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第1章 第2幕 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【学院編D・L・C】

第46話 僕たちは見くびられている……!?

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「チッ! 結局、俺らがこの罠にかかってしまうとは、なんてことだ!」

「まあ、いいではないですか、ヴィーナス。私達の相手はあの子達のようですしね。あの鬼と切り離された分には良かったと思いますよ。」


 大柄なヴィーナスに対し、幻惑のロスト・ワードが宥めて、現状を見るように諭している。こちらは……僕達のメンバーはほとんど大人のメンバーがいない。アラムさんだけ。Mrs.フラウグランデや先生達がいない。ほぼ迷宮攻略パーティーだけど、人質にされていたローレッタさんが代わりにここにいる。


「前向きに考えようぜ。相手は所詮、学生だ。高がしれている。我らの敵ではない。蹴散らしてしまえば、あとはどうとでもなる。」

「学生? ああ、アイツらのことか! 俺らの使いっ走りにしてたから忘れてたぜ。」

「元々、彼らにこの罠の処理、同士討ちをさせて始末する予定でしたからね。とはいえ、賢者の石が別の連中に渡ったままというのが惜しいところね。」

「鬼にうっかり破壊されてしまわないことを祈るとしましょうか。」


 口々に僕達を軽視するような発言がD・L・Cとアンネ先生達の間で飛び交っている。僕達自身の実力は大人にも引けを取らないと思っているけど、彼らは伝説級の存在、しかも前学長の弟子達だ。怯んでいないと言えば嘘になる。


「ちょっと! 黙って聞いてたら、ウチらのこと馬鹿にして! アンタらなんて、時代遅れの老害の化石じゃないか!」

「なんだと小娘! 誰が化石だ! それに老害じゃねえぞ! これでもまだ二十代だ!」


 彼らの発言に腹を立てたお嬢さんフロイラインがヴィーナスと口論を始めてしまった。大柄な彼は老けて見える事に対して反論する。でも、本当に顔にベテラン感が漂っているのは拭いようがなかった。二十代だとわかって驚いた。


「うわぁ! サバ読んでる! 一番老けてるのに! オッサンじゃん! 逆にかわいそうになってくるよ、憐れすぎて!」

「なんだ、一番役に立たなそうなガキのクセに生意気言うな!」

「やめとけ、ヴィーナス。お前も大概だぞ。それにあと一年で三十歳じゃないか。まだ二十代というのは無理があるぞ。」

「ほら! やっぱ、オッサンじゃん!」

「言うな! すり潰すぞ、小娘!」


 ヴィーナスは今にも飛びかかってきそうな雰囲気だった。対照的に彼の仲間達はまだ余裕を見せつけていた。あのヴィーナスの隙を突くのは容易かもしれないが、他のメンバーはどうやって倒すべきなんだろうか? 勝てるヴィジョンが見えない。


「勝てますよ、彼らにね。」

「……え?」


 僕が思い悩んでいると、アラムさんが口を開いた。励ましてくれているんだろうけど、お世辞のようにしか聞こえない。情けないけど、余裕のない今の自分にはそうとしか思えなかった。


「ここの最後のガーディアンはね、一緒に戦ってきた仲間自身なんですよ。仲間を倒さないことには先に進めないんです。」

「それが今の状況に至った理由ですか?」

「そうです。できればスルーしたかったですけどね。この分断には一定のルールがあるんです。今まで封印を解きながらここに至った事は覚えていますね?」

「ええ。一人ではなく複数、四人以上でないと解けない仕組みになっていました。」


 何故か三人以下では封印を解除出来ないようになっていた。なにかおかしいなとは思っていた。先に進むにつれて、解除をするというよりも必要以上に自分たちが読み取られているんじゃないかと疑問に思い始めた。


「あれはあなた方の情報を読み取っていたんですよ。主に戦闘能力に関することをね。その情報を元に均等に分断して戦い合わせる。それが最後のガーディアンとして機能しているんです。」

「なんですって!?」

「幸い、今の状況は敵同士で別れる形になっています。私がそうなるように仕向けていたのですが。五分の状況になるように。」

「それってどういう……? あなたは一体何者なんですか?」

「追々話しますよ。少なくとも私はあなた方の敵ではありません。彼らには勝てますよ。」


 ここに分断される前にこの人が疑わしい人物であるらしい事はわかった。確かに素性のわからない怪しい人だとは思う。でも道中、僕達を影ながら助けてくれていたのはウソじゃない。だから僕はこの人を信じようと思う。


「じゃあ、お前ら、何奴をやるつもりだ? まとめてだとつまらんし、個々にわかれていたぶってやった方が面白いだろ? 格の違いを見せつけるためにもな。」

「俺はあの小娘を殺る!」


 ヴィーナスがお嬢さんフロイラインを指名した。先程のやりとりがあったから当然の結果だ。なら、僕がお嬢さんフロイラインを守らないと……、


「ロッヒェン、ここはオイに任せてほしいバイ。」

「ヴォルフさん!」

「パワーにはパワーというのが定番ですばい。それに……オイのことは“さん”と呼ばなくていいバイ。オイ達は“かたす”ばい。変に礼儀はいらんと!」

「じゃあ、頼むよ!」

「それで良かね!」


 お互い照らし合わせたようにハイタッチを交わした。僕達は気が合う。最強のコンビと言ってもいい。いつかは勇者さんとファルさんの“ザ・タービュレンス”に勝てるくらい強くなるんだ!
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