54 / 93
第1章 第2幕 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【学院編D・L・C】
第53話 あなただけは確実に仕留めます。
しおりを挟む「人形風情が私に敵うとでもお思い? しかも、私に一度敗れた上でもう一度刃向かうなんてね。とんだお笑いぐさよ!」
戦う前からアンネ先……いえ、アンネ・リーマンは私を罵ってきた。以前の戦いで私は命を取り留めたものの、体を破壊されてしまった。
「あなたは私に勝ったおつもりなのですか?」
「無様に、ゴミのように砕け散ったというのに、貴様は負けてないとでも言うつもりか?」
「あの状況で勝ったも負けたも無いと思わないのですか?」
それはラヴァン様をお守りする為、庇ったからでもあった。あの時は間一髪で勇者様に救われたけれど、私には勝ったつもりでいるらしい。勝ったつもりでいたいのかもしれない。
「それは敗者の言い分だ。そして、今から最後の敗北を与えてやろう!」
アンネは腰に下げていた革袋から水をぶちまけて刃へと変化させた。ハイドロ・スピンカッター、以前も使用していた水属性の攻撃魔術だった。
「これで再びバラバラに粉砕してやろう!」
水の刃を私の方へ向けて放ってきた。今までならこれを凌ぐのは大変だった。今の自分にはこれは通用しない。水の刃は体に当たる直前に逸らされ四散した。
「残念ですが、あなたの魔術は通用しません。お陰様で新しい体に入れ替わりましたから。」
「相転移力場か? 新型ゴーレムの予備ボディに乗り換えたのだろう? 失念していたよ。」
無効化されたというのにアンネは不敵な笑いを浮かべていた。何か策でも用意してるのだろうか? 知っていたはずなのにわざとらしく感じる。
「今思い出したよ、それの弱点も。投射タイプの魔術や弓矢、武器による直接攻撃は無効化されてしまう。しかし同時に、それを通用する攻撃も知っている!」
周囲に飛び散った水が動き始め、形を為そうとしていた。水自体は私の衣服にも一部付着していたため、それすらも私の体の動きを制限し始めていた。
「油断したな。攻撃性のない物体には反応しないのがネックになったな。その状態から魔術を発動させる分には問題は発生しないというわけだ。」
「ううっ!?」
周囲の水も私の体に纏わり付き始める。そしてそれが蛇の姿へと変わっていった。アンネの得意とする魔術、アクア・サーペントだ。私の体は動きを制限されたものの、防御機能は発動していない。アンネの言うとおりの結果になった。
「ハハハ、この知識自体は貴様ら勇者一味の戦いを見て知ったことだ。役に立ったよ。貴様ら自身を倒すためにな!」
最初からこの魔術を使ったら、相転移力場が発動してしまう。相手の周囲に水を散布した上で徐々に水蛇を生成すれば、その対象にならない事を知っていたのだろう。相手の動きを捕らえたり、組み付く行為には反応しないということは前の戦いで判明していた。
(グググググッ!)
「貴様はまんまと私の罠に嵌まったわけだ。今回もバラバラにしてやるぞ!」
「フフ、同じ手が通用すると思っているのですか?」
「ハッ、この状況でハッタリのつもりか? 私のアクア・サーペントに一度拘束されれば、逃れる術は無い!」
「相変わらず、思い上がりの強い方ですね。」
「何が言いたい?」
私も無策じゃ無い。この人と再び戦うことを想定してはいた。その際は確実に仕留めると。ラヴァン様やお姉様に害を為す存在は絶対にこの手で倒すことを誓っていたから。それにこの人は勇者様の二度のお慈悲を無碍にした。許しがたい点を挙げたらきりが無い。拘束された時点で私は体中に仕込んだあるものを魔力で発動させた。
「なっ!? こ、これは植物!? 何故こんな物が?」
「皆さんはゴーレムの体を持つことに注意を向けがちですが、私は木属性の魔術師でもあるんですよ。」
体には植物の種を仕込んでいた。アンネが水を仕込んでいたように。周囲に魔術発動用の触媒が無い場合は術者自身が持ち歩く場合が多い。しかも、水属性は木属性と相性が良く、使用の手助けをしてくれる。アンネは私の使用属性の事を考慮に入れていなかったのが最大のミスだった。草木が水蛇の水を吸って成長し、私の拘束はあっけなく解除できた。
「ば、馬鹿な!? 貴様のような三下魔術師如きに負けるはずが無い!」
アンネは狼狽えながら、もう一つの得意属性で岩の飛礫を作り、私目掛けて投射してきた。明らかに即席の魔術だったため、大した威力は無く、周囲に展開した草木で十分防ぐことが出来た。この隙に乗じて、私は止めを刺すべくアンネの懐へと飛び込んだ。
「……チェックメイトでございます!」
「がっ……!?」
一瞬にしてアンネの首は宙を飛んだ。油断を見逃さず、一思いに勝負を決めた。長引けば長引くほど、相手の方が有利になるから瞬時に決めることを最初から考えていた。
「非情過ぎるかもしれませんが、私にとって大切な人を守るためならば、鬼にもなります。」
まずは一人。後、何人もいる。他の方々の戦況は……? 見てみるとロッヒェン様が炎に包まれている姿がそこにはあった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる