気味だった。普段、メイちゃんはおとなしいのでここまで積極的な姿は初めて見た。やっぱ甘い物は女子に対して特別な魔力みたいな物を持っている様だ。ここまで性格を変えてしまうとは中々どうして侮れんヤツよ……。
「じゃあ決定だな! 賛成派が過半数を超えたので。」
「へいへい。どうにでもしやがれってんだ、全く。」
これで入ることは確定になったので、店へと歩みを進める。店先を見てみるとある程度行列が出来ているのが見えた。聖都には存在していないということで、聖都に住んでいる人が殺到するのだろう。
「行列に並ぶのも楽しみの内でヤンス! ワクワクテカテカ、ワシャシャりんぐるでヤンしゅ!」
タニシはまたしても謎用語を口にしている。最早、俺の意訳は合っていたんだろうかとも思えてくる。その間にも俺達が並んでいる後ろにもどんどん行列は長くなっていった。しかし、すぐ後ろに妙な人物がいることに気付いた。
「ああ、もう! これじゃ、なかなか目的にありつけないじゃない!」
なんかフードやマスクで顔を隠した怪しげな格好をしていた。声や口調からすると若い女の子であることは間違いなさそうだった。一体、何者? こんな格好でガツ森に何の用なのだろう?
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