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第1章 第2幕 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【学院編D・L・C】

第55話 グレート

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(みんな……ごめんなさい。僕は負けてしまいました……。)


 ファイアーバードの三羽目の炎の鳥に焼かれながら、仲間のみんなへ懺悔した。決して負けられない戦いでの敗北は魔王戦役への引き金になるかもしれない。僕は過ちを犯してしまった。


《……まだ、諦めるな!》


 気のせい……? 遠くから誰かが呼びかけてきた。誰だろう? アラムさん? ヴォルフさん? 誰かはわからないけど、男性の声なのは間違いなかった。


(僕はもう助かりません。ここからではどうしようもないんです。)


 全身に炎が燃え移り、体が徐々に焼かれていくのを感じる。今、炎を消すことは出来ても、これ以上戦えない程の傷を負ってしまっている。もう手遅れなんだ。


《今の貴様は恵まれた環境に置かれている。》

(冗談はよして下さい。これから恐ろしい出来事が起きるという意味では、それを見ないまま死を迎える方が楽なのかもしれませんね。)


 迷宮に封じられた魔神が復活し、世界に恐怖の雨が振りまかれる。そして次第に世界が死の大地へと変わっていく……。それは免れない。


《馬鹿者! 貴様がそんな弱気でどうする! 貴様には守るべき存在がいることを忘れたのか!》

お嬢さんフロイライン……。)


 今、彼女の顔が頭の中に浮かんだ。僕がこのまま死んでしまえば、彼女は助からない。それはヴォルフさんやローレッタさんも同じ。このままではみんなとの約束が果たせなくなる。


《恵まれていると言ったのは、貴様には大切な仲間がいるということも含まれているが、それだけではない。》

(それは……どういう……?)

《今の相手が貴様と同じ炎属性の使い手だからだ。貴様よりも格上の使い手だ。だが、限界の壁を越えるのにこれ以上最適な相手は他にいない!》


 相手は炎属性の魔術師。しかもかなりの使い手だ。炎の鳥を同時に三羽も操り、炎を利用した幻術まで使いこなす強敵だ。勝ち目があるとしたら剣術だけだ。でもそれですら炎に阻まれ、届きはしなかった。


《同じ属性ということは巻き込んでやり返すという芸当も可能だ。それをやればいい。》

(僕には無理です! 遙かに高度な魔術をやり返すなんて不可能です!)


《……フェニックスは死なない。フェニックスは炎さえあれば、そこから何度でも蘇る。貴様もこの伝説を聞いたことがあるだろう?》


 伝説の霊鳥フェニックスの話は聞いたことがある。炎を糧として生き、死んでも炎のなから新たに生まれ変わる。その伝説から不死の象徴として見られることも多い。


《肉体の蘇生、傷の修復、これらは神聖魔法が得意とする分野だが、炎の魔術でも同様の事は行えるのだ。》

(そんな奇跡を起こせるはずがありません!)


 フェニックスの不死伝説を魔術として再現する試みも過去に何度も行われたそうだ。失敗した例、成功した例の両方が記録に残ってはいるが、本当かどうかはわからない。学院の授業でも眉唾物として扱われていた。今の学院でもこの魔術を再現しようとする人は誰もいないらしい。


《奇跡は起こせる。貴様も見たことがあるはずだ。奇跡を行使する者を。奇跡を目にした者は奇跡を起こす資格を同時に取得しているのと同意だ。起こせぬはずはない。これを“勇気の共有”と言う。》

(勇気の共有……。)


 前の戦いで勇者さんが新たに目覚めたという力? 聞いたところによると勇者と繋がりの深い者は勇者とほぼ同等の力を振るえるという。逆に勇者側も仲間の力を行使することが出来るという話だ。勇者さんの近い所にいるMrs.フラウグランデやファルさんが急激に強くなっていったのはこの能力が潜在的に影響を与えていたかららしい。彼らならわかるけど、僕にその力が使えるんだろうか?


《炎を我が物とせよ。自らが炎の化身となるのだ! 貴様は不死鳥フェニックスの騎士として蘇るのだ!》

不死鳥フェニックスの騎士……。)


 そういえば聞いたことがある。かつてロッヒェンの一族の中には不死鳥フェニックスの騎士と呼ばれる人物がいたらしい。騎士でありながら炎の鳥の様な行為の魔術を使いこなしていたそうだ。その戦いぶりはあまりにも凄まじく、炎の化身の様な有様だったと。僕が幼い頃に父上が話してくれた事を思い出した。


(出来るかもしれません。僕にも。)

《いや、貴様なら出来る! 出来ぬはずはない!》


 熱の痛みに耐えながら、体に残った魔力を振り絞った。炎を取り込むイメージを頭に浮かべ、魔力を集中させる。次第に痛みが薄れ、心地よい熱へと変わっていく! これが再生の炎リヴァイヴ・バーニングか!


(コツは掴めました! 何とかなりそうです。ありがとうございます。でも、あなたは何者なんですか?)

《私か? 私のことは影の勇者、偉大なる勇者ブレイブ・ザ・グレートとでも呼ぶがいい。いずれ会うことになるだろう。》
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