65 / 112
第1章 第2幕 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【学院編D・L・C】
第64話 太陽の化身
しおりを挟む「……痛いよ! 熱いよ!」
お嬢さんは剣によって切り裂かれ、刃が纏っていた炎で焼かれようとしていた。取り返しの付かないことになった……。
「うう……死にたくないよ……。」
炎は魔術によるものだったから消すことはできた。でも剣による傷は消すことは出来ない。もう何もかもが手遅れだった。
「ごめんなさい……。僕は……、」
「何やってんの、馬鹿! それはウチじゃない!」
後悔の念に駆られながら、茫然自失としていると背後から、お嬢さんの声が聞こえた。おかしい。彼女は目の前にいるのに……。振り向くと離れた所にもう一人いた。怪我もなく元気な姿の彼女が。では、僕が斬ったのは……、
(ズッ!)
「見事に騙されてくれたねぇ! ボクとしては嬉しいね! 商売冥利に尽きるよ!」
背後から刺された。刺しながら魔神はゲラゲラ笑っている。お嬢さんの声で。そうか、最初から騙されていたんだ。妙にうまく行くと思った。
「まだまだ、甘っちょろいね。こんな簡単なトリックに引っかかってしまうなんて! 正義の輩は本当に進歩しないなぁ!」
最後に絶望的な思いをさせて殺すつもりだったんだろう。どこまでも卑怯な魔神だ。それを警戒しなかった自分のミスだ……。
「あ、でも、進歩しちゃったら、ボクら悪党の領域に脚を突っ込むことになるか? 法王庁の人間なら、ためらいなく騙されずに人を斬るだろうけどね。そこまで出来ちゃったら、ボクらとおんなじじゃんねぇ?」
法王庁、特に神殿騎士団や十字の吻首鎌はそうだろう。彼らは悪と見なせば誰であろうとためらいなく斬り捨てる。僕はそこまで冷徹に非情に徹しきる事は出来ない。でも、その甘さが命取りになってしまった。
「甘くてもいいではないか。それが若さの特権なのだ。情なき力は只の暴力でしかない。」
意識が薄らぎ倒れそうになった僕を何者かが支えた。そして、僕のミスを擁護してくれてもいる。誰だろう? 聞いたことのある声、見たことのある姿だ。
「僕の劇場への飛び入り参加は許可してないんだけどな?」
「すまんな。あまりにも臭い芝居だったから、クレームを入れたくなったのさ。」
「そういうキミはあまりにも胡散臭いじゃあないか! 誰なんだい、キミは? 噂の勇者君かい?」
顔は魔神の方に向けているから顔は見えない。でも、服装や刃のない剣、頭に付けている額冠は正に勇者だった。でも、ロアさんではない。その証拠に、僕を支えつつ回復魔法を使っている。あの人が回復魔法を使うだなんて聞いたことがない。声も違う。
「私か? 私は影の勇者。またの名を偉大なる勇者。」
「何!? 影の勇者!? グレートだと?」
グレート……? そういえば、あの時に語りかけてきた声と同じだ。同じ名を名乗っていた。この人だったのか! でも、あまりにも似ている、ロアさんと。でも似ているのは見た目だけで、纏っている雰囲気は燃えさかる炎、いや、太陽の様だった。
「まあ、いいや。正体のことはぶっ殺してから調べるとしよう。ボクの大切なお仕事を邪魔してくれたんだから、慰謝料はタップリと払って貰うよ!」
「仕事? 遊び半分にやる仕事など、この世には存在せん!」
「言ってくれるじゃないか!」
わずかな時間で僕の傷の応急処置をし終え、グレートは魔神と斬り結び始めた。二人の攻防は凄まじい嵐のようだった。あの魔神と互角以上に渡り合っている!
「クソみたいなクレーマーのクセに中々やるじゃないか!」
「貴様如き魔王の下っ端に負けはせんよ! 勝ちたければ、お得意の手品を十分駆使することだ!」
「ああ、殺ってやるよ! 手品で死んじまいな!」
ヴォルフと戦わせていた分身、最後の一体を手元に引き戻し、再び四体に分裂させた。合計五人となったところでグレートに立ち向かう。これじゃタコ殴りだ。一方的な展開になると思われたが、思いがけないことが起こった。逆に魔神の方が押され始めた。五対一なのに!
「け、結構なお手前だ! 幻術を使えるのか? キミも大層な大道芸をお持ちじゃないか!」
「分身? 冗談じゃない。幻術などではない。これは残像だ。正確には三皇奥義、無影陽炎と言う!」
五体全てを同時に相手をしながら、その全てにおいて押している! あまりにも速いため、まるで分身しているみたいだった。それでも彼は残像だと言っている。これは超人絶技だ!
「調子に乗ってぇ! このままで済むと思うなよ!」
魔神は分身も含め、一旦グレートから間合いを離し、グレートの周囲を囲んだ。そこから一斉に斬りかかった。
「八つ裂きにしてやる! プリズマ・ディストルツィオネ!!」
「勇者の豪撃、バーニング・イレイザー!!!!」
太陽の光を帯びた光の衝撃波が魔神とその分身をなぎ払った! これは只の勇者の奥義じゃない。太陽の化身とも言うべき一撃だった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える
ジャック
ファンタジー
私立三界高校2年3組において司馬は孤立する。このクラスにおいて王角龍騎というリーダーシップのあるイケメンと学園2大美女と呼ばれる住野桜と清水桃花が居るクラスであった。司馬に唯一話しかけるのが桜であり、クラスはそれを疎ましく思っていた。そんなある日クラスが異世界のラクル帝国へ転生してしまう。勇者、賢者、聖女、剣聖、など強い職業がクラスで選ばれる中司馬は無であり、属性も無であった。1人弱い中帝国で過ごす。そんなある日、八大ダンジョンと呼ばれるラギルダンジョンに挑む。そこで、帝国となかまに裏切りを受け─
これは、全てに絶望したこの世界で唯一の「無」職の少年がどん底からはい上がり、世界を変えるまでの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
カクヨム様、小説家になろう様にも連載させてもらっています。
クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります
まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。
そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。
選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。
あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。
鈴木のハーレム生活が始まる!
2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件
後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。
転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。
それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。
これから零はどうなってしまうのか........。
お気に入り・感想等よろしくお願いします!!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる