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第1章 第2幕 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【学院編D・L・C】
第68話 本当のことを言え!
しおりを挟む「そーだよ! なんでウソついたり、ホントの事言ってくれないの! 大人っていつもそう!ズルいよ!」
ラヴァン先生が学長とフォグナーさんに問い質したと思ったら、ミヤコちゃんが便乗してきた。思わぬ所から上がった声に学長とフォグナーさんどころかラヴァン先生も戸惑っている。あの子はそういう隠し事は許せない質だから不満が爆発したのかもしれない。
「お二人の言いたい事はわかります。真実を話せない理由があったのです。」
「真実って何? こっちは何度も死にそうな目にあってるんだよ!」
「ミヤコちゃん落ち着いて!」
問い質されてもフォグナーさんが話すことを渋ってしまったため、ミヤコちゃんは更に怒りを露わにして詰め寄ろうとしたため、私は慌てて止めに入った。同時にグランツァ君も動いて二人がかりで押さえにかかったけれど、ミヤコちゃんは激しく暴れた。
「わかりました! 落ち着いて下さい! お話しします。ですが、口外無用ですよ。」
「ホントに? ウソついたら、学長をミミックさんの中に詰め込んで、あの迷宮の穴ボコに放り込むからね!」
「ウソは言いませんよ。ですから、その様な乱暴は止して下さい。」
「ううむ、見た目によらず、怒らせると恐いタイプのお嬢さんなんですな。」
ヒートアップしたミヤコちゃんはますます過激な言動を始めてしまった。その様子を見て学長とフォグナーさんは引き気味のリアクションを取っていた。
「賢者の石がデーモン・コアと同質のものであることは知っていました。知っていたからこそ事実を伏せていたのです。この事実が広まれば、法王庁、特に十字の吻首鎌の介入を許してしまう事になりかねないのです。」
アイローネが手にしていた賢者の石。あれを見たとき、奇妙な既視感があったのは気のせいじゃなかった。あれがデーモン・コアと同じ物だったとすれば、あの感覚にも不思議と納得がいくような気がした。かつて私の体の中にあれと同じ欠片があったのだから。
「介入を避けるため、強力な魔神が多数封印されているという事にされていたのです。代々、学長を始めとした一部の関係者にのみ真実が伝承され、あの迷宮を監視し続けていました。」
「では、フェルディナンドが学長の座について立場を利用して、コア製造の研究をしていたのですね?」
「確信はなかったのですが、真実を知っている者は薄々勘付いていました。疑いはありましたがあの男は決して証拠を掴ませなかったのです。」
確かにコアの製造施設が隠されているなんて知られたら、法王庁が迷宮どころか学院まで取り潰してしまいそうな気がする。彼らは魔族やそれに関わる物全てを浄化する事を目的としているので、十分にあり得る話だと思う。
「フェルディナンドは学院に長年君臨し続け、不老不死やコアの研究を行っていました。ですが、そのおかげで学院に迫る脅威を退ける抑止力にもなっていたのは間違いなさそうですね。彼の死を切っ掛けに魔神が忍び寄って来たのですから。」
「外からの脅威といえば……魔王軍や法王庁以外からのスパイも入り込んでいたようですね。例の掃除屋と呼ばれていた者です。」
「シルヴァンですか?」
「そうです。表向きはリン・アヴェリアと名乗っていた様ですね。」
私達の前に幾度となく現れ、妨害行為をしてきた人物。ファルさんとコタロウさんが退けたあとは姿を現さなかった。話題には上がっていなかったけれど、どこへ行ってしまったんだろう?
「フェルディナンドの一件以降、姿を消したようですね。この一件からもわかるように様々な勢力が狙っていたのは明らかです。ですが、結果としてあの迷宮は崩壊しました。これ以降は彼らが狙う目的はなくなったと言えます。」
「いずれは迷宮を崩壊させ、永久に封印してしまうことも画策していました。ですが、魔神達の動きの方が早かったおかげでこのような事態に発展してしまいました。皆さんには申し訳なかったと反省しています。」
「復興が最優先だったと思うので仕方なかったと思います。その隙を突いた魔神達が一枚上手だったということにしておきましょう。」
最後にラヴァン先生が学長とフォグナーさんをフォローするかのように言った。確かに誰かのせいするのは簡単なことだと思う。でも、そんなことをしたとしても問題は解決しない。弱みにつけ込んでくるのが魔神達のやり口なので、それをみんなで団結して跳ね返すのが最善策だと思う。きっとロアがこの場にいたなら、そう言ってくれると思う。
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