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第1章 第2幕 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【学院編D・L・C】
第57話 企む者達
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「何者かは知らんが、我ら二人を同時に相手取ろうとはいい度胸してるぜアンタ。」
呪殺魔術を得意とするラスト・ステイク、幻惑魔術を操るロスト・ワード。この二人が私の相手だ。
「ただの通りすぎのルポ・ライターですよ。どこにでもいる怪しそうな男です。」
「自分で言うか? それにしてもルポ……? ライ……?」
「ああ! スミマセン。あなた方は過去の人間でしたね。ピンとこないようでしたら、フェルディナンド殿の元秘書と認識してもらっても構いませんよ。」
「秘書? 貴様があの男の……? あの男の秘書が務まるなんて、変わり者もいるのね、この時代には。」
ライターという職業にピンときていないラスト・ステイクに対して、ロスト・ワードが意味ありげな言い方をしている。確かにフェルディナンドはクセのある人物だった。あの男の側で働くということはそれなりの覚悟がいるのは確かだ。大抵は過労死か、発狂して廃人になるかのいずれかだ。彼らはあの男の弟子だ。その辺りは熟知した上での発言だろう。
「元って事はクビにでもなったのかい? だったら、俺達と同じじゃないか。なあ、ロスト・ワード。」
「そういう事になるわね。似たもの同士。」
「クビ? 正確には私が職を辞したのですよ。待っていても、近いうちに職を失うのはわかっていましたからね。」
「クビになるのがわかっていた? それとも、あの男が死ぬと知っていた?」
「解釈はご自由にしてもらって構いません。この辺りはノー・コメントとさせて頂きましょう。私に勝てたのなら教えて差し上げてもよろしいのですが……?」
ラスト・ステイクは半笑いの顔で私へ挑発的な視線を送り始めた。私から聞き出してやろうという魂胆を見せている。それでも、ロスト・ワードは冷静に私の様子を窺っている。私の真意を探るかのようだ。
「秘書をしていたのなら、我々の封印が解けることも知っていたのかな?」
「いえ。知りません。……そんなことで封印が解けないという事は知っていましたがね?」
「あぁ!? なんだそりゃ? それってどういう……?」
「おやおや、触れてはいけない真実を知っていたようだな。」
「おい、ロスト・ワード! お前言ってることの意味わかってるのか? それじゃ、俺達が出てきた……がっ!?」
気付いたときにはラスト・ステイクの右目にレイピアの刃が突き立てられていた。刃は後頭部まで貫通している。これは即死だ。突き立てたのはロスト・ワードだ。
「はあ、折角最後まで殺さないでおこうと思っていたのに。 種明かしをされたんじゃ、困るからね。」
「おやおや、とうとう本性を明かすつもりになりましたか。」
「私の事を知っていたな? アラムとやら?」「そちらの方こそ、私の名を知っておいででしたか。フフフ。」
相手は私への探りも入れていたようだ。封印の件も意図がわかってしまったのだろう。この話の裏がわかってしまったのなら、私がしたことの理由も見えてきているはずだ。
「貴様、私が来ることを察知していたな? だからこそ、フェルディナンドの死で封印が解けないように事前工作していたのだろう?」
「その通り。あなたにアレを使わせるためにね。数は出来るだけ減らしておきたかったのですよ。おかげで余計な手順が増えてしまった。」
アレとはディスペル・キーの事だ。もちろん本物ではなく、レプリカの方だ。本物とは違い、一本につき一回しか使用できない。ヤツはあらかじめ二本用意してきている。それを私の事前工作で一本無駄に使用させたのだ。
「おかげで、私の用意していた台本が台無しになってしまったよ。進行に大幅な変更が出てしまった。魔王戦役勃発に相応しいプレリュードとなる予定だったのにね。」
「そう簡単には戦役を始めさせませんよ。まだ時期が早い。適切な時期という物があるのです。」
まだ早い。それまでに消化しなければいけないことがたくさんある。それまでの下準備が整うまでは起こさせるワケにはいかない。
「だけど、代替案は用意できている。これからみんなに種明かしのドッキリを仕掛けようと思っている。」
ロスト・ワードは懐から何か棒状の物を取り出した。あれはディスペル・キーのレプリカだ。もう一つの方だ。そしてもう一つ……赤色の物体を手にしていた。
「それもあなたが手に入れていましたか。あなたが得意としている技ですり替えたのですな。」
「その通り。連中はこれがまだ手中にあると思って安心しているかもしれないが、もう手遅れだということさ。」
「これはとんだドッキリですな。」
「君、何か、他人事みたいに思ってるんじゃない? 君もあっち側の人間だろう?」
「さあ? それはあなたの思い過ごしですよ。あなた方でもわからない真実という物がこの世にはあるのですよ。」
互いに薄ら笑いを浮かべながら、次の行動への準備を始めている。その間、ディスペル・キーの効果で迷宮の罠による分断が解かれようとしていた……。
呪殺魔術を得意とするラスト・ステイク、幻惑魔術を操るロスト・ワード。この二人が私の相手だ。
「ただの通りすぎのルポ・ライターですよ。どこにでもいる怪しそうな男です。」
「自分で言うか? それにしてもルポ……? ライ……?」
「ああ! スミマセン。あなた方は過去の人間でしたね。ピンとこないようでしたら、フェルディナンド殿の元秘書と認識してもらっても構いませんよ。」
「秘書? 貴様があの男の……? あの男の秘書が務まるなんて、変わり者もいるのね、この時代には。」
ライターという職業にピンときていないラスト・ステイクに対して、ロスト・ワードが意味ありげな言い方をしている。確かにフェルディナンドはクセのある人物だった。あの男の側で働くということはそれなりの覚悟がいるのは確かだ。大抵は過労死か、発狂して廃人になるかのいずれかだ。彼らはあの男の弟子だ。その辺りは熟知した上での発言だろう。
「元って事はクビにでもなったのかい? だったら、俺達と同じじゃないか。なあ、ロスト・ワード。」
「そういう事になるわね。似たもの同士。」
「クビ? 正確には私が職を辞したのですよ。待っていても、近いうちに職を失うのはわかっていましたからね。」
「クビになるのがわかっていた? それとも、あの男が死ぬと知っていた?」
「解釈はご自由にしてもらって構いません。この辺りはノー・コメントとさせて頂きましょう。私に勝てたのなら教えて差し上げてもよろしいのですが……?」
ラスト・ステイクは半笑いの顔で私へ挑発的な視線を送り始めた。私から聞き出してやろうという魂胆を見せている。それでも、ロスト・ワードは冷静に私の様子を窺っている。私の真意を探るかのようだ。
「秘書をしていたのなら、我々の封印が解けることも知っていたのかな?」
「いえ。知りません。……そんなことで封印が解けないという事は知っていましたがね?」
「あぁ!? なんだそりゃ? それってどういう……?」
「おやおや、触れてはいけない真実を知っていたようだな。」
「おい、ロスト・ワード! お前言ってることの意味わかってるのか? それじゃ、俺達が出てきた……がっ!?」
気付いたときにはラスト・ステイクの右目にレイピアの刃が突き立てられていた。刃は後頭部まで貫通している。これは即死だ。突き立てたのはロスト・ワードだ。
「はあ、折角最後まで殺さないでおこうと思っていたのに。 種明かしをされたんじゃ、困るからね。」
「おやおや、とうとう本性を明かすつもりになりましたか。」
「私の事を知っていたな? アラムとやら?」「そちらの方こそ、私の名を知っておいででしたか。フフフ。」
相手は私への探りも入れていたようだ。封印の件も意図がわかってしまったのだろう。この話の裏がわかってしまったのなら、私がしたことの理由も見えてきているはずだ。
「貴様、私が来ることを察知していたな? だからこそ、フェルディナンドの死で封印が解けないように事前工作していたのだろう?」
「その通り。あなたにアレを使わせるためにね。数は出来るだけ減らしておきたかったのですよ。おかげで余計な手順が増えてしまった。」
アレとはディスペル・キーの事だ。もちろん本物ではなく、レプリカの方だ。本物とは違い、一本につき一回しか使用できない。ヤツはあらかじめ二本用意してきている。それを私の事前工作で一本無駄に使用させたのだ。
「おかげで、私の用意していた台本が台無しになってしまったよ。進行に大幅な変更が出てしまった。魔王戦役勃発に相応しいプレリュードとなる予定だったのにね。」
「そう簡単には戦役を始めさせませんよ。まだ時期が早い。適切な時期という物があるのです。」
まだ早い。それまでに消化しなければいけないことがたくさんある。それまでの下準備が整うまでは起こさせるワケにはいかない。
「だけど、代替案は用意できている。これからみんなに種明かしのドッキリを仕掛けようと思っている。」
ロスト・ワードは懐から何か棒状の物を取り出した。あれはディスペル・キーのレプリカだ。もう一つの方だ。そしてもう一つ……赤色の物体を手にしていた。
「それもあなたが手に入れていましたか。あなたが得意としている技ですり替えたのですな。」
「その通り。連中はこれがまだ手中にあると思って安心しているかもしれないが、もう手遅れだということさ。」
「これはとんだドッキリですな。」
「君、何か、他人事みたいに思ってるんじゃない? 君もあっち側の人間だろう?」
「さあ? それはあなたの思い過ごしですよ。あなた方でもわからない真実という物がこの世にはあるのですよ。」
互いに薄ら笑いを浮かべながら、次の行動への準備を始めている。その間、ディスペル・キーの効果で迷宮の罠による分断が解かれようとしていた……。
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